見出し画像

これが若さか

以前『ランバ・ラルは35歳』という文章を書いたのですが、いまだに読者が多く、ありがたい限りです(しかしながら文頭に年齢が自分と一緒って書いてあるからもう6年も前の文章になるのよね……そりゃ年も取りますよ)。

その文章の中で「ガンダムが制作された当時、今から40年以上前では35歳とは功成り名を遂げた人間だった」と書きました。
その頃の人は35歳といえばいっぱしの大人であって、貫禄を蓄えた、社会的立場もある人間であったと。

で今は?と結論づけたわけです。

ところで、日本の政治家って年寄りが多いイメージがありません?(←強引な導入)

小泉純一郎が自民党定年73歳を掲げて幾人かの総理経験者や大物政治家を引退においやったことがあったはずですが、今やそれもすっかり空言になってしまい、政治家さんたち、老体鞭打って頑張ってくれています。ええ、皮肉ですよ。

画像1

ただ若いほうがいい、と言いつつも日本で若い人が立候補したらどうしても経験不足とか言われてしまうのが目に見えているわけで。支持を得られるかと言ったらそうもいきそうにないのが難しいところです。

それでじゃあ改めて、政治家の、特に各国のリーダーの平均年齢ってどのくらいなの?と素朴な疑問を持って少し調べてみました

(とはいえ、誕生年と就任年を単純に引き算しただけなので、就任のタイミングによって1歳ズレていることはあると思います。ご容赦)。

(最近すっかりこちらでオリジナルの文を書くヒマが無くなってしまい、忘れられてしまいそうなのでとりあえず書いとけ!と思って手慰みに書いています。ご了承くだされ)

以下は1970年から2021年まで、つまり過去50年ほどの各国のリーダーの年齢の平均と人数です(1970年に既に政権の座にあった人は、それ以前の就任時の年齢。小数点以下2桁は四捨五入にしています。あと敬称略)。

画像2

イギリス首相 53.6歳(10人)
フランス大統領 54.8歳(7人)
ドイツ首相(西ドイツ首相を含む) 53.8歳(5人)
ロシア大統領(ソ連書記長を含む) 57.4歳(7人)
中国国家主席 69.8歳(6人)
アメリカ大統領 60.4歳(10人)
日本首相  63.4歳(25人)

とまあ、こうやって並べると興味深い特徴が見て取れます。
まずイギリス・フランス・ドイツ・ロシアは平均年齢が50代で、しかも人数が日本に比べて少ないということ。

これは若い政治家が政権を獲得した後、長期政権を維持していることを示しています。1970年からの50年間を調べていますから、イギリスで平均5年、ドイツに至っては平均10年間政権を維持している。一方日本は25人ですから平均2年。8年に及んだ安部政権は世界的には平均的かもしれませんが、日本では異常だったことが分かります。25人も調べるのは大変でした(笑)。

中国国家主席に関しては日本より高齢になっているのですが、90年代以前は革命第一世代の長老がなっていたのでこの数字になっています。1988年に就任した楊尚昆はなんと81歳でした。

画像3

楊尚昆(1907~1998)1926年に共産党に入党し、長征にも参加した長老格。1907年だと日本なら明治40年生まれ。

とまあ、ここまでは過去50年で考えたのですが、冷戦後の変動が激しい時代になった後、21世紀の各国首脳の平均年齢も計算してみたので挙げておきます(2001年の段階でのリーダーです)。

イギリス首相 51.8歳(5人)
フランス大統領 53.3歳(4人)
ドイツ首相 52.5歳(2人)
ロシア大統領 45歳(2人)
中国国家主席 60.1歳(2人)
アメリカ大統領 63歳(4人)
日本首相 62.7歳(9人)

