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アンチ・エイジング【エッセイ】六〇〇字

 健康法として、十年前からウォーキングを日課にしている。国は「一日一万歩」を推奨していたが、数年前、八千歩でよいとの研究成果が発表された。医学博士の青柳幸利氏が、群馬県中之条町に住む六十五歳以上の全住民五千人を対象に、十五年以上にわたって、身体活動と病気予防の関係についての調査を実施した、結果らしい。「奇跡の研究」として、世界中からも注目を浴びているようだ。
 緊急事態宣言で不要不急の外出を自粛していたときは、健康のためだけでなく気分転換にもなっていた。外を歩くことが楽しかった。
 青柳氏は言う。「高血圧や糖尿病など生活習慣病の予防、メンタルの向上、不眠の解消、骨粗しょう症の予防、認知症のリスク軽減など、さまざまな効果があります。歩き続けることで、普段は眠っている長寿遺伝子のスイッチが入ることが明らかになっています。長寿遺伝子とは、老化のスピードをコントロールする遺伝子のこと。活性化すると免疫力が上がり、心身ともに若々しくなります」と。
 今年、ついに古稀をむかえた。けれど、認めたくない。北海道にいる三十八の姪が、「『お兄ちゃん』(小さい頃から手なずけて、そう言わせている)お祝い送るので、なにがいい?」と言ってきた。だけど断った。「六十九以上は歳をとらないようにしているので」と。年寄りと思ってしまえば、そうなる。
 自然に皺が増え、シブイ顔になるのもいいというが、それはそれで素晴らしいと思う。皺伸ばしまでして、若返らせようとは思わない。だが、速度を緩めることができるなら、とは思っている。そのために、八千歩、歩く。
 とは言いながらも、「ちょっと年をとったかな」と感じさせる瞬間はある。ペットボトルのラベルを剥がそうとして難義するとか、新聞のページがなかなか捲れないとか。結局、指を舐める。最近は、エコバッグで少なくなったけど、指舐めする、おばさんのように。
 なので今日も歩く、八千。エッサホイサと。


 写真は、一一月一七日の外苑銀杏並木。青山通りまで四〇〇〇歩。ルートの一つです。

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