【ネタバレあり ライブ感想文】羊文学「Tour 2023 "if i were an angel,"」@Zepp Sapporo 2023.9.8(金)
こんばんは。シリアスファイターです。
今回は羊文学の全国ライブツアー、札幌公演のライブ感想文です。
例によって継続中のツアーですが、以下は一部分の演出及び大部分の演奏曲に触れた感想文のため、今後ツアーに参戦される方は以下、閲覧注意です。
ちなみに今回は、気持ちよく音に酔いすぎてセトリに全く自信がないため掲載していません。
以下の文章は、私の印象に残った事項だけ、ほぼ時系列順に整理しているつもりですが、それすらも一部違うと思います。
一個人の感想文なので、そこは読み手の皆様の深い愛情及びご愛嬌でお願いいたします🙏
それでは早速。
羊文学との出会い…というより、塩塚モエカさんとの出会いは他でもないアジカンのこの曲↓
どことなく儚いのに、優しげで暖かい空気を纏った塩塚さんの声が耳から離れなくなった私は、そのまま羊文学の世界にご招待。
作品を経るにつれて、塩塚さんの声を載せて鳴らされるバンドサウンドは勢いと力強さ、開放感を増しているにも関わらず、1人の聞き手の側にそっと寄り添うようなお守りみたいな優しさは、変わることなくそこにあります。
とにかくライブが轟音らしいという噂だけは聞いていたものの中々見る機会は訪れない中、今年のジョインアライブでとうとう遭遇した3人の音楽は噂を遥かに超える轟音で、私の心を真っ二つに切り裂いてたくさんの光を注いでくれるような暖かいものでした。
そんな3人の音に、ワンマンで触れる機会がやってきました。
今日は屋内。通い慣れたZepp Sapporo。
どう印象が変わるのか楽しみにしながら、ゆったりとした気持ちで、仕事で疲れ切った金曜夜にライブハウスへ。
開場中の場内は撮影禁止。
白い布で覆われて全貌が見えないステージは、個人的に昨年のCDJでのAdoさんを彷彿とさせますが、BGMとして流れている音楽の空気と相まって心地良く揺れているように(錯覚上)見える布を見ていると何だか眠くなりs....、と思っていたら、途端に全ての楽器の音が爆発し始め、ブルッ!と目を覚まします。(まだ開演30分前の出来事。)
なんてコントみたいなやり取りを自己完結で繰り広げたりしているうちに、ほぼ定刻通り暗転。
ほどなくして真っ暗な場内に、フクダさんの力強いバスドラとシンバルが鳴り響きます。
始まりと終わりの一曲目は「エンディング」。
ステージを覆うスクリーンに、何色もの淡い色が混ざり合うような、溶け合うような映像が流れる中、囁くような歌声と重苦しいずっしりとした演奏が広がるライブハウス。
これからライブが始まるという期待感は一切置き去りに、陰鬱な雰囲気を孕んだこの曲が進むに連れて、スクリーンに映し出される色彩の中に、人の顔のような形が現れては消え、現れては消えていきます…その表情は歪んで、何だか苦しそう…。
「全てが終わるんだ…。
でも、そんな陰鬱な今など早く終わってしまえ…!」
終盤に向けて広がるアンサンブルと、祈りを届けるような塩塚さんの透き通るような裏声に、私も心の中でギュッと握り拳をつくります。
実際にも握っていたかも。
そのまま2曲目が始まると、スクリーンがするすると開いていき、メンバー3人の姿が顕になり、歓声が…!
3人の登場に対する歓声でもありますが、個人的には2曲目にして早速の新曲、「more than words」に対する(心の)歓声でもありました…!
「ようこそ。」
1番終わりで微笑みながら塩塚さんが一言発すると、自然と拍手が起こります。
羊文学と言えば想像力を掻き立てる言葉(歌詞)も魅力の一つですが、言葉じゃ伝わり切らない音楽と、それでも言葉を紡ごうとする人をそっと後押しするようなこの曲。
終盤、淡々と刻むベースとドラムに乗って、ギターの音が先頭に立って空間をぐわあああっと押し広げていく無敵感…!
