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BizDevのお仕事

はじめに

こんにちは。南日です。
約2年間、人事向けのSaaSの開発を0→1として立ち上げてきました。おかげさまでリリースも出せました。

これまでのキャリアは、外資コンサルや事業開発など、10→100にするような領域が多く、完全なる0→1は人生初で、当時29歳から責任者としてチャレンジできたのは本当に貴重だなと思い、備忘録の意味も込めて筆をとった次第です。

正直、色々な失敗をしてきました。振り返ってもっとあーすればよかったということはたくさん思い浮かびます。一方で様々な体験を積むことができました。

改めて自分自身の志がなければ新規事業はやるべきではないし、そしてその志に共感しているチーム組成マストだなと感じています。やってきたことは本当に多岐にわたりますが、例えば以下のような感じです。

・前任者が立上中だった新規事業を全て仕切り直し
・既存プロダクトからの切り出し
・(仕切り直しなので)様々な信頼獲得活動
・ミッション、ビジョン、バリューの策定
・事業/プロダクト戦略、収益シミュレーションの策定
・チームの立ち上げ(Business/Technology/Design)
・メンバー育成、各種マネジメント
・永遠とやり続けた価値検証、顧客インタビュー
・MVPの定義、修正の連続
・初期顧客獲得までの様々な道のり
・すれ違うDevとBiz
・ありとあらゆる社内調整
・初年度目標数字の喧々諤々議論
・エンジニア、PMの採用活動
・ローンチに向けた最後の踏ん張り
などなど・・・

書いては消してを繰り返しましたが、これが書けるギリギリの範囲です笑。

当然起業ではないのですが、イントレプレナーとしてありとあらゆることをチャレンジできた2年間だったなと思います。本当にグロービスには感謝しかないです。

色々と記憶が新鮮なうちに、BizDevの仕事ってなんだ?ということをまとめていきたいなと思います。

こんな方に読んでもらいたい

・新規事業って何?というリアルを知りたい方
・インハウスで新規事業開発をこれからチャレンジする方
・プロダクト開発って何しているの?という方
・コンサル出身で「手触り感」を求めて事業開発にチャレンジしたい方

できる限りリアルに書こうと思いますが、一部の情報はマスキングしたり、新規事業のリアルの解釈を変えない形で多少のフィクションを混ぜていきます。

今なお学び中なので、記載内容は先人の皆さまからすると「まだまだ甘い」というご指摘もあるかもしれませんが、ご了承ください笑

BizDevって?

簡単に定義をしていきます。BizDevというものは、事業価値を創造し続けることだと考えています。シードフェーズにおける価値、グロースフェーズの価値と、事業が大きくなればなるほどケアすべき優先度は変わってきます。

それら変化に対して柔軟に対応しつつ、事業を創造し、拡大し、磨き続けていくことが役割となります。

この記事を書いている最中にラクスル福島さんの記事を発見したので、是非とも参考にしてみてください。めちゃくちゃシンプルにまとまっています。

BizDevには圧倒的当事者意識が必須!

これが一番言いたいことかもしれません。当事者意識というものは言われて醸成されるようなものではなく、醸成のされ方は人の数ほどあるなと捉えています。

僕自身の場合は、「働く」というものを根本から再定義したいです。人が本当にワクワクと働ける社会にしていきたい。そのために人のポテンシャルをどこでも開放できるような企業を1社でも増やしたい、そういった志があったからこそ、誰よりも当事者意識を結果的に持てて事業立ち上げができたと考えています。

(以下、立ち上げ当初の備忘録なnote)

事業立ち上げについてはいろいろなやり方があるかと思いますが、様々な方からありがたい意見をもらうことがあります。その意見のたびに自分自身の意見をコロコロ変えてしまう人も多いのですが、そういう人は当事者意識があるとは言えないなと感じています。

徹底的に顧客の声に向き合い、そしてその課題を検証し続けて、スコープを少し広げるとまた違ってと、顧客によってもどの課題が優先的かも異なってくるのですが、どの顧客のどの課題から解決するか?を頭に汗かいて徹底的に考え抜くことが大事です。

