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自腹文化から更新文化に1

現在、震災復興で注目されているのが、自衛官の靴です。
官品の半長靴の性能がしょぼく、足裏にダメージがいくのだそうです。
自衛官は、個々人が自腹で半長靴を買わなければ任務に支障が出るそうなんですね。

この問題の根幹は、ブラック自腹の問題です。
私はブラック自腹こそ問題視するべきと見ます。
けれども、どうやらそこまでたどり着けていない人が多いように見受けられますね。

枝葉でなく根幹を見る

官品の更新頻度を上げる。
官品の防水性能を上げる。
官品の踏み抜き防止の性能を上げる。
そのためには防衛費の増額が必要である。

全てその通りなんですが、枝葉ですよ。
根幹をこそ見るべきなのです。
自衛官がしょぼい官品の代わりに民生品を買っている現状が根幹ですよ。

官品の性能がしょぼいのは靴に限った話ではありません。
インナーの防炎性や耐久性もしょぼいのです。
靴、服、雨具、雑貨、全てしょぼい。

何故か。
日本の官品は、「安く」かつ「多く」が何よりも最優先されるからです。

最先端の軍用品

軍用品はその時々の最先端技術が用いられます。
現在の米軍の雨具はゴアテックスです。
現在の米軍の防寒着はモンスターパーカーです。

アメカジ(AMEKAJI)でミルスペックのミリタリーが好まれるのは、当時の限られた技術で最先端を追い求めた機能美の側面もあるんです。

かつて、暴風性のある機能性素材が無い時代にはレザーを使っていました。
現在は防風性の高いナイロンがあるため、軍用品にレザーは見かけません。
現在、レザーが用いられるのは、軍用品でなく、復刻のカジュアルファッションです。
カッコイイから。それだけです。

当時の機能美をそのまま再現しているのが人間の本能的にカッコイイと思えるからに過ぎません。
ミルスペック自体は、常に変化していくもので、質が良いことを意味しないのです。
現行のミルスペックなら別ですけれども。
ミルスペックの衣類は、あくまでも歴史的文脈、コンテクスト消費です。

しょぼい官品

ミルスペックは、絶えざる更新が不可避であり、かつ、不可欠であるため、アメリカはすぐに更新します。けれども自衛隊では更新が遅いのです。
自衛隊に限った話ではありません。
消防も、警察も、海保もです。
防寒や防水、踏み抜き防止など、新技術や新素材が次々と出てくるのに、中々更新しないのです。
自衛隊の半長靴よりも、作業員の作業靴のほうが性能が良いという状態です。
任務に支障が出るくらいなら、と自衛官が自腹で買うのは、似たような民生品を買うほうが性能が良いからなのです。

日米の違いはどこか

ここまで日米の官品と軍用品の違いを見ました。
官品と軍用品の違いは、名称ではありません。
自衛隊を自衛軍にして、官品を軍用品にすれば、全て解決ということには絶対になりません。

日米の違いは、更新がどれだけ大事なものであるのか、という理解、実践、蓄積、文化であろうと私は思っています。
知識は更新が大事だから大量の書籍を読む。
機械は更新が大事だから最新のものを好む。

日本の不読率が高いのは更新が嫌いだから。
日本のFAXが減らないのは更新が嫌いだから。
そして官品がしょぼいのも更新が嫌いだから。

こういう仮説を立てると合点がいきそうです。

まとめ

官品がしょぼいのは「安く」、かつ、「多く」という文化だけではなく、更新を嫌う文化も原因の一つのようですね。
安く、かつ、多く確保して、一旦確保したら中々更新しない、これが原因ではないでしょうか。
アメリカのように、頻繁に更新して、かつ、大量にデッドストックを払い下げてしまえば良い、と思います。

米軍の大量のデッドストックが何故かイギリスで流行したのがフィッシュテイルパーカーなのですが、歴史上、自衛隊の防寒着にそんなもんはありませんでした。これからも無さそうです。
踊る大捜査線の青島の上着や、相棒の亀山の上着は、両方とも米軍の防寒着なのですが、日本国外で自衛隊の防寒着が流行ることはないでしょう。

更新を嫌う文化を変えない限り。

今回を前提にして、次回は本題に入ります。
更新を嫌う文化は、それを取り繕う文化を生む。
それがブラック自腹文化です。

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