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【TRAIL LOG】伊豆南北縦断トレイル

2022年のゴールデンウィーク、伊豆半島の南端下田から、海岸沿いを歩き大瀬崎まで旅をしました。山歩きとは趣を異にするまさに「歩き旅」。
今更ながら記してみます。

ルート

伊豆急下田駅~大瀬崎(江梨バス停)

距離:117km
累積標高:5,130m
日程:3泊4日

DAY1 下田駅~入間
DAY2 入間~堂ヶ島
DAY3 堂ヶ島~小土肥
DAY4 小土肥~大瀬崎 

歩いた軌跡

DAY1

北関東の自宅から車を走らせ、沼津駅近くに駐車し、電車に乗って下田駅を目指す。(※数日間にわたりコインパーキングに駐車をすると金額が高くなったり、上限日数(大体48時間)があるので、特Pというサービスを使って、有料の駐車場を借りています)

伊豆急に乗り下田へ

下田駅に降りると椰子の木や抜けた空が広がり、南国に来たような感覚だった。
まずはマックのモーニングセットで腹ごしらえ。
1日目の行動食でチキンナゲットを購入し、歩き始めた。

南国の雰囲気が漂う下田駅

まずは海を目指して、舗装路を進む。まだ5月に入ったばかりなのに、日差しが強く、照り返しが暑かった。

カラフルなトンネル

ひたすら舗装路を歩いていくと、海が見えてくる。吉佐見大浜海水浴場だ。雰囲気のある海で見覚えがあると思ったら、前に見た映画のロケ地だった。(福山のやつ)海水浴やバーベキューをする人でごった返していた。

ガリレオのロケ地だそう

そこからは海沿いに国道を歩いていく。想像よりも交通量が多く、トンネルの中なんかは怖かった。

サンドスキー場、竜宮窟とかの観光地を見学しながら、先に進む。しばらくすると伊豆に来て初めてのトレイル(山道)に入る。南伊豆遊歩道(タライ岬遊歩道)を通り、タライ岬を目指す。

龍宮窟
サンドスキー場

ここからゴールまで遊歩道と舗装路を交互に歩いていくことになる。緩やかなトレイルを進むとタライ岬に到着。
ゴツゴツとした苔むした岩場はまさにイメージしていた伊豆そのものでした。

タライ岬遊歩道
どこまでも水平線が伸びる

タライ岬から遊歩道を進むとまた舗装路へ。次は初日の見所の一つである石廊崎を目指す。

道中の漁村で、お昼休憩。朝買っておいたチキンナゲットを食べる。
静かな漁村の一角で風を感じながら食べるジャンクなフードが「トレイルきてるなぁー」と黄昏ながら食べた。

昼マック
漁村の何気ない風景も新鮮に見える

しばらく歩くと弓形に海岸線が伸びる弓ヶ浜へ。ここは海水浴客で賑わっていて、トイレや自販機もあった。
1人バックパックを背負い、明らかに海水浴目的じゃない自分は浮いていたと思う。

バスに乗って進むことを何度も考えた笑

弓ヶ浜を過ぎると、石廊崎へ。
伊豆半島の最南端に位置し、灯台で有名な石廊崎はたくさんの観光客で溢れていた。

伊豆の最南端
迫力のある波打ち際

足早に灯台まで見学をして先を進んだ。
初日の目的地は入間漁港。ほんとは中木という所から入間まで遊歩道があったけど、トレイルの入り口を見逃してしまい、そのまま舗装路をひたすら歩いた。

歩道もない道の傍らにはアロエが自生していた
アロエのアイスで休憩

そして16時ごろ、入間漁港に到着。
入間にはキャンプ場があるのだけれど、予約もしていないし、野営したいと決めていたから、海岸の端っこに野営することに。
風が強くうまくタープを建てられなかったから、先に着替えや食事を済ませ、落ち着いてからタープを張ることに。

