2020/03/28 スタートアップ黎明期は採用とか評価とかいらない

CTOをしている会社の元インターンで、今は起業して頑張っている人から相談をもらっていろいろわーっと回答したので、その勢いでこっちにもちょっと書いてみる。

この手の話題にそこそこ書けるぐらいは一応スタートアップどっぷりなので、ちょっとタイトルが大仰だけど書いてもいいと思う。強い言葉をいっぱい使うけど、あくまで私見で、成功確率を上げるためにはこうなんじゃないかな、っていうやつ。元学生起業家として、起業家1周目の、強みも何にもないけどこれからスタートアップやります、みたいな人に向けて書いている。黎明期というのはプロダクトの計算式がはっきりする前。調達額でいうと億までいってない段階はすべて黎明期だと思う。

ちなみに、天才みたいな人がスタートアップやってるパターンとか、すでに強い人が理想の会社作ろうとしてるタイミングとか、そういう次元の話はしていないので例外はありまくります。

あと、スタートアップどっぷりというわりに、本業(?)は零細企業の代表なのでここで書いてることと真逆のことをやってることも多いです。

サイコーなやつを口説き落とせ

採用はこれに尽きる。サイコーじゃないやつはいらない。サイコーなやつはだいたい常に死ぬほど忙しい。だって魅力的だし優秀だから。だから何ヶ月かけてでも口説き落として、腹を括ってもらう。そんなに人数はいらない。プロダクトの仮説検証は数人で十分に可能なのは、数多くのスタートアップが証明してくれている。

自分がサイコーだと思う人が口説き落とせないときは、自分に魅力が足りないか、プロダクトの未来に魅力が足りないか、腹をくくってないと思われてるか、ビビってるかだと思うので、いっぱい頭を使って自分を磨いて何度でもアタックしよう。「お前が欲しいんだ」という熱量は意外と伝わる。

人数は絞る。正社員は原則雇わない

仮設検証が終わってプロダクトの計算式ができるまでは、口説き落としたサイコーのメンバーだけでやるのがいいと思う。特に学生ベンチャーみたいな、まだ戦闘力も全然ないんですけど、みたいなところは採用を急がない方がいい。例えば勢いが出て3,000万円とか調達できたとしても、10人いたら半年もたない。プロダクトも出来上がってないのに、黎明期のベンチャーが人を雇っても人を回すことはふつうできない。マネジメントはそれ自体が訓練の必要な仕事なので、経営やプロダクトやマーケットそのものを学びながら片手間でできるようなものでもないと思う。

正社員を雇わないというのは、そもそも正社員として優秀な人はとにかくお値段が高いから、従業員として雇うには会社の体力が足りないというのがでかい。アレはプロダクトの仮説検証が終わって調達できる会社や、そもそもお金がある会社でやる戦い方だ。

そもそも、いやー月に80万円手取りがないとやらないっす、みたいな人は、どんなに優秀でもスタートアップという仕事と合わない。手取りはいらない、生活費最低限だけでいい、ただし生株をよこせ、一緒に上場まで持っていくぞ、みたいな気合の入り方じゃないと、きついなって思う。それでも十分にきついわけで、「いやーちょっと潮目変わったんで辞めます」みたいな、そういうのはスタートアップ黎明期にはいらないと思う。

目的が明確で、どうしても必要な技術があるってパターンは、業務委託でお金を出すのが理にかなっている。そもそもそこを他人に頼らないとできないというのは、黎明期のスタートアップにおいては致命的だ。自分たちで学んで自分たちのものにするぐらいじゃないとつらい。

それでも正社員化したいことはあると思うが、そこまでいくと会社の哲学の話だと個人的には思っている。どうしてもやるなら、みなし残業と36協定は限界までやった方がいいと思う。無限に働きたい人がスタートアップに来るべきだし、そういう人のために制度を組むべきだと思うから。ただ、そうすると心や体を壊しやすい環境になるのは必然なので、裁量をめっちゃ増やすとか、運動とか休息をうまく取るのをめちゃくちゃ奨励するとか、そういうカウンターパートがないとただのブラック企業になってしまう。

でも、なんていうか、スタートアップってブラックなんですよ、儲かるかわからないものに人間突っ込んでるんだから、余程力がある人じゃなきゃブラックにならざるを得ないんで、だから正社員みたいなポジションでスタートアップさせるのってよくないと思うんですよね。役員にしろよ、裁量も成果報酬(株)も併せて渡せよ、って思う。

評価はしない

いまのプロダクト仮説がささっているか、だけみる。個人を評価してもなんにもならない時期だし、そもそも評価しなきゃいけない人材を雇っている余裕はない。

評価制度がどうこうというのはたぶん段階が違っていて、これは「従業員」としてのスタンスの人が増えるときに必要なしくみだから、そういう人を入れて回す意味がある段階だね、というときに初めて適用するのがいいんだと思う。(あらかじめ考えておけるのがいいけど、たぶんそんな余裕はないだろう)

従業員としてのスタンスを持つ人は、正当性や公平性をとても大事にするし、経営陣やリーダーが示した方針を実現しようと継続的に努力してくれる。こういう人たちが活躍するのは、「われわれは何をすべきなのか」が見えているときだ。それがハッキリしてない時期に船に乗ってもらうと、どこに向かうのかも分からないままオールを漕がせる苦行を強いることになってしまう。

だからとにかく、自走する人を集めるのが大事で、評価なんかいらない、生活費だけ役員報酬で支給します、住居は会社です、っていうのがいいんだと思う。(これは極論です)

SOとかそういう話はだいたい欺瞞、だから素直に伝えた方がいい

SOを渡すから仲間になってくれ、フルコミットになってくれ、って釣るパターンよく聞くんだけど個人的にはあまり好きじゃない。

そもそもSOは発行の仕方であまりにも意味が変わってくるし、普通の人はSOって言われてもよくわからないから期待値がずれる。300億で上場したらこのSOが3,000万円になるんだ! みたいな理屈で0.1%だけSO発行しますみたいなの、300億で上場する会社どのくらいあると思ってんだ、みたいな感じなので、期待値や現実化にかかる期間も掛け算したら世の中で発行されている大半のSOは紙屑みたいなものだと思う。しかもSOがそういう金額感で現実化するパターンは、うまくいってるケースですらかかる期間がゆうに5年とかかかる。そんなにかかるならSOいらないからもっと給料くれよみたいな話になる。経営者からすると資本政策的にも血を吐いて身を切るような0.1%なのに、従業員からすると「たった0.1%かよ」みたいな話になるわけで、だったらビジョンに共感してついてきてくれよ、みたいな話をした方がいいんじゃないかって思う。めっちゃうまくいったら、しかるべきときにちゃんと還元するから、っていうのは、うまくいきそうなときにSO発行しても遅くないわけで。変なニンジンとして使わない方がいいんじゃないかなあ。

・・・てなわけでスタートアップ黎明期の、元チームメンバーとかそういう人によく聞かれるテーマについて思うままに書いてみた。いろいろ思うところがありまくりなのであんまりまとまってないけど、今日はこんな感じで終わります。

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