一意見に振り回されていては、BizDevはつとまらないと身をもって感じました。

新規事業は探しても見つからない

一概には言えないですが、Google予測変換は以下が出てきました(2021年7月4日時点)。フレームワーク、アイデア、プロセス等が予測で出てきています。

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多くの方は、答えを探そうとしてしまっています。私も最初はそうでした。新規事業はどんなに凄いアイデアがあっても、どんなに切れ味鋭いフレームワークがあったとしても、成功には全く近づきません。

むしろ、その考えに固執されてしまい失敗への道を歩んでいくことになるとも言えるでしょう。僕も最初はその間違えた道を歩んでいました。こんな感じで仕事を進めていました。

・マクロトレンド/業界動向の調査、示唆出し
・競合動向の調査
・自社の強みを誰よりも理解するために、社内の重鎮へアポ取り
・各種資料を作成し、上司へ相談、議論
・事業計画の策定(戦略、収益シミュ、組織、など)
・他部門との各種社内調整

やってきたことを一言で言うと、あらゆる情報の交通整理です。きれいに情報を整理して、隙間を狙った戦略を考えて、そして実行プランを考えていく、というコンサルの王道的な進め方です。

これを一人でちゃんとやると、平気で1,2か月くらいあっという間に過ぎてしまいます。そして社内で確認すればするほど企画は丸いものになっていきます。

MBA的な定石からすると、自社の強みを活かそう!という話があるかと思います。ただ、それは半分正しいが半分間違えていると現時点で考えています。

特にグロービスはMBAの企業でもありアカデミック思考の方が多く、私自身も知らず知らずのうちのその意思決定の考え方に寄り添いすぎてしまったのではと思います。

コンサルでは当たり前に取り組んできたことが、意味がないまでは言わないですが、振返ってみると非効率なことをしていたなと感じています。

プランニングをある程度きれいに作り切ってから顧客に本格的にあてていけば良いと、当時は何の疑問も持たずに仕事を進めていました。

しかし、繰り返しになりますがここまでに記載した内容は、新規事業ではほぼ無意味な行動となります。MBA的進め方も基本的に推奨はしません。

さて、この自分自身の失敗例を共有したとことで、新規事業開発の全体像を提示していきたいと思います(本記事は、まずは全体像を理解してもらいたい)。

その前に、なぜ失敗の道に入り込んでしまっていたことに気づけたのか、ということから共有していきます。

なぜ失敗の道に気づけたのか?

「開発も、リファクタリングも、世の中に出ないと全て負債」

とあるスタートアップでCTOをしていた方からの言葉です。

恐らくですが、私自身が頭でっかちになってしまっていたことに対してうまく諭してくれたんだなと振り返って思います。

不確実性コーンという表現があります。これはエンジニアリング組織への招待という本からの抜粋ではありますが、コンセプト時は不確実性が高く適切な見積もりをすることが難しいということです。PMが想定しているよりも工数がかかってしまうのはこうした背景があります。

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不確実性については、奥原さんの記事に良くまとまっていたので抜粋させていただきました。

また、企画ばかりで何か違和感を覚えていた私は、当時アジャイル開発やソフトウェア開発に関する大量の本を読みました。その中の1冊で「正しいものを正しくつくる」という書籍に出会います。

何が確からしいかを探し続け、どう作っていくのが最適か、これを毎日毎日問い続けていくことが大切です。

他にも参考になる書籍は本当にたくさんありましたが、いずれにせよ自分自身は正解をむやみやたらに探してしまっていたことに気づきました。

ソフトウェア開発は、「分かった」を少しずつ増やしていく行為であり、そしてこれをチーム全体で実現していくことが大切であることに気づきます。この時くらいから、事業開発はプロダクト開発でもありチーム開発でもあるなと感じ始めていました。

このように世の中にプロダクトが出ないと全て負債という言葉から、自分自身のこれまでの仕事の進め方をほぼすべてアンラーンし、プロダクト開発に向けてリスタートしたという感じです。

BizDevの全体像を理解する

さて、いよいよ新規事業開発とは?ということを説明していきます。今回は既存事業の新規地域への領域展開や、既存事業と類似した顧客に新サービスを提供する、という類ではありません。

自社のビジネスモデルを変革しなければ実現できないような0→1の新規事業開発です。

そもそもSaaS開発は自社初であり、誰も成し遂げたことがない中での新規事業だったので本当に色々なことがありました。
※いわゆるイノベーションのジレンマも多発しています