ヨーロッパ各国は軒並み若返っています。21世紀に入ってからのイギリスではブレアとキャメロンがともに44歳で就任、フランスでは現任のマクロン大統領が就任時39歳でフランス史上最年少の記録を持っています。
ロシアは現任のプーチン大統領が就任当時47歳、途中で代わったメドヴェージェフが43歳でした。

画像4

エマニュエル・マクロン(1977年~)

興味深いのがアメリカです。実はアメリカ大統領は、1993年から2001年初頭まで大統領だったクリントンは就任時47歳、次のジョージ・ブッシュが55歳、そしてその次のオバマが48歳と比較的若い年齢(ヨーロッパ的には平均)だったのですが、トランプが71歳、そして現在のバイデン大統領が78歳と大幅に年齢を加算してしまいました。

画像5

ちなみに今も若いアメリカ大統領のイメージといえばケネディですが、彼は就任時43歳。史上最年少就任はセオドア・ルーズベルトで42歳ですが、彼は前任マッキンリーが暗殺されたので繰り上がりでの就任でした。

その関連で調べたのですが、近年アメリカは政治家の高齢化がかなり進んでいるようですね……上下院議員の平均年齢が50代後半になっていて、日本の議員の平均(50代半ば)より年寄りになっている。アメリカでも若者の政治離れ・老人が長く議席に居座る現象が進んでいるそうです。

(→米政界、去らぬ長老たち 日本も参考にしたい変化の行方https://www.asahi.com/articles/ASP344J8RP31UHBI010.html)

そういえばエディー・マーフィ主演の『ホワイトハウス狂騒曲』(1992年)も「名前が似ているから」という理由だけで詐欺師が議員に当選するコメディ映画でしたね。当時からアメリカでも選挙が空虚化していたことが感じられます。

画像6

好きな映画です。当時のエディ・マーフィの映画には面白いのが多かったなあ。

さて、21世紀になってアメリカが反動的に高齢の大統領を選ぶようになっているのとはわけが違うのが日本の歴代首相です。

まず平均年齢もさることながらそもそも40代で選ばれた人間は皆無です。

明治以来の歴史を紐解いてみても、初代伊藤博文が44歳で最初の総理大臣になったのが最年少で、第2代総理大臣の黒田清隆が47歳、ずっと下って戦前の近衛文麿で45歳。40代はその3人だけです。
戦後では最年少は安部晋三が第一次政権時で52歳。あとは軒並み60代で、現在の菅首相は72歳となっています。

アメリカ大統領は、近年は高齢化しているのですが、日本はずっと高齢化したままなんですよね……。その点では最初にお話しした日本の政治家は年寄りが多いというイメージは間違っていないことが分かります。

日本の首相や政治家の年齢や各国の特徴については↓の文章が非常に網羅的に分析しているのでそちらを読んでみてください。今回は取り上げていないフィンランドやニュージーランドなど各国の若いリーダーとその誕生についても語られています。
https://note.com/pmi/n/n0b869fe97190

ただ各国の議員の年齢に関してはどこもそれなりに高齢が多く、首相や閣僚については若いと指摘している文章もありました。いわく「個人の能力で選ぶ閣僚は若くなりがち」なのだと(それ言われると派閥の人数合わせと当選回数で選ぶ日本の大臣については耳が痛いなあ)。

画像7

閣僚に限っての平均年齢は60.4歳だそうです

ただ私の興味は現代の世界ではなく(ここまで書いておきながら失礼!)歴史なので、そちらのほうを掘り下げていきたいかなと。

歴史上、一般的に盛世の時代、大平の世ならば長期安定政権のイメージがあります。フランスブルボン王朝ならばルイ14世で72年(1643~1715)、清朝中国乾隆帝が61年(1735~1796年。退位後も太上皇帝として3年)、イギリスはヴィクトリア女王が64年です(1837~1901年)。ただこれらの方々は先代が確立した支配体制を若年で受け継げたのでそのまま没年まで全盛期に君臨できたのかと思います。その点では昭和天皇も64年の在位がありますが全期にわたって太平というわけにはいきませんでしたね。