また水場(水道)がなく、漁港にあった商店も開いていなかったから、少し町内を散歩しつつ自販機を探した。どうにか自販機を見つけ、水を確保することができた。

1日目の夜はとても暗闇が深くて、風も強く、風の音と波の行き来する音だけが響いていた。

シングルタープ。風が強かったので低めに設営。

タープ泊ということもあり、周りの目が気になりつつも、初日の移動や歩いてきた疲れもあり、ぐっすり快眠することができた。

DAY2

2日目は3:00に起床し、4:00には出発した。山の中を歩くときの習慣で朝は早く目覚めてしまう。
入間からは漁港脇から遊歩道があり、ヘッデンの灯りを頼りに歩みを進める。

入間からちょっと登ったところで見えた海や、吉田の海岸は本当に綺麗だった。

吉田の風景
吉田にある白鳥神社のビャクシン
樹齢800年らしい


吉田からはまたトレイルに入り、妻良漁港という大きな港を目指す。
トレイルと同じくらい舗装路も長く、足腰が疲れてくる。まだ時間も早かったので、足早に妻良を通過した。その先の落居という小さな集落で、道を間違えそうになったところ、地元の人に正しい道を教えてもらったりもした。

トレイルは歩きやすい

落居からはマーガレットラインという車道を数キロに渡って歩いた。峠道だったので、登りもあれば下りもあり、GWで交通量も多かった。特に見所もなく、ひたすら歩いた。

昼前に雲見という港町に着いた。
これまでの町とも雰囲気が違い、民宿や、人で賑わう小さな海水浴場もあり、居心地が良さそうだった。
ビーチの近くに「浜の家」という食堂があり、迷わず入店。
海水浴客に交じって、昼から瓶ビールを開け、チャーハンをいただいた。おいしかった。

雲見の町
佇まいからして好み
ビールが沁みる
チャーハンはうまかった

雲見からもひたすら舗装路を進む。
小さな集落に出ては、また峠に入るを繰り返す。時折見える港の風景や、伊豆ならではの海岸線の風景が綺麗だった。

鮮やかな青が印象的な西伊豆の海

2日目は萩谷崎という場所で野営しようと考えていたけど、だいぶ早い時間(昼過ぎ)には着いてしまったので、行けるところまで進むことにした。そして、15時過ぎに松崎という大きな港町に着いた。

松崎は大きかった。
スーパーもあれば、コンビニもあって、何より車や人が多かった。
吸い込まれるようにコンビニへ。ハイカーは食に飢えているのだ。

コンビニに近づくと、店の前になにやら同じ匂いがするバックパックが置かれている。
「ハイカーだ!」
嬉しいような恥ずかしいような気持ちを抑え、店に入ると、明らかにアウトドアの匂いがする2人組が買い物をしていた。
一旦店の外に出てコーラを飲んでいると二人も店から出てきて、挨拶を交わした。
話してみると二人とも伊豆の山を歩いて海岸沿いに降りてきて、南下している途中とのことだった。
驚きだったのが、自分はTwitterで二人ともフォローしており、Youtubeのハイキング動画も見たことのあった知らないようで知っている人たちだったのだ。(しかも一人はTシャツと靴が同じだった照)
お互い歩いてきた道やこれからの行き先などの話で盛りあがり、自分は昨夜二人が野営したという堂ヶ島を目指すことにした。

ちなみこのトレイルを歩いた4日間で同じように歩いている人はこの人達以外いなくて、最初で最後のすれ違いとなった。

2日目の幕営地が見え、気が緩みコンビニで飲み物やジャンクなフードを買い込んでずっしりと重くなったバックパックを背負い、また歩き出した。

仁科から堂ヶ島は西伊豆でも有名な観光地で、「ゆるキャン△」の聖地?でもあるようで、多くの観光客が行き来していた。

リンちゃん
仁科の海

宿泊地は堂ヶ島温泉ホテルという場所の目の前に瀬浜海岸という小さな海岸があり、潮の満ち引きで離れ小島への道が現れるという「堂ヶ島のトンボロ」が見られる最高のロケーションだった。