現実は怖いことも沢山あるけど、この音楽に触れていた瞬間は、怖いことがなくなるわけじゃないけど、怖くないと言い聞かせてでも進み続けたい、現実に備える力で身体中が満たされるような感覚です。
3曲目終わり、塩塚さんが左足でリズムを刻みながら歌い出す「FOOL」は、真っ赤な照明の中、ジョインアライブで聞いた時と同様、鋭く攻撃的な印象。
河西さんとフクダさんのリズム隊が力強い基盤を築き上げる中、塩塚さんのボーカルは怒りや、やるせなさの強度を増します。
日頃抱えきれない気持ちを、この音に全て載せて解き放ってしまいたくなるのは必然でした。
「ようこそ、2回目のZepp Sapporoです。」
お客さんからの「ただいま!」の声に、「ありがと〜。」と微笑み混じりで応える河西さんと塩塚さん。
「この前(昨年のアルバムツアー)はコロナ禍で席ありでしたが、今日は立ってるみなさんの顔がよく見えます笑
(羊文学のライブが)初めての人も、何でもしていいってわけじゃないけど、私たちは大体のことは大丈夫なので、自由に楽しんでいってください。」
ソールドアウトとはいかなかったものの、2階席から見る限りでは後ろの方まで埋まっているように見えるスタンディングエリアと2階席から、暖かい拍手と歓声が送られます。
「アルバムを…録り終えてて、いつ出るか分からないんですけど笑
その中から新曲をやります。
「honestly?」って曲と、「FLOWER?」って曲です。」
…おお!
ここでまさかの未発表曲、しかも2曲披露…!
嬉しい展開にお客さんの拍手と私の鼓動が嬉々として高まります…!
新曲1号「honestly?」では、真っ直ぐな姿勢で高速ハイハットを寸分の狂いなく叩くフクダさんがまるでロボットに見えなくもありませんでしたが、産み出される音は、確かに人力で産み出された熱のこもったもの。
そんなドラムがバンドのグルーヴをグイグイと引っ張るのが印象的な曲。
前曲の余韻そのままに、暖かい響きの塩塚さんのギターと歌から、どんどん体温が上昇するようにバンドサウンドがゆっくりと重なる、新曲2号「FLOWER?」も良曲で、どちらもオルタナティブで人力主体の羊文学のロックサウンド…!
とても好き…!!
(ここまででも既に曲順が怪しいですが、以下、印象に残った事項の羅列を続けます。)
まず、個人的にいつかライブで聞きたいと思っていた「砂漠のきみへ」。
イントロのセッションが追加されたライブアレンジ。
ゆらゆらと揺れるギターを筆頭に、霧雨みたいにじっくりと潤いを与える音像に会場が満たされていきます。
最後のフレーズに辿り着く頃には、静かな海にひとりぼっちにされたような瑞々しさ。
自由でちょっと寂しいけど、不思議な清々しさすら覚える演奏でした…!
基本的にMC少なめで一方的に見えるライブでも、タイトルには触れていなかった(はずの)未発表の新曲3号からの「天国」では、
のフレーズに合わせて客席に向かって手を振る塩塚さんと河西さんに、「元気だよ!」と言わんばかりに手を振り返すお客さんというコミュニケーションが成立しているのがとっても微笑ましい笑
間奏部、ジャッ!…ジャッ!…と音を合わせながら、その都度身体の動きまで一時停止する河西塩塚ペアがこれまた微笑ましく笑、不思議と緊張感が抜けなかったライブの中で、肩の力を抜ける貴重な時間でした。
昨年の札幌でのライブ時は、ライブ当日の4〜5日前に札幌入りし、芸術の森スタジオでレコーディング?を行っていたと語る塩塚さん。
さきほどの新曲3号(これは私が新曲を区別するため勝手に名付けているだけです)の、原型の半分しかできていない状態でスタジオ入りしたものの、インスピレーションが湧き一気にでき上がったとのこと…!(歌詞は最近書いたらしいです)
他にも「FOOL」のデモ音源もそこで作ったというエピソードも飛び出し、北海道ゆかりのエピソードに自然と会場の空気がホーム感に包まれます。
「hopi」ではステージ後方に再び、冒頭と同様の映像が現れます。
先ほどよりも人(というか天使かな?)の姿がくっきりと見える中、神聖な轟音にただただ浸ります…。
心なしか、先ほどよりも柔らかい表情も見えるような気がする天使は、何を思っているのでしょう…?
