森田真生

独立研究者。『数学する身体』(新潮社)、『アリになった数学者』(福音館書店)、『数学の…

森田真生

独立研究者。『数学する身体』(新潮社)、『アリになった数学者』(福音館書店)、『数学の贈り物』(ミシマ社)。

最近の記事

「僕たちはどう学ぶか」(10月31日) 開催に寄せて

近代の学校制度が、初期の縫製工場とほぼ同じ時期に発明されたことを思い出してほしい。学校も工場も、一つの屋根のもとに人員を集結させた。どちらも管理と評価を容易にするために、時間についての厳しい規律と細分化されたタスクを生み出した。両者はいずれも、信頼できる標準化された生産物を作り出すことを目指していたのだ。 ――James Scott "Two Cheers for Anarachism"  現代の日本に生まれてくると、人生の少なからぬ時間を「教室」という場所で過ごすことに

    • 『僕たちはどう生きるか 言葉と思考のエコロジカルな転回』  刊行に寄せて

       先日『ネオウイルス学』という本を読んだ。ウイルスを単に病気をもたらす「病原体」として見るのではなく、ウイルスの機能や多様性、ウイルスが生命活動や生態系におよぼす影響を追究する多様なアプローチが面白く、楽しくページをめくっていった。  個人的に特に印象に残ったのは、電子顕微鏡を使ってウイルスの微細な構造と働きに迫る研究を紹介する章だった。  電子顕微鏡でウイルスや感染細胞を観察している時、自分の体の中でもこんなことが起きているのか……と想像するのが楽しいだけで、研究をして

      • 「世界の終わり」のあと

        (以下は1月7日中日新聞朝刊、1月12日東京新聞朝刊に掲載された原稿の再録です。)  先日、庭の椿の最初の花が咲いて、真っ先にこれに気づいた長男(三歳)が「ねぇ、見て!咲いたよ!」と、窓の外を指差しながら、目を丸くして叫んだ。  花の姿に心躍らせ、温かな日差しにホッとし、雨音の静かさに耳を澄まし、石を握りしめながら物思いに耽る。人が生きるという営みは、いつも人間でないものたちに深く支えられているのだ。  自分でないものたちと分かちがたく混じり合っているからこそ、人は自分

      「僕たちはどう学ぶか」(10月31日) 開催に寄せて