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「今の自分が夢みたい」走り続けてきたことが憧れとの出会いを生んだ伊與田和希くんのストーリー

こんにちは。普段はこのnoteで僕の日々感じることを綴っていますが、今回はある友人へのインタビューを記事にしました。

再び走り始めてから3年、その間に多くのランナーと出会い、走ってきました。特に東京でラントリップのインターンやnoteランニング部の運営を経験して、一人一人に走る理由があること、見える景色があることを知りました。僕がnoteに想いを綴ることと同じように彼らの姿と言葉を知って欲しい。そう思いこのような記事を作りました。

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(画像:本人提供)

今回インタビューしたのは伊與田和希(いよだ かずき)くん。新聞奨学生として学業と新聞配達を日々こなしながら市民ランナーとして走り続ける大学生。また、Twitterで“Daapiyo”として神奈川の陸上情報や競技会の速報を発信したり、自身が在籍する大学の学生を集めた陸上サークルを立ち上げたりしています。

彼と知り合ったのは1年前、友人から紹介されたことがきっかけでした。年齢が一つ下(23歳)、大学生として回り道をしていることなど僕との共通点がとても多い。初回に聞くなら……彼の走ることへの想いやストーリーを聞いてみたいと思いインタビューをお願いしました。

インタビューを通して感じたのは「陸上競技が好き」という彼の純粋な想いと行動が偶然の出会いや次のチャンスを生んできたということ。

決して何かに秀でていたり、遠くの大きな何かを目指してきたわけではない。それでも、好きという想いや原体験をもとに走り続けてきた彼の姿と言葉には力強さがあり「挑戦することに怯んでいられない…」と背中を押されました。

真剣に走ることへの想いを語る彼の姿、ストーリーをぜひ読んでみてください。

県駅伝への切符を手にして一番の達成感を得た中学2年

ーーーこれまで聞いたことがなかったけど、いつから陸上競技に打ち込んでいるの?

伊與田:陸上を始めたのは中学生になってからですね。入学した中学校が何か部活には入らなきゃいけなくてサッカー、バレー、野球とかも選択肢にあったんですけど、親に「和希は努力型のスポーツがいいんじゃないか」と勧められて陸上部に入りました。最初は先輩の姿に感化されてハードルに挑戦してみたんです。

ーーーえ、最初はハードルやってたんだ!

伊與田:そうなんです。でも、身体が小さくて練習中にハードルに足をひっかけて転んでしまって…。元々足が速くなかったのもあって、長距離に移りました(笑)

ーーーなるほど(笑)長距離を走るようになって楽しかったことは?

伊與田勝てなかった人に努力することで勝てるようになった瞬間ですね。最初は同期の中で一番遅くて3000m11分を切れなかったんですけど、中学2年の中頃にタイムが伸びて1番になれました。それで、地区駅伝の選手に2年生で唯一選んでもらえて、しかもアンカーに抜擢されたんです。

ーーーえ、すごい…!

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(画像:本人提供)

伊與田:すごいですよねえ。地区駅伝は3位以内に入ると(神奈川)県大会に進めるんですけど、その年はもしかしたら僕たちが県大会へ行けるかもしれないというチーム状況で盛り上がりがありました。大会当日、僕にタスキが渡った時はちょうど3位でした。ただ、4位を走っていたチームのアンカーが凄い速いタイムの先輩で、後に関東インカレ決勝まで進むくらいの実力者。自分の走りで全てが決まると思うと相当なプレッシャーでした。後から先生に言われたんですけど、走り出す前は顔面蒼白だったらしいです(笑)

ーーーすごい重圧だよね…。結果はどうだったの?

伊與田:結局、僕たちのチームが20秒差で逃げ切って県大会に進むことができました。後にも先にも、あの瞬間が陸上競技をやってきた中で一番達成感を得られた瞬間です。自分は個人で県大会に行けるほどのレベルになかったので、良い順位を獲って県大会に行けた経験は純粋に嬉しかったです。あとはやっぱり自分の走りで決着がついたという経験も大きかったですね。

最後までやり切れず悔しさが残った

当時の思い出を嬉々として語る姿から走ることが楽しくてしょうがなかったのだろうと思った。その一方で、彼は自身のnoteに今でも走っている理由に“悔しさ”があると綴っている。

僕は中学の時も高校の時も家庭の事情で最後まで満足に部活が出来なかった過去がある。加えて、大学でも部活に入れなかったという「悔しさ」がある
僕が走る理由|だーぴよ

一体どんな悔しさを味わって、これまで走り続けてきたのだろう。

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(画像:本人提供)

