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ノンクリエイティブデザイナー

前回の記事で私がデザイナーになるまでのお話しをさせていただきましたが、その時の転職活動についても少し触れていければと思います。
ただ残念ながら「未経験・ゼロスキル」というかなりイレギュラーなので、本当にちゃんとデザインの勉強をして、転職を考えている方への参考にはならない部分があることを先にお詫びさせてください。。

未経験・ゼロスキルマンが採用されるまで

さて、「未経験・ゼロスキル」と言ったものの、仮にもデザイナー採用でしたので、面接の際に簡単なポートフォリオは求められました。
私は夜間学校で作成したCADで作った店舗デザインや手書きの製図、そして前職で作成したパワポで作ったマニュアルとかをクリアファイルにまとめて持っていきました。

後々調べてみたらポートフォリオって、デザイン版履歴書みたいなもので、もっとこう自分の経験値やスキルが伝わるように作成したものみたいです。
(デザイン系の転職を考えている方や経験した方は多分常識レベルなんだと思います…)

当時は転職をすると学校にも伝えていなかったので、ポートフォリオのサポートを受けていなかったのが、この大きな原因です。
だから本当に採用となった時は、自分でも驚きました。

入社当初はDTP (紙)のデザイナーとしての採用だったので、もちろんそんなの知識ほぼゼロな状態でした。
ここまでが未経験・ゼロスキルデザイナーの成り立ちです。

そもそもこんな未経験・ゼロスキルで採用されるなんて、どんな会社か気になりますよね。

語弊を恐れずに言うと、うちの会社は業界の性質もあって、世の中的にブラックと分類されるだろうな…と感じる会社でした。
離職率も高く、中堅もおらず、1番驚きだったのがデザイナーとして1年半が経ったタイミングでチームのリーダーに抜擢されたことです。
自分自身スキルもデザインを見る目もまだまだと痛感しているタイミング、そして中堅社員からも心配の声があがる中で、新入社員と入ったばかりの中途社員と一緒に、もはや私が支えられながら働いたのは、いい経験だったなと思います。

未熟デザイナーの生きる道

入社してからの苦労はまた改めて触れますが、デザイナーとして1年目の時、上司の打合せに同行する機会がありました。
その案件はとあるセールの広告だったのですが、スケジュールがかなり押していて、もう今日にでも原稿が出稿されないと印刷も間に合わないという状況でした。
お客さまと打合せが始まって30分、新人でも感じる「あれ?話進んでなくない?」状態。お客さまはお客さまで「ああしたい、こういうイメージ」とすっごいフワッとしたイメージ。
新人ながらに「ああ、これじゃ進めたくても進められないんだな」と思いましたが、「なんでこっちから提案しないんだろう」と同時に疑問が湧き上がりました。
結局最初の2時間はお客さまのイメージや雰囲気が全く固まっていないということが掴めてきたところ(笑)で話が終わり、お客さまの都合で30分ほど休憩が取られました。
上司にここぞとばかりに「なんで提案しないんですか?」と尋ねたところ、意外な答えが返ってきてこの時の一言が、ノンクリエイティブの原点になっています。

「提案してもいいんだけど、提案通りに出稿されないだろうし、結局自分たちでいい感じに仕上げても納得してもらえなければやり直しになってしまう。時間があればその方法はいいけど、時間がないこのタイミングなら、とにかく聞くに徹して、このセールで何がしたいのかをちゃんと引き出してあげることの方が大事」

当時の上司のありがたいお言葉より

「デザイナー」
"デザインに関して"はお客さまより上
お客さまが悩んでいるならしっかりリードしてあげなくてはいけない

え!?違うの!?
ってこの時衝撃を受けたのを今でも覚えています。
お客さまが形で悩んでいるんだから、形を提案してあげないと決まらないじゃん!という考えが、この時は最適解じゃなかったんですね。

休憩後気持ちが切り替わったのか、お客さまはリーダーや管理職陣を呼び出し、各々の考えをまとめ、時間がないから今回はできるこの範囲で進めようと、前半の話が嘘だったように着地することができました。

後々自分もそのお客さまとやりとりをする機会があったのですが、その方は自分で決めたという感覚がないと、納得するのに時間がかかるタイプで、今回その方の声を引き出せたことで、最終的に最高にカッコいいものが出来上がり、その後もその企画が毎年続いていくことになりました。

新しいスキルが少しずつ身につき、やりがいを感じる一方で、なかなか根本的な成長を感じられない日々が続き、デザインよく分からないなあ…どうしたらセンスって身につくんだろう…と、勝手にデザイン向いてない認定をしていましたが、「相手の意見を引き出す」ことの大切さを知ってから、おお!これだ!これを伸ばそう!と自分に少し光が見えました。

たまたま私の会社では、もともと営業がいて、お客さまと直接やりとりすることを望まないインドア派デザイナーが多かったこともあり、「お客さまとのコミュニケーション」や「お客さまの声を聴く」ことを意識するようになってから他の人と差別化ができ、自分の中で少しデザインの成長を感じることができました。

ノンクリエイティブデザイナーって?

さて話はタイトルのテーマに戻して、私は企業勤めなので、完全にゼロから企画を考えることは滅多にないのですが、デザイナーをやっていると、自分の制作物が果たして正解なのか不正解なのか「誰か決めて!」と思うことがあります。

デザインって点数化しづらいんです。

私はそんな時心の中で、制作物に対しての保険(言ってしまえば”言い訳”)をかけがちなんですが、これはデザイナーとして最大の恥ずべきことで、でも同時に最大のあるあるなんじゃないかなと思っています。
自分なりの納得点というか、お客さまのことを思って最大限の力を発揮して作ったものなんだから自信を持って出せばいいはずなのに、どうしても"絶対いい!"って言い切れないモヤモヤした自分がいる…みたいな感覚です。

結局そのモヤモヤの正体がよく分からない状態で、自分の納得点を出してもそれが100点に近くなることはないな…と。
でもお客さまに提出する以上、自分も自信を持って制作物をお届けしたい!その自信の線引きをするために6年経った今導き出した最適解が、

クライアントのゴールと想いを最大限共有すること

です。
簡単に言うと、相手が何をしたいのか、これで何を目指すのか、私はめちゃくちゃ聞いて調べます。笑
私1人でゼロから考えてもバチッといいものを表現できる自信がない。
だからデザインをする時に、お客さまからできるだけ吸い取れるだけヒントを得ます。

基本中の基本ではあるんですが、案件が多く、スケジュールにも追われがちだと、つい”こなす”方に重きが置かれてしまって、忘れがちな大切なことだと思っています。

こんなの私より経験値のあるデザイナーさんは息をするようにしているんだと思います。
だからあえて言いたいのが、「私はお客さまから話を聞かないとデザインができません」(多少盛りました。すみません。)
その皮肉を込めての「ノンクリエイティブ」です。

私は手と頭より先に口を動かすって感じです。笑

自分よりいいデザインをあげる人は世の中にいっぱいいると思います。
実際自分が見本にしているデザインは誰かが作ったデザインで、見本にしたいものの数だけ、自分より上がいると思うと、自分なんて下の下かなと思うこともあります。

でもなんだかんだ私はこの仕事がすごく好きです。
お客さまの想いをお客さまの表現力を超えて形にできるので、いいデザインがあげられた時は本当に喜んでいただけるし、やりがいがあります。
最近はコロナ禍もあって、お客さまと対面で直接やりとりできるチャンスは減りましたが、もう少し私はノンクリエイティブとして、できるだけお客さまの声を聞いてデザイン制作をしていきたいなと思っています。




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