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オンライン授業へ #6 書画カメラをつくる


「書画カメラ」というものがある。卓上に水平に置かれた書画資料を、アームにつけたカメラで撮影するものだ。

アナログな「デュープ」の思い出

昔話をすると、パワーポイント以前のアナログ時代には、レクチャなどで投影する「スライド」は、ポジのリバーサルフィルムを一コマずつ切ったものを、厚紙か樹脂の正方形の枠で挟んだものだった。このスライドをカルーセルと呼ばれる装置に順番に入れ、プロジェクタに載せ、カシャンカシャンと音を立てながら、一枚ずつスクリーンに映した。カルーセルに入れるときに上下と裏表を間違えるとややこしいことになった。

デザインの授業ではたくさんの図版を見せる必要があるので、スライドをよく使う。書籍の図版を投影して見せるには、自分で書画カメラで本の図版を撮影し、スライドにする必要があった。書画カメラの出番である。

「書画カメラ」とはいうが、卓上におく台のついた三脚のようなもので、カメラは別途用意する。大抵はマクロレンズをつけた一眼レフで、フィルムはリバーサルのを入れる。これを下向きにセットする。カメラの両側にブルーランプがついていて照明する。猛烈に熱く、触ると火傷する。

台の上に、本を広げて置く。狙いの図版の周囲の余分なものが入ってしまわないように、黒い紙で作ったL字型の枠二枚を使ってトリミングする。撮影のときに親指と人差し指をL字にして、両手でフレームを作って構図を検討することがあるが、あの手つきと同じだ。さらに、開いた本は平坦ではないので、ぎゅうぎゅう押し付けて開き(それで製本が傷むので図書室とはよく揉めた)、さらに無反射ガラスを押し付ける。

ファインダをのぞきながら、本を動かしてセンターを決め、カメラを昇降させて構図を確定し、焦点を合わせて撮影する。撮影したい図版の数だけ、これを繰り返す。まとまった枚数があると一日仕事だった。その後現像して枠に入れるのに数日かかる。撮影に失敗することもあるので、余裕を持って準備をする必要があった。画像検索しながらリアルタイムで図版を映すレクチャなど夢想することもなかった。

この撮影台のことは「デュープ」と呼んでいた。dupe だろう。スライドそのものを複製することも dupe だが、本などの図版をスライドにすることも dupe で、dupeするための台だからデュープだ。デュープは建築意匠や計画の研究室のフロアのコピー室の奥にあった必需品だったのだ。

Zライトを書画カメラのアームにする

今はデジタル配信なので、こんなややこしいことはしない。それでもアームで自在に動かせて、卓上の書画を撮影できるカメラが必要になる。私の最初の需要は、手描きで透視図を描く手順を示す作業の動画を撮影することだ。

手元の三脚や自撮り棒的なものを、いろいろなカメラにあれこれ付け替えてみたりしたのだが、今のところの形はこれである。

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- Zライト的な自在アームのデスクライト(これはIKEAの)
- Small Rigのクランプ
- GoProを三脚につなぐマウントアダプタ
- カメラは GoPro
- PENGO グラバー キャプチャボードで、macへ

Zライトは自在に動くし、照明もついている。私の用途では、ホワイトバランスはデジタル処理でなんとでもなる。あまり重いカメラは無理だが、GoProとクランプぐらいなら問題ない。ただし、ケーブルの重さがかかると首が垂れてしまうから、適当に始末する。

このSmall Rigのクランプは作りもしっかりしていて、なかなか使いやすい。まずライトのアームをクランプでくわえる。本体にはボールジョイントが二箇所あるが、位置を大体決めたら、蝶ネジ一箇所を締めれば全体が固定される。

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GoProは基本的に広角で画面が歪んでしまうから、ズームで画角を調整する必要があった。

また、ある程度長い時間の撮影をするなら、自動オフを無効にしておくこと。電源につながっていても切れてしまう。

カメラと照明の傘を回せば、女優カメラができる。私には差し当たり需要はないが。


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