伊與田:中学、高校どちらも陸上競技を最後までやり切れてないんです。中学3年生の時は長距離ブロックの主将として駅伝を目標に頑張っていましたが、高校受験のために英検を受けることになり試験日が地区駅伝と被ってしまって…。もちろん僕は地区駅伝を走りたかったんですけど、親に進路の方が大事だろうと説得されて…泣く泣く英検を受験しました。

ーーーうわあ、それは悔しい…。やるせないね…。

伊與田:悔しかったです。高校こそは…と思ってたんですけど、高校でも3年生になってから家庭の事情で大学の受験費用をバイトで稼ぐ必要があったので、部活に参加できなくて最後の大会に出れませんでした。本当は高校駅伝で1区走ってみたかったですね…。

※42.195kmを7区間でタスキを繋ぐ高校男子駅伝では1区が最長区間でチームのエース選手が走ることが多い。

3年間のブランクを経て復帰レースへ

中学、高校と不完全燃焼な形で終えざるを得なかった伊與田くん。その後、1年の浪人生活を経て立教大学へ入学。最初は大学の陸上部へ入ることも考えたが、バイトとの両立が厳しく断念。しばらくは競技から離れ授業とバイト…という日々が続いた。そんな彼に転機が訪れたのは大学2年の夏。久しぶりにレースに出場し、そこでの出会いがきっかけで様々なチャンスを掴んでいった。

ーーー陸上競技から離れていた日々から復帰にはどう繋がっていくの?

伊與田:離れていたといってもたまに走ってはいたんです。大学2年の夏だったかなあ。OTT(オトナのタイムトライアル)が3000mを開催する情報を見つけて、これなら走れそう…と思ってエントリーしました。

ーーーそうだったんだ。ちなみに僕も2017年のOTT3000mが高校以来に出たレースだったなあ。まさか同じレースが“復帰レース”だったとは……

伊與田:おお、すごい共通点……(笑)それで、その時ある人との出会ったのがその後、いろんな選手と関わりを持っていくことへ繋がるんです。

ーーーへえ、どんな人だったの?

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(画像:本人提供)右が瀬能くん

伊與田瀬能展也くんといって(当時)早稲田大学の陸上同好会で走ってて、同じ神奈川出身だったので中学生の頃から名前は知ってました。OTTに1人で参加する予定だったのでTwitterで参加する人を探してたら彼が参加すると投稿してて、DMを送ってみました。

そしたら、返信をくれて、現地で会うことになって。

ーーーすごい。なに、その展開…。

伊與田:そうですよね…。彼が同好会で走っていたことで、早稲田大学の同好会はインカレサークルだったので僕も入ることになって。

ーーー誰かと走る環境ができたんだね。そこからどう変化していったの?

伊與田:はい。彼は他にも市民ランナーと走る機会を作っていたり、多くのランナーとの繋がりを持っていたりして、その影響を受けていろんな場に出ていくようになりました。

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(画像:本人提供)中央が伊與田くん

2017年夏に復帰して3年間走り続けてきた伊與田くん。復帰してから影響を受けたランナーは?と聞いた質問にも「瀬能くん」と答えるストレートさに、その出会いがいかに大きかったかを知った。現在は新聞奨学生としての生活もあり、陸上競技を両立することはとても大変だという。それでも「走っていなかった頃に比べたら今の方が生活が充実して好き」と想いを語る姿はキラキラしていた。

2018年には復帰後目標にしてきた5000m16分台へ突入。先日も1500mの記録会で自己ベストを更新し、着実に前進を続けている。

走ることで生まれた繋がりが「想像してなかった今」へ

復帰してから3年で大きく変わったのは自分の見える世界だと本人は語る。

伊與田:陸上競技を観る方も好きで、復帰する少し前にTwitterで競技会の観戦情報を発信し始めたんですけど、予想以上に見られるようになって有名な選手から「取り上げてもらってありがとうございます」と連絡が来たこともありました。発信し始めたのも、最初は「やってみたら見る人いるかな?」という軽い気持ちだったのでまさかこんなに多くの人から見てもらう(現在約2,500フォロワー)とは思っていなかったです。

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(画像:本人提供)左が伊與田くん。バーチャレin神奈川の運営としても活動