日本では他にも江戸時代中の元禄時代や文化文政時代でしょうか。特に文化文政時代は11代徳川家斉(在任1787~1837年、50年。その後は大御所として4年)は江戸文化の爛熟期として有名です。

画像8

在位より子供53人作ったことで有名な人

民主的に選ばれた政治家と血統で選ばれるこういった王様やら将軍やらを同格に扱うことに問題はあると思いますが、まあ1つの目安程度に思ってください。

政治家に話を戻すと、長期政権といえば以前は佐藤栄作(在任1964年~1972年)が真っ先に上がりましたが、この時代はまさに高度経済成長の真っただ中でしたし、いうなれば現代の盛世だったと思います。昭和元禄という言葉もありましたしね。

一方、混乱期や経済の停滞、時代の変革期にはそれなりにリーダーシップが求められ、その任に適う人材が抜擢されました。ですから各国の若いリーダーが選ばれた時期を見てみると、やはり当時の国政は危急存亡の時だったりします。
イギリス首相の最年少は僅か24歳で就任した小ピット(ウィリアム・ピット)ですが、彼の在任時代は植民地アメリカのイギリスからの独立やフランスでの革命及びナポレオン戦争など混乱に襲われている時代でした。

画像9

小ピット(ウィリアム・ピット、1759年~1806年)、24歳で首相になり、その後1801年に一度辞職するが1804年に再任、以後46歳で死去するまで在任。


一方ピットの相手ナポレオンも第一統領就任で政権の座に就いたのは30歳、皇帝になったのは35歳でした。彼もフランス革命後の混乱の中から頭角を現し、民衆の支持の下で権力を手中にしています。

そういえばヒトラーもワイマール共和国が混乱していた世界恐慌時代に、43歳で首相に指名されていましたね。

こういった混乱の時代に若くて元気のいいリーダーが選ばれる(求められる)のは当然だと思います。アメリカ史上唯一の4選を果たしていることでも有名な第二次世界大戦時のアメリカ大統領のルーズベルトは就任時51歳。彼は世界恐慌から第二次世界大戦時期まで、アメリカ国民から支持を得て長く政権を担っていました。現在でも歴代大統領をランキングすると、ワシントンとリンカーンに並んでほぼ必ずランクインするそうです。

画像10

ヤルタ会談で並んだ連合国首脳。ちなみにチャーチルは就任時66歳、スターリンは政権掌握した時46歳。チャーチルはルーズベルトより8歳年上。

ついでながら更に個人的な趣味の話をしますと、シャアは総帥の時34歳、『ダンバイン』のドレイク・ルフトは43歳!『エルガイム』のオルドナ・ポセイダル63歳(バイオリレーション使用)、『Vガンダム』フォンセ・カガチは65歳、『Gのレコンギスタ』ズッキーニ大統領は年齢不明ですが就任後20年以上経過しているそうです。ドレイク43歳かよ(笑)

画像11

個人的にはランバ・ラルの35歳よりショックだわ

果たして、これらのデータを並べてきましたが、改めて日本を顧みた時に、コロナの蔓延している今は明らかな非常事態であり(実際、非常事態宣言も出てますし。何度も)、強いリーダーシップが求められているのではないかな、と思うのですがいかがでしょうか(これ以上は書きませんけど)。

ついでながら、日本の歴代総理大臣の平均就任年齢は63歳前後になってますので本文を執筆している現段階ですと岸田文雄64歳、野田聖子60歳、高市早苗60歳で、近々予定されている自民党総裁選挙に出馬が予想される面々、誰がやってもほぼ平均に入る感じになります。あとは河野太郎58歳、石破茂64歳、加藤勝信65歳、ぐんと下って小泉進次郎40歳というところです。
そして安倍晋三67歳……実はまだまだいける年齢なのよね。苦笑。

画像12


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?