森田真生

独立研究者。『数学する身体』(新潮社)、『アリになった数学者』(福音館書店)、『数学の…

森田真生

独立研究者。『数学する身体』(新潮社)、『アリになった数学者』(福音館書店)、『数学の贈り物』(ミシマ社)。

記事一覧

『僕たちはどう生きるか めぐる季節と「再生の物語」』(集英社文庫) 8月21日発売です!

 2021年の秋に集英社から単行本『僕たちはどう生きるか』が発売され、以来、本書を手に取ってくださったたくさんの読者のみなさんとの嬉しい出会いが続いています。  本…

森田真生
3週間前
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「僕たちはどう学ぶか」(10月31日) 開催に寄せて

近代の学校制度が、初期の縫製工場とほぼ同じ時期に発明されたことを思い出してほしい。学校も工場も、一つの屋根のもとに人員を集結させた。どちらも管理と評価を容易にす…

森田真生
3年前
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『僕たちはどう生きるか 言葉と思考のエコロジカルな転回』  刊行に寄せて

 先日『ネオウイルス学』という本を読んだ。ウイルスを単に病気をもたらす「病原体」として見るのではなく、ウイルスの機能や多様性、ウイルスが生命活動や生態系におよぼ…

森田真生
3年前
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「世界の終わり」のあと

(以下は1月7日中日新聞朝刊、1月12日東京新聞朝刊に掲載された原稿の再録です。)  先日、庭の椿の最初の花が咲いて、真っ先にこれに気づいた長男(三歳)が「ねぇ、見…

森田真生
4年前
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『僕たちはどう生きるか めぐる季節と「再生の物語」』(集英社文庫) 8月21日発売です!

『僕たちはどう生きるか めぐる季節と「再生の物語」』(集英社文庫) 8月21日発売です!

 2021年の秋に集英社から単行本『僕たちはどう生きるか』が発売され、以来、本書を手に取ってくださったたくさんの読者のみなさんとの嬉しい出会いが続いています。
 本書は2020年の春から翌2021年の夏にかけて、新型コロナウイルスが世界的に流行し、出口の見えない日々が続くなかでリアルタイムに「どう生きるか」を問い続けながら書いた「ドキュメントエッセイ」です。

 いまふりかえってみると、ここに記録

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「僕たちはどう学ぶか」(10月31日) 開催に寄せて

「僕たちはどう学ぶか」(10月31日) 開催に寄せて

近代の学校制度が、初期の縫製工場とほぼ同じ時期に発明されたことを思い出してほしい。学校も工場も、一つの屋根のもとに人員を集結させた。どちらも管理と評価を容易にするために、時間についての厳しい規律と細分化されたタスクを生み出した。両者はいずれも、信頼できる標準化された生産物を作り出すことを目指していたのだ。
――James Scott "Two Cheers for Anarachism"

 現

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『僕たちはどう生きるか 言葉と思考のエコロジカルな転回』  刊行に寄せて

『僕たちはどう生きるか 言葉と思考のエコロジカルな転回』  刊行に寄せて

 先日『ネオウイルス学』という本を読んだ。ウイルスを単に病気をもたらす「病原体」として見るのではなく、ウイルスの機能や多様性、ウイルスが生命活動や生態系におよぼす影響を追究する多様なアプローチが面白く、楽しくページをめくっていった。

 個人的に特に印象に残ったのは、電子顕微鏡を使ってウイルスの微細な構造と働きに迫る研究を紹介する章だった。

 電子顕微鏡でウイルスや感染細胞を観察している時、自分

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「世界の終わり」のあと

「世界の終わり」のあと

(以下は1月7日中日新聞朝刊、1月12日東京新聞朝刊に掲載された原稿の再録です。)

 先日、庭の椿の最初の花が咲いて、真っ先にこれに気づいた長男(三歳)が「ねぇ、見て!咲いたよ!」と、窓の外を指差しながら、目を丸くして叫んだ。

 花の姿に心躍らせ、温かな日差しにホッとし、雨音の静かさに耳を澄まし、石を握りしめながら物思いに耽る。人が生きるという営みは、いつも人間でないものたちに深く支えられてい

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