また、中止となったインターハイや全中の代わりとして開催されているバーチャレの計測会として先日開催された「バーチャレin神奈川」の運営に関わっている。この大会に関わるようになったのも、Twitterで発信し続けてきたからだという。そのなかで、見続けてきた有名な選手や強い選手と出会う機会も増え「今の自分がこんな風になるとは想像してなかったので、なんか夢みたいです。」と語る彼の目はちょっと戸惑いながらも嬉しそうだった。

そして、今年の春には陸上サークル“RIKKIO AC”を自ら立ち上げた。2018年12月から立教大学は箱根駅伝出場に向けて陸上部長距離ブロックを強化しているが、走ることを楽しみたいという学生の受け皿がないのでは?という想いから行動を起こした。

もちろん立教が強くなっていくのは嬉しいし応援しているけれど、これにより立教らしさや裾野の広さが失われることには少し悲しさも覚える。
ここに、立教に陸上サークルを作ったらどうかと考える理由がある
RIKKIO AC構想|だーぴよ

ーーー立ち上げた時のnoteを読んで思い切ったなあという印象があったけど、実際にはどんな気持ちだったの?

伊與田:立ち上げる時は人が集まるかであったり、運営をしっかりできるかという不安はありました。代表として動くのはなかなかない経験だったので。

今は毎週水曜日に練習会をやって集まるくらいですけど、陸協登録を申請したりユニフォームを作ったりとやることが増えてきてサークルを作ったんだという実感が湧いてきました。

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(画像:本人提供)

ーーー少しずつ動いてるんだね。サークルを立ち上げて嬉しかったこと、今悩んでいることはどんなこと?

伊與田:今メンバーが6人いるんですけど、なかには1年生もいて、その子たちは入学してからずっとオンライン授業で大学の同級生と会ったことがないので「練習会で同じ大学の人たちと会えて嬉しい」と言われたのが個人的には嬉しかったです。

悩んでいることは、サークルを今の規模で細々と続けていくのか、それとも大学公認のサークルにして合宿などもできるようにしていくのか。今の状態でもいいなあと思う分悩みますね…。

誰でも競技に関わって盛り上げるチャンスはあるはず

先のことはまだ分からないと言いつつも、一歩一歩自分の想いを行動にする伊與田くん。行動を続けてきた姿に周りの人たちは魅力を感じて集まってくるのだろうなあと感じた。最後にこれからの目標などを聞いてみた。

ーーー今後はどんな目標で走っていきたい?

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中央が伊與田くん、右が僕

伊與田:直近の目標は5000m15分台を出すことです。あとは、僕自身「速くなりたい」と思って中学生の頃から走ってきて、その憧れの先にいるような人たちにここ数年で出会えて「夢みたい」とフワフワした気持ちになるんです。

そんな嬉しさがあるからこそ、刺激を受けた選手や人たちのようにランニングや陸上競技を自分も盛り上げていけるようになりたいです。

ーーー真っ直ぐな想いがあるんだね。最後に伊與田くんから伝えたいメッセージがあればぜひ。

伊與田:自分は所謂“速い人たち”の中にはいなかったけど、OTTのような場で憧れてた人たちと一緒に走ったり、SNSで発信し続けてきたからこそ、それまで見てきた「あっち側」に今います。

たしかに、競技者としては一部の人しか関われないかもしれないけど、自分のようにSNSを通して競技に関わったり、他の部分から関わったり。盛り上げていくことは誰にだってできるんだと思っています。だから、何かしらの形で関わりたいと思っている人にとって「自分もできる」と思ってもらえるような人になりたいです。

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等身大だけど、熱い想いが彼の中にはあった。実はインタビューをするまで本人からこうした言葉を聞いたことはなかったので、驚いたというのが正直な感想でした。

中学生の頃から好きだけどやるせない悔しさを感じてきたこと、復帰してから憧れてきた存在たちとの出会いを通して見える世界が大きく変化したこと。単純に見れば一個一個のできごとでしかないのかもしれません。

けれども、本人の話を深く聞いていくと、一個一個があったから今に繋がっている大事な経験だったのだろうと感じました。

何者かを目指さなければいけないような雰囲気に苦しい思いをすることもある昨今。しかし、好きな走ることに純粋な想いを傾けて、一つ一つの出会いを大事にして駆け上がってきた彼の姿を見ていると、案外進んでいく道は目の前にあるのかもしれないと気づかされました。

これからもランナーとして前に進んでいくのだろうし、新しい出会いを通して今よりもずっと見える世界が変化していくのだと思います。不思議で夢のように進んできたストーリーはこれからどうなっていくのだろうと気になるインタビューでした。

伊與田くん、語ってくれてありがとうございました。

▼伊與田くんのnoteはこちらから


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