MRIと私: せめて犬並みに

今日は早起きしてMRI。

寄る年波には勝てぬ、というのか体のあちこちが痛むようになってきました。普通の人ならただの四十肩や五十肩で終わる話が、一度がんをやると「骨転移かもしれないからMRIを」と大げさなことになってしまいます。私は頚椎に問題がありMRIを撮ったところ「がんの転移が疑われる白い点」がいくつか見つかり経過観察中です。全身のPETスキャンではがんが見つからなかったので、数か月おきにMRIを撮ってこの怪しい白い点が大きくなったりしないかチェックしています。

今日で頚椎MRIは5回目です。正直なところ私はこの頚椎MRIが苦手でしょうがありません。MRIの鉄則は「動いちゃならねえ」。過去に手首、足首、肩のMRIの経験もあり(満身創痍やね)、筒の中で少々の時間動かずにいることに問題はありませんでした。首のMRIも同様、と軽く考えて臨んだところ勝手が違いました。なぜならば。頚椎の場合は「飲み込んじゃならねぇ」のです。飲み込むなと言われたら飲み込まなきゃいいんですが。普段そんな頻繁にゴクゴク唾液を飲み込んでるとも思わないのですが。なぜだか私は頭と首を固定されてMRIの筒に上半身吸い込まれた状態で数分間飲み込んじゃダメと言われると、途端に気持ちがそのことに集中して気になって仕方なくなり、じきに口の中が唾液でいっぱいになり挙げ句呼吸のタイミングまで分からなくなり咳き込みそうになって、もう限界!ごめん、ゴクリ!とやってしまうのです。

どうも担当の技師さんとの相性もあるようです。1回目と2回目は何ともなかったのに3回目(去年5月)の検査ではとても嫌な思いをしました。この時は男性技師。MRIの筒の中の私にマイクを通じて「次は2分間の撮影」「次は3分半」と、耳栓越しに聞こえるように教えてくれます。(カチッ、ダダダダダ…と音が始まる前にゴクっと飲み込みます。)こちらの返事も向こう側に聞こえていることが確認でき、安心だわこの人、と思った矢先。
"Last one had movements."
ひえっ、やり直し?そして次の6分の撮影もやり直し。やがて男性技師の苛ついた声が。
"Are you okay? You're moving. What's going on?"
"Sorry! I didn't know I was moving..."
いやいや、こんな固定された状態でどうやったら動けるっつうんじゃい…納得できないまま怒られてました。
"Your chin was moving. Try not to move, okay?"
なんで英語ってこんなに怖く聞こえるんでしょう。コロナ禍マスクして臨んだのも失敗でした。鼻息荒くなってマスクが鼻にくっついて苦しさMAXです。パニックの波がどーん!涙がつー。

この経験から、4回目そして今日の5回目、それぞれ担当の技師さんは違う人でしたが、検査が始まる前にお願いをしました。
「私、努力はするんですが動くらしいんです。飲み込むタイミングを教えてくれますか?」
今日の女性技師さんは特に指示の声がはっきりクリアで分かりやすく、しかも合間に励ましほめてもらえ、ああ、このやり方でいいんだな、と安心感がありました。何度もゴクリとやりそうになって苦労はしましたが。検査中、マスクは許可を得て外していました。

MRIのたびごと、今日の検査中にも考えていたのは、以前読んだこの本に出てきたゴールデンリトリーバー。

How Dogs Love Us(Gregory Berns著)

犬好きの神経科学者が、飼ってるワンコの考えてることを知りたい一心で大学の研究チーム巻き込んで犬の脳のMRIを撮ることに挑戦そして成功するお話。
生きてる犬の覚醒時の脳MRIを撮るのは過去に例がなかったそうです。検査中はもちろん動いたらダメ。動いたら写真はブレブレで撮り直しです(ああ耳が痛い)。著者によると、犬は人間の行動だけではなく人間が何を考えているかにも注意しているといいます。人間がこう考えているようだ、と想像して犬は自分の行動を変えるというのです。犬が人間の「言うことを聞かない」のは人間が犬に理解できるようにクリアにものを言ってないだけだと。矛盾のないよう明快に伝えることが必要。これは人間同士でも同じですね。
ごほうびもらいながら、ご主人さまのために何度も何度もMRI撮影実験を頑張ったワンコが愛おしい。私は犬を飼ったことがないのですが、犬と人間との関係を犬の視点から理解しようとする試みが実に興味深かったです。愛犬家にはたまらない一冊ではないでしょうか。
それから頚椎MRIで何度もやり直し言われて落ち込んでる自分を励ましたい人もぜひ。

日本語訳も出てました。(浅井みどり訳)


著者グレゴリー・バーンズのインタビュー記事
(ナショナルジオグラフィック)


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