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オンライン授業へ #1 映像配信機材

2020年4月。コロナ禍に対応して、私の勤める大学の授業がすべてオンラインで行われることになった。しかも4月17日からは大学のBCPレベル4に上がって、キャンパスには教員でも許可なく行けなくなったので、すべての準備を自宅でやらなくてはならない。

これまで、私のうちには書斎にあたる個室はなく、持ち帰りの仕事なんかもすべてリビングルームでやっていたのだが、これは数週間の話ではないと覚悟して、家族の寝場所を調整してもらい、専用の在宅勤務空間を用意した。

講義のオンデマンド映像化はいずれやらねばならないとずっと思ってきて、ToDoリストの「急ぎでないが大事」枠に長く居座っていたことなのだが、いよいよこの思いもよらぬ外的要因によって、やるしかなくなってきた。

映像配信のシステム

私が担当する座学の講義のために、いろいろ試行錯誤した。大体こんな感じで、授業のための映像配信をすることになりそうである。職業柄、それなりの機材はすでに手元にあったので、改めてつなぎ方を整えたという格好だ。

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短い時間で大量の教材を作らねばならないので、講義時間にリアルタイムで配信するか、収録しておいたムービーをアップロードするか、いずれにしても一発取り後処理無しということになるだろう。

システムは macOS 10.15.4 をベースに用意した。

マイク

投資対効果が大きくて、ぜひやるべきと思うのは、なんといってもマイクだ。PC内蔵のマイクから外付けに変えると、聴きやすさがずいぶん変わってくる。声がクリアに聞き取れないのでは、オンラインの授業は相当辛いだろう。

私は、手元の audio-technica AT9941 を使った。これだとミニピンプラグだからPC に直結できないのでカメラ経由でつないでいる。3極のプラグを4極に変換するアダプタを使えば繋げるという話も見かけたが、MacBookPro16ではダメなようだ。

パチパチとノイズが出ていたが、内蔵の電池(LR44)が切れかけていたためであった。

その後、カメラ経由で接続するのもホワイトノイズが結構あるので、USBのオーディオインタフェイスをかましてつないでいる。



SIGMA fp をウェブカムに

PC内蔵のカメラは手軽だが、やはり性能がそこそこなので、せっかくなら手元のカメラを使いたい。買ったばかりなのに外に出られなくなって、いつ使うんだよ……となっていた SIGMA fp にも、役不足とは思いつつ、授業で働いてもらうことにした。

素晴らしいことに、SIGMA fp は USB で mac と直結すればウェブカメラ として使用することができる。MENU / SYSTEM / USBモード / ビデオクラス(UVC)にすればよい。AC電源をつながないと実用的ではない。つなげれば、ZOOMやMeetのカメラ選択の設定部分で、FaceTime HD や Snap Camera と並んで出てくるようになる。

映像記録設定の解像度がUHDだとZOOMのバーチャル背景が使えなかったので、この時はFHDにした。これはPCの処理能力によるのかもしれない。UHDでつないでいると、PCのファンがすぐに回りだして騒音を発生する。マイクがこれを拾うので、やはりUHDはここでは過剰ということか。

ウェブカメラ としての SIGMA fp は、うまく撮れると素晴らしい映像になるし、表情のニュアンスまで読み取れるようにな感じになるのだが、露出とかピントとかなかなかにデリケートで、もう少し修行が必要。でも楽しい。T&O カラーで授業したりしたい。

SIGMA fpでつなぐと、テレビ会議の相手に「すごいキレイですね」と言われることが再三ある。もちろん私の顔ではなく映像のことだ。伝わるニュアンスも増えるように思う。

これまで、

現状(2020.4.26)での問題は、USB-Cでつないでしまうとまったく本体ではコントロールできなくなること。AFも効かないので、被写体が動くとF2.8の美しいボケの中に溶けてしまう。レンズのスイッチでAFからMFにすれば、手動でフォーカスは変えられるので、手の届く範囲にSIGMA fpをおけば何とかなる。しかし、結構頻繁にMFの調整が必要にはなる。

