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『僕たちはどう生きるか めぐる季節と「再生の物語」』(集英社文庫) 8月21日発売です!

 2021年の秋に集英社から単行本『僕たちはどう生きるか』が発売され、以来、本書を手に取ってくださったたくさんの読者のみなさんとの嬉しい出会いが続いています。
 本書は2020年の春から翌2021年の夏にかけて、新型コロナウイルスが世界的に流行し、出口の見えない日々が続くなかでリアルタイムに「どう生きるか」を問い続けながら書いた「ドキュメントエッセイ」です。

『僕たちはどう生きるか めぐる季節と「再生」の物語』(集英社文庫)

 いまふりかえってみると、ここに記録されているおよそ一年の日々は、僕自身にとっても大きな「生まれ変わり」の時期でした。夢中になって本書を執筆しながら、物事の見方、とらえかた、生き方が、じわりじわりと変化していきました。

 変化の理由はパンデミックだけではありませんでした。祖父の死や子どもの誕生など、家族をめぐる出来事もありました。また、不気味に進行する地球規模の気候変動や生態系の危機をどのようにとらえ、どう受けとめながら、どのように生きていくかという切実な問いも、「生まれ変わり」をうながすきっかけでした。

 雑誌「すばる」での連載時から単行本の出版まで、リアルタイムの思考/試行をつづったエッセイとして駆け抜けるようにして書き進めてきた本書ですが、あらためて刊行から三年の歳月を経て振り返ってみると、これがひとつの「物語」のようなものに生まれ変わりつつあるように感じています。

 答えのまったく見えない不安な日々のなか、はたして僕たちは何を考え、どのように生きていたのか。いまの子どもたちが大きくなったときに、きっといつか知りたいと思う日が来るのではないかと思います。そんな彼らに宛てて、僕たちはこう生きていた、こう考えていた、そして、「僕たちはこうして生まれ変わっていった」のだと、記録を受け渡していきたいと思います。

 もちろん物語はまだこれからです。その節目のひとつとして、2024年8月21日に、「ドキュメント・エッセイ」として生まれた『僕たちはどう生きるか』が、新たな装いとともに生まれ変わろうとしていることをとても嬉しく思っています。文庫化にあたり、単行本のときの内容に加え、今年の春に「すばる」に寄稿したエッセイ「再生する庭」と、単行本刊行時には発売前だったリチャード・パワーズの『Bewilderment(惑う星)』と対話しながら書いた「文庫版あとがき」を収録しています。また、一冊の本を読者の手元に届けてくださる本屋さんを代表して、盛岡で書店「BOOKNERD」を営む早坂大輔さんにも素敵なエッセイを寄稿してもらいました。手に取りやすい文庫として生まれ変わった本書を通して、さらに新たな出会いがあることを心から楽しみにしています。

 僕たちはどう生きるか —— この問いに正しく答えることよりも、この問いを、切実な問いとして、いつまでも抱え続けること。当惑を当惑として手放すことなく、分かち合い、記録し、伝え合っていくこと。そのようにしてしか守れないなにかがあるはずだ。それが、本書にこめられたささやかな希望である。

——森田真生『僕たちはどう生きるか めぐる季節と「再生」の物語』「文庫版あとがき」より


『僕たちはどう生きるか』(集英社文庫)の刊行を記念して各地でイベントを開催します。
 今後開催予定のイベントは以下の通りです(8月20日現在)。

8月23日(金) 「異界と場所」@盛岡
8月24日(土) 「異界と場所」@遠野
8月25日(日) 刊行記念ライブ@青山ブックセンター
9月6日(金) 刊行記念ライブ@ひばりブックス(静岡)
9月7日(土) 「この日の学校」@東京(千駄木)
9月20日(金) 刊行記念ライブ@わおん書房

 各地での新たな出会いを心から楽しみにしています!

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