映像は再び消え、イントロから拍手が起こった「マヨイガ」。
「みんなありがとう。」
1番終わりの塩塚さんの言葉然り、
原曲以上に力強さを増す塩塚さんの声然り、じんわりと広がる轟音の中に込められた、人を想う意志はあまりにも切実すぎて、救われすぎました。
この日の個人的ハイライトは「祈り」。
今、このロックバンドに身を委ねているうちは、日常で発露できない想いや気持ちに面と向かって、素直になっていいんだと側で語りかけてくれているような歌と演奏。
アウトロ部、最後の爆音がフロアに叩きつけられる度に、自分の全てを投げ出すことなく、思いの全てをありったけ込めてぶつけるんだ…やってやれ…やってやるんだ…!と、何度も心の拳を握って、最後には掲げました…!
「(フクダさん、河西さんの)2人は天使かもしれないけど、私って悪魔だと思うんです。
そんな私がもし天使に見えるなら…なんて。
ここからはあっという間です。
最後まで楽しんでいってください。」
一曲一曲の重厚感が凄まじすぎて、全てを飲み込めないうちに曲を連打していく様はまさしく悪魔のようだと思いました笑が、そんな柔らかいトーンで優しく語りかける塩塚さんは天使…?いや、小悪魔…?
会場中から「かわいい…」という声がMC中に随所から漏れ出していたことや、曲中の随所に溢れる優しい言葉使いからも、本人の申告以上に天使の側面があることは明らかでしたが、ここまでのライブで、もうただの天使とは言えないこともハッキリしていました。
明確な意志を持った轟音で、鋭く攻撃を仕掛け続ける悪魔的な側面と、それでも「聞き手のあなたは自分らしくやってほしい」という想いが滲み出て、優しさが溢れる天使的な側面、どちらもあっての羊文学なのかなと…!
ここから一気にギアを上げる!という宣誓のような「パーティーはすぐそこ」を皮切りに、定番の曲を畳み掛ける終盤戦。
曲終わりからシームレスにフクダさんのドラムフレーズが導いた「永遠のブルー」は、イントロから文字通りの真っ青な照明と、会場の大きな歓声に包まれます。
軽快なアルペジオフレーズが心地良い、ライブアレンジイントロの「OOPARTS」。
摩訶不思議な宇宙に漂うような音像に浸りながら、ジョインアライブでは光が漏れ出すような感覚を覚えた間奏部は、ただただ、鋭い音の塊を床に叩きつけるようなヘヴィで重厚な印象です…!
密閉されたライブハウスの空気感がそう思わせたのでしょうか?
ドシャ!メシャ!ドシャ!メシャ!と体格のいいお相撲さんが何度もシコを踏むような重量感にワクワクします。
「はあ…やっぱり凄いなあ…。」
なんて油断していた束の間。
そのまま最後まで駆け抜け、曲が終わったと思いきや…なんとこの間奏の爆発をおかわりで、アレンジを付けながら再開させるという剛腕ぶりに会場も思わずどよめきます…!
上半身を上下に振りながら音を掻き鳴らす塩塚さん!
この展開は………さすがにワクワクワクワクしました…!!!
「後2曲です!
ありがとうございました!」
盛り上がりが最高潮に達する中、これ以上なく全ての音がゆらゆらと輝いて見えた「光るとき」。
言葉を、メロディを、自分にとっての光になることを一音一音、一言一句取りこぼさないように集中して心で受け止める時間は、とてもかけがえのないものでした。
普段見ているライブや、聞いている音楽でも心がけていることですが、そのことがいつも以上に実感を伴っていたのは、紛れもなくこのライブに込められた音と意志の強さを感じたからだと思います。
そう信じたくて仕方ない時間…!
このまま最後は「夜を越えて」あたりかな…なんて思っていたら、再び後方のスクリーンに映し出される映像。
開きながらも尖り続けるロックバンドが最後に鳴らしたのは「ghost」。
ヘヴィな曲進行は冒頭の「エンディング」にも通じるものがあり、輪郭があった天使らしき人の形は、徐々に輪郭を失い、最初の淡い色彩へ戻っていきます。
目の前にいる人が、天使でも、悪魔でも、最早目の前にいなくても、自分の信じたいものを信じ続けられるのかな…。
…誰が何と言おうと、自分だけは信じ続けなきゃいけないんじゃないかな………!
