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オンライン授業へ #5 ワールドカフェ

ワールドカフェという形式のワークショップがある。大人数の会であっても、小さいグループに分割して話合うことで、一人ひとりの参加者がある程度発言する機会が得られたと感じ、また面識のない群衆と人見知りなワタシとのギャップを埋め、顔を見ながら直接言葉を交わした人を10名くらいは得られる方法で、参加者の満足度も高く、 様々なケースに対応できてやりやすいので、多用している。何かを決めるためではなく、何かを考えはじめるためのワークとしてはよい方法だ。

これをアレンジしてオンライン授業でやってみた。大学院生中心の50人ほどのクラスである。

必要なもの

- ブレイクアウトルームをオンに設定したZOOM
- 各ルームから書き込むためのGoogle スプレッドシート

「書き込み用紙」の準備

普通なら模造紙とマーカーをテーブルごとに置くのを、Googleスプレッドシートで代用する。
大勢で同時にリアルタイムで、タブで複数ページのある単一ファイルを編集できるものなら、なんでもよい。
私の経験ではGoogle スプレッドシートは100人ぐらいで同時に編集しても破綻しなかったので、信用している。

Googleスプレッドシートをひとつ開く。
最初のシートを雛形にする。
冒頭部分にテーマ、あるならサブテーマを書き込む。
書き込み用に、ラウンド1、ラウンド2、ラウンド3のカラムを作る。セル内で折り返し表示にしておく。
全参加者数を、ルームの人数(普通は4人)で割って、ルームの数を求める。
テンプレートのシートをルームの数だけ複製する。
シートの名称を1からルーム数までの通し番号に変更する。
アクセスした人が編集可能な設定で共有するリンクを得る。

ZOOMのブレイクアウトルーム機能をオン

事前に、ZOOMの詳細設定でブレイクアウトルーム機能をオンにしておく必要がある。ホストだけでいい。

ワークショップのオープニング

軽くアイスブレイク。
テーマと問いの共有。
ワールドカフェ方式の説明。
「書き込み用紙」へのリンクを共有。

ブレイクアウトする

ルームあたり3から4人、自動割り当て、ラウンドあたりの時間も設定。
普通ならラウンドが終わっても一人は主としてテーブルに残るのだが、自動割り当てならこれを諦める。
ルーム数が少なければ手動割り当てにして、主を決めることもできるだろう。今回はやらなかった。

ラウンド

ブレイクアウトしたら、参加者は小さなルームに分かれる。
ルームには通し番号が振られる。ルームのウィンドウのタイトルに表示されている。
参加者は「書き込み用紙」にアクセスし、ルーム番号と同じ番号のタブを開き、議論しながら書き込んでいく。

ホストは、「書き込み用紙」上の動きをリアルタイムでチェックして、動きの悪いシートを見つけたら、同じ番号のルームに移動して、テコ入れするなどする。ブレイクアウトルーム機能は、ホストからは各ルームで何が起きているかまったくわからなくなるというかなり決定的な弱点があるのだが、速記メモをGoogleスプレッドシートで作らせるという方法は、結構有効だと思う。タブを切り替えるだけで、各ルームの気配がリアルタイムでいくらかわかる。ワールドカフェでなくても使えるだろう。

時間がきたらルームを閉じる。
参加者がメインルームに戻ってくる。
再度、プレイクアウトする。

参加者は、自分のルームと同じ番号のタブを開くと、先人たちの記録が見られる。
普通のワールドカフェのようにテーブルに主がいれば、主の仕切りでこれまでの議論を簡単に共有できるが、ここではシートをみて想像する。
ラウンドに応じたカラムに書き足していく。この辺り、ブレインライティング的なところもある。

時間がきたらルームを閉じる。
以下、3まわし繰り返す。

結果の共有

議論の結果が、タブの数だけ残されたスプレッドシートができあがる。
最後のラウンドの各グループから、発表者を一人決めてもらう。
発表者は、自分の見ていたタブの中身を総括して、全体にむけて発表する。

まとめ

オンライン・ワールドカフェは、ZOOMのブレイクアウト機能と、Googleスプレッドシートを使えば、こんな感じでやれることがわかった。実空間でやるのと進行的にはほとんど変わらない。

一方で、弱点もはっきりある。

主の役をする人がいないため、ルームごとの議論が継承されず毎回リセットされてしまうので、議論がなかなか深まっていかない。

普通なら、大空間の中であれば、テープル間で気配が共有されているし、盛り上がっていないテーブルはすぐにわかるので、ファシリテータも介入しやすい。その点、ZOOMのルームは独立性がたかく、ルームからの情報が漏れてくることがない。ルームを覗くには、ホストもわざわざルームに入らなくてはならない。これが参加者には大袈裟に感じるようで、毎度驚かれてしまう。普通のように、テーブルの近くを通りながら聞き耳を立てるような方法は取れない。

何かオンラインらしい介入機能があるといい。ブレイクアウトしていても参加者とのチャットはできるが、ルームの気配がわからないままやるので、残り時間の告知ぐらいにしか使い道がない感じではある。

一層の機能強化に期待しつつ、実践を重ねたい。


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