……と書いていたのだが、下記の記事をみて、設定を見直してみるとAFが機能することがわかった。謝して訂正したい。

ところでfpをWebカメラとして使用する際のピント合わせの方法だが、当初は"置きピン"で撮影していた。しかし、fpカメラメニュー内の[SHOOT]-[フォーカス(CINE)]-[常時AF(CINE)]に加え、[顔/瞳AF]をオンにして試したところ意外にも(シグマに失礼)、ゆっくりな動きではあるが、AFで顔にピントを合わせてくれるのだ。
いくつかのレンズで試してみたところ、広角〜標準レンズであれば2〜3秒で合焦、中望遠〜望遠200mmであっても10秒程度で合焦する。Webカメラ用途であれば、この程度のAF速度でもさほど気にならないだろう。
https://dc.watch.impress.co.jp/docs/review/minirepo/1251549.html


公式サイトの機能一覧のページによれば、

UVC (USB Video Class) 対応
パソコンとUSB接続をするだけで、ウェブカメラと同様に使用可能。映像だけでなく音声も同時に入力できます。ライブストリーミングにフルサイズカメラならではの最高画質を提供します。
※ UVC接続時のカメラメニュー設定は、後日ファームアップで実装予定。

とあるので、ファームアップには期待したい。

PENGO 1080p Grabber

SIGMA fp のように UVCモードがあれば USB で PC に直結できるが、そうではないカメラも多い。最近のカメラなら HDMI で映像を出力できるだろうが、そのままでは PC につながらない。HDMI を USB に変換するアダプタが要る。見た目は PC をプロジェクタなどのHDMIにつなぐアダプタとまったく同じなのだが、信号の流れが逆になる。

このPENGO のキャプチャボードはドライバソフトも不要で、つなぐとウェブカムとして認識されるようになる。もっとずっと安いものもあるが、これはモノとしての質感も悪くなく、今のところ安定して動いている。

GoPro 

GoProは小さいので書画カメラのように使うのにも都合が良い。私の使っているのはGoPro Hero 6 Black。上記のPENGOを経由すればウェブカムとしてつながる。

ケーブルの端子カバー(サイドドア)は、開いた状態で横に引っ張ると外れる。

GoPro側の設定の要点は、設定/HDMI/ライブ にしておくこと。タッチディスプレイ上のアイコン表示なしで、PCに映像を送れる。また、画角や解像度など映像の設定を済ませてからHDMIでつなぐ。PCにつなぐとカメラ本体で調節できなくなる。

また、書画カメラにするなら、デスクの奥から手前にアームを伸ばすことが多いだろうが、その時は設定/自動回転/下として、映像の天地を逆にしたまま固定する。

複数のカメラ

このように、カメラが複数台接続されていると、写すものを随時切り替えながら示すことができる。講師の姿、書籍や模型などの実物資料、板書に相当するスケッチブックなどを組み合わせながら授業を進められる。

そして、講師からの映像にせよ、学生からの映像にせよ、ZOOMの画面共有に載せることができれば、ZOOMのコメント機能で、共有されている映像の上に朱入れをすることができる。私が担当する建築設計のエスキスではこの機能をよく使うことになるだろう。

グリーンスクリーン

グリーンスクリーンについては、手元にあった養生用のグリーンシートを試しに吊るしてみたのだが、表面がテラテラして色が一様にならないため、綺麗に合成できなかった。

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写真の一部が光っているのは後ろに窓があるためだが、ここをダンボールで塞いでみたのだが、クロマキーはうまく抜けない。

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一応はちゃんとしているグリーンスクリーンが届いた。そんなに高級なものではないが、養生シートよりはかなりマシだと言っていい。抜ける。

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そのほかに

これらの他にあるといいと思うのは、
 - 女優ライト
 - 書画カメラとして使うためのアーム
 - USB-C のポートを増やせるハブ
……あたりか。女優ライトはカメラの露出をいじればいいだけかもしれないが。

USB-C のポートを増やせるハブについては、いろいろ探してみてはいるのだが見つからない。規格的に存在しないのだろうか。USB-C オス → USB-A オス に変換するアダプタは売られている(上記のPENGOには付いてくる!)が、規格外の危険なモノらしい。そりゃそうだ。USB-Cを増やせるハブがもしあればぜひ教えてください。

追記

SIGMA fp 使用の詳細について映像のプロによる解説記事。必読。



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