そう思うには説得力のありすぎるグルーヴは一曲目でただただ重苦しく辛く感じたものに加えて、そんな重さに負けない太く硬い意志を宿しているように感じました。
3人は静かに退場し、本編終了。
鳴り止まぬ拍手に応え、アンコールに登場した直後、塩塚さんがギターをポロンと弾くなり、曲名をポロっと口にするお客さんが。
「何で分かるの?笑」
これは私も思ったのですが、まさかの次にやる曲、大当たり笑
その方が聞きたかった曲を言っただけという可能性もありますが、偶然のフィーリングの一致に会場から惜しみない拍手が起こります。
先ほどの「ghost」終わり、実は塩塚さんは履ける方向を間違えてしまい、慌てて足早に逆方向に戻るという一幕があり、「かっこつけて出ていこうとしたらこんなことに…」と、はにかみながらも残念そうに語ります。
そんな様すら、3人のほんわかとした空気から、ただただ会場を和ませてしまいます(和)
とここで、「皆さんに助けてもらう時がきました…!」と、セイコーマート大好き河西さんによる、ツアー恒例の物販紹介のコーナーへ。
北海道に来てから、白いタクシーをいっぱい見たという理由で北海道の人は白が好きなんだという思いを深めたらしい河西さんは、白いグッズをこれでもかと道民ファンにオススメします笑
「他県と比べるものじゃないけど少ねえな笑」と、会場にいたファンクラブ会員の少なさを嘆きながら、どうせ売れないからと途中からファンクラブ限定グッズの紹介が投げやりになったり笑、ご当地で絵柄が違うステッカーセット(北海道はラベンダー色で、雪に埋もれた羊のイメージ?)について、「ジンギスカンにすれば良かったかな?笑」というまさかのグロデスクなMCでこの日1番の笑いをとったりと、ここばかりは純度100%の悪魔だった塩塚さん笑
それまで直立不動で様子を見守っていたフクダさんは、渡されたTシャツをよく見えるように広げて無言で掲げ続けたり笑、物販のトートバックやポーチに何を入れるのか塩塚さんに尋ねられると、
「カルピス。」
「グミ。」
と答え、北海道で好きな食べ物は
「サーモン。」
と、何とも可愛らしい回答3連発…そして口を開くフクダさんを生で拝めた…笑
「今、どういうバンドに映ってるんだろう?笑
こういうバンドでーす笑
これからもよろしく笑」
この緩さをここまで存分に堪能できたのはまさしくワンマンならではだったのではないでしょうか…!笑笑
そんなMCの効果もあってか(?)、ここからのアンコール3曲は解放されたように、客席の緊張も…というか、私の緊張が完全に解けきっていました。
先ほどお客さんの予言が的中した「1999」の、教会の鐘のような優しいギターが降り注ぎます。
寒くて仕方ないこれからの北海道を彷彿とさせながら、ただただオレンジの照明が美しく見えて仕方ないほど、3人から出てくる音は物悲しいのに綺麗で仕方なくて、うっとりと聞き惚れてしまいます。…うん、仕方ない。
この日1番、サビでお客さんの手が上がっているように見えた「あいまいでいいよ」。
河西さんがステージ前方に出て、朗らかに小気味良くベースを弾く様からも、解放感に満ち満ちていたZepp Sapporo。
垢抜けてカラッとした空気を纏った音に、この瞬間だけは深く考えずに身も心も委ねてみると、驚くほど心がフワフワと軽くなっていきました…心地良い…!
「ありがとうございましたー!」
最後の曲は今度こそ、「夜を越えて」。
このライブが終わればまた日常が始まりますが、冒頭の「more than words」の時に感じていたような怖さは、消えはしないものの、それ以上のワクワクやドキドキに塗り変わろうもしているような気がしました。
このライブを見た夜を越えて、再び日常に飛び込むように、最後は塩塚さん、河西さんがステージ両袖から中央に駆け寄り、大ジャンプでフィニッシュ!
最後は満面の笑みで手を振る塩塚さん、大きくお辞儀をして去る河西さんの表情も綻んでいて、フクダさんはいつまでも淡々と冷静でした。
選曲然り、演奏然り、歌然り、終始鋭く尖って力強いバンドサウンドは時に悪魔みたいでしたが、MCはどこまでもほんわかと緩く天使のよう。
それでもガツンと轟音に勇気付けられたこの日は、「どっちにも見える」ことがこれ以上ない正解でした…!
もう録り終えてるらしいアルバムが聞ける日まで、またライブで会える日まで、その優しく鋭い轟音にまたお世話になります。
今回は以上です。
最後まで読んでいただいたそこのあなた、本当にありがとうございました。
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