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量を書くこと(京都新聞連載7)

初出:京都新聞夕刊、連載「現代のことば」、2022年9月。

今年の9月で、関西に来て10年になる。学者、書き手として仕事を始めて10年。その最後に、本気で小説に取り組むことになるとは思わなかった。まあ、いわゆるセカンドキャリアだとも言える。10年にもなれば気分を変えたくなってくる。企業で働く友人と話していても、やはり40代になって、今後のキャリアをどう考えるかが話題になる。

小説を始めたことで、書けるものの幅が広がった。哲学思想の論述というのは、かなり狭い範囲での言語運用だ。それに対し、小説は非常に多面的だ。空間を作ったり、人を動かしたり、気持ちを描いたりと、多面的に言語空間を展開する小説からまた論述に戻ると、以前より体の動きがよくなっているのを感じる。

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