観光客が多く、堂々と寝床を設営するにはやや気が引けたけど、早く休憩したかったので、おかまいなしにタープを設営した。
蚊が少しいたけど、敷地内には水洗の綺麗なトイレまであり、言うことなしだった。

湯を沸かしてコーヒーを飲むがルーティーン
気持ちのいい眺望

16時にはやることもなくなり、食事をしたりゆったりと過ごした。
ここで見た西伊豆の夕焼けは心に残る景色だった。

最高の景色を眺めながらチルタイム



日が暮れるまで一人だったけど、夜遅くにバイカーが来てテントを設営しはじめて、ちょっぴり心強かった笑

DAY3

3日目も3:00に起きて4:00には出発。
2日間歩いてきたのに、3日目は身体が軽いハイキングあるあるだ。

3日目も目的地は決めていなく、ひたすら北上していく。

舗装路を進み、浮島海岸へ。ここからは燈明ヶ崎という遊歩道に繋がっていて、雰囲気のある道を進む。
トレイルを抜けると漁村の脇にでて、現役の漁船や、漁村のなかを通り抜ける。
車で伊豆に観光に来てもこういう地域の人の営みを見る機会はほとんどないので、時間をかけてこういう情景を見ることはハイキングならではだと思う。

伊豆のトレイルには一貫してこういうわかりやすい看板が設置されている
燈明ヶ崎へ向かう
見飽きることのない伊豆の景色
漁村の何気ない風景

燈明ヶ崎を抜けるとまた舗装路に戻る。
しばらくして住宅街の中を縫うように坂道を上がっていき、今山という小高い山を越えた。この伊豆のトレイルの中でも最も山道らしい道が続き、とても落ち着くことができた。

雰囲気のある東屋
ウリボー。怖くてすぐ離れた。

先を進むと黄金岬という有名な観光地があり、遊歩道も伸びていたらしいが、またまた見落として先に進んでしまった。

宇久須港を経由して、恋人岬へ。名前に似合わず、荒々しいトレイルが続き、久しぶりに息を切らしながら進んだ。
恋人岬にある象徴的な鐘に着くと、周りには見事にカップルしかいなかった。
浅黒く日焼けし、短パンに半袖、大きなバックパックを背負って“異物感”が出てしまっていた自分は足早に恋人岬を後にした。

恋人岬とうっすら富士山

また長い舗装路を歩いて進んでいく。
八木沢という地区に差し掛かった時、この度ではじめての富士山を視界に収めた。
本来この伊豆半島を北上するトレイルは、富士山をめがけて歩いていけるのだが、まだGWのこの季節だと霞みがかっていてはっきりとは見えなかった。

なんだかんだペース良く歩き、昼頃には土肥港という大きな港町に到着した。薬局や食事処、コンビニもあり、下調べしていたハイカーがここで幕営していた土地でもあった。

ただあまりにも到着時間が早すぎたのと、人が多かったこともあり、手持ち無沙汰になってしまう気がしたので、なんとなく先を進むことにした。

土肥港から30分ほど歩いていくと、隣に小土肥(おどい)という小さな港町があった。

端から端まで数分で行き来できるほどの規模の砂浜の海岸と、ホテルが1軒あるのみで、あとは住宅が数件あるだけの小さな港町だった。

ここから先は峠を越えていかなければならないこともあり、3日目はここで野営することにした。
なにより、少し歩いただけで雰囲気が気に入り、人も少なく、居心地がよさそうな気がした。