折角なので新規事業に対するアプローチのBefore、Afterを披露します。先に結論を言うとBeforeは辞めたほうがいいです、Afterのカタチでスピーディーにやっていきましょう。

 └【Before】旧来型アプローチ

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(図1:新規事業のフレームワーク(旧来型))

見ての通り、コンサルティングっぽいアプローチですよね。これが先ほど提示した「失敗」事例です。

(最初から解決すべき課題仮説を持ちながら)定石通りマクロトレンドや対象業界の動向調査、そして自社へのインパクトを調べていきます。その次にようやく解決すべき課題を特定し、更に収益シミュレーションまで含めた事業計画を作っていきます。

KPI設定もプロダクトがないのに仮に設定し、関係者まで巻き込もうとしています。当時はこのアプローチでは関係者までの巻き込みはしていなかったので良かった・・・笑

これの何が良くなかったかというと、

・検討期間が長すぎる
・明確になってきた課題の検証をする時期が遅すぎる
・課題の検証を、顧客に対して直接できない(出来ても口頭ベースのやりとりで、机上の空論になりがち)
・顧客課題を表面的にしか理解できない

と言ったところです。

続いて、色々と試行錯誤の上に辿り着いた再現性の高いアプローチがコレです。

 └【After】これからのアプローチ

こちらが、最終的に主眼にしていたアプローチです。

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(図2:新規事業のフレームワーク)

「新規事業の実践論」の書籍を参考に作成しています。この書籍を見て、新規事業の全体像はこれだ!と当時思ったのを今でも良く覚えています。

ENTRY期、MVP期と1つずつ階段を上っていくのですが、これが本当に難しいです。

それぞれにステージゲートを設けるのが良いのですが、やはり起点となるのはその立上責任者の想いや志です。リクルート的にはWILLってやつですね。以下でまとめてみました。

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(図3:ステージゲートの基準)

ENTRY期であればあるほど不確実性は高く(先ほどの不確実性コーンの話)、「分かること」を増やしていきそれをチーム全体のノウハウにしていくのが極めて大切です。

これの何が良かったのかというと、

・ENTRY期は顧客・課題・ソリューション仮説に絞って検証ができた
 (仮説課題をモックアップ等を活用し、直接検証ができた)
・MVPを作る、という意識に集中ができた
 (スコープが広がりがちだが、どこまでやるべきかを定義できた)
・ある程度課題が見えてから、適切な事業計画を作ることができた
 (旧来型のアプローチだと、戦略と実行がかけ離れがち)
・ステージゲートでの撤退基準をある程度意識して進められた

あたりかなと思います。

最後に、新規事業のENTRYフェーズにおいて何が大切なのか?ということを簡単に纏めていきます。

何がポイントか?

新規事業の特に初期フェーズ(ENTRY期)で何よりも大切なのは、「仮説」と「顧客」です。価値検証をいかに素早く進めていけるかが、事業成功の肝となります。

仮説が顧客に全く刺さらなければ、その後の作業は全て水の泡になってしまいます。(とはいえ課題はENTRYだけではなく永続的に大事なテーマです)

あと、有名な話ですが、ヘルシーが求められる時代にマクドナルドがサラダラップを展開したら全く売れず、超ジャンキーなメガマックが売れた、という話に近いです。

要するに、顧客のインサイトを掴みにいくのって非常に難しいということです。

新たな気づきや発見を積み重ねていくことが大事であり、そのためには仮説を持ち、そしてスピーディーに検証をしていくサイクルをどれだけ回せるかが事業成功の肝になってくると思います。

まとめ

そろそろ長くなってきているので今日はここまで。

・BizDevとは事業価値を創造し続ける存在である
・何よりも大切なのは、圧倒的な当事者意識
・新規事業は探しても見つからない
・事業創造は、価値検証が大事。コンサル的アプローチは×
・課題仮説と顧客の声に徹底的に向き合うことがポイント

なお、21年6月末にグロービスを退職し7月1日からスタートアップのナレッジワーク社に転職しています。
※立ち上げた事業は、デジタル部門リーダーに責任者を引き継ぎました

今後はスタートアップにおけるBizDevを中の人間としてナレッジ化しつつ、世の中にも展開していきたいなと思います。BizDev人材を極めたいならナレッジワーク!という感じにしていきたい。

ではまた次回!

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