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怪奇【エッセイ】八〇〇字

 「異常」という言葉。「常」と「異なる」。なにが「常」か。「普通」ということ。「普通」とは、「特に変わっていないこと」「ごくありふれたものであること」「それがあたりまえであること」。頭がこんがらがってくる。
 裏返せば、「異常」とは、「変わっている」「ありふれていない」「あたりまえじゃない」ことになる。すると、特殊な才能も含まれる。
 過日、「多様性」でも触れた、川端裕人氏の『「色のふしぎ」と不思議な社会』にある。「色弱異常」で、劣等感を持つひとがいるが、ひとと違う才能を持っているとも言える、と。「異常」ではなく多様性の一部だ、と。

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 狩猟採集をしていたころ。そのチームのメンバーには、投槍名手、韋駄天、獲物を運ぶ力自慢で組む。加えて、緑の草原に隠れた獲物や、襲おうとする獣を発見できる特殊な能力を持った、「目がいい」者も重要な一員となる、と主張する。
 単に多数か少数かの、数の違いだけで、「普通」が、「異常」と逆転することもある。そんな話、