ビーチから少し上がったところに公衆トイレと、その隣に芝生の敷地と東屋があり、そこをお借りすることにした。

小土肥の町
東屋の脇にタープを設営

タープを張って、地元の方から土肥に日帰りで入れる温泉があると聞き、3日ぶりの風呂に入ることにした。

3日ぶりのお湯は声が出るほど気持ちよかった。
日焼けしたであろう肌がひりひりする感覚も嫌いではない。

共同浴場の弁天の湯。大人500円。
源泉掛け流しで熱かった。

小土肥に戻ると、ちょうど夕焼けの時間に差しかかっていた。
水平線に真っ赤に染まる太陽が沈んでいく様子を見ながら、この旅も明日で最終日かと寂しさがこみ上げてきた。

小土肥の夕焼け

芝生の上の寝床はふかふかで、お風呂に入ってさっぱりしたことにより、3日目にして、一番快適な夜を過ごすことができた。

DAY4

気持ちのいい柔らかい芝生の感覚に幸福感を感じながら目が覚めた。
3日目の撤収になるとなんだか手慣れてくる。
4日目のゴールは大瀬崎からさらに進んだところにあるバス停だ。
本数が少なく昼くらいの便を逃すと何時間も待ちぼうけになるから、足早に出発した。

傾斜が穏やかなトレイルが続く

小土肥からは海岸から少し離れ、住宅地を縫うように進んでいく、トレイルに入ったり出たり、最終日でも舗装路は長い。

戸田という大きな港町を経由して、井田海岸へ向かう。
緑豊かなトレイルが続き、時折舗装路に出ては富士見何ちゃらという休憩スペースがあって、バイカーや観光客がチラホラいた。
(ガスで富士山は見えなかった)

戸田港
港町の雰囲気がいい

井田海岸からはいよいよゴールの大瀬崎まで長い舗装路歩き。
舗装路は歩きやすいように見えるが、地面からの反発が強くて、膝や足裏にダメージが溜まる。
4日目にして身体の節々が痛くなってきていた。

井田海岸
木漏れ日が気持ちよかった

もう少しで大瀬崎というところで最後のトレイルに入る。
海が綺麗だ。
海に見惚れ、このトレイルが終わってしまうという寂しさに包まれながら歩いた。

トレイルを終わると終点の大瀬崎に到着。

大瀬崎までもう少し
ゴール真近!
ゴール!大瀬神社鳥居前で

大瀬崎はダイバーの聖地と呼ばれているらしく、ダイバーの学生の団体でごった返していた。

ジロジロと奇怪な目線を感じながら、足早にバス停を目指して歩いていく。

ここで一つ誤算だったのは、バス停のある江梨まで5kmほどあった。

バスの時間も気にしながら、小走りで舗装路を進む。
一度気の緩んだ後の小走りはきつかった。

どうにかバスの時間にも間に合い。
沼津駅行きのバスに乗車することができた。

4日ぶりの文明の機器のありがたみを感じた。

沼津駅に戻り、車を停めていた駐車場に戻り、着替えを済ませて、ご褒美タイムに突入する。

車で数分の魚市場に行き、海鮮丼を食べ、お土産を購入してから、栃木への帰路についた。

海鮮丼!味噌汁が沁みた
人で賑わう沼津港

こうして、自身でも初となる3泊4日の歩き旅は終わった。
振り返ってみると、100km以上歩いて、一つもピーク(山頂)を踏まない旅だったのに、充実感がとてつもなく大きなものとなった。

人混みの喧騒から離れた山深い奥地を縦走するような旅ももちろん楽しいのだけれど、その土地の営みや風景、人と交わって町から町、山と町を繋ぐような旅はまさに【ロングトレイル】に近いものだった。

ロングトレイルといえばアメリカをはじめ世界各地に魅力的なトレイルがたくさんあり、いつか歩いてみたいなと憧れはあるけど、まずはこれから日本各地を歩いて繋ぐ旅がしたいと思ったきっかけとなった。

歩くのは楽しい。
バックパックに衣食住を背負い、自らの歩く道を自ら決めて歩くことは、知らない土地を知ることと同時に、ある種の「生活力」が求められる。
さまざまなリスクと付き合いながら、歩く旅を続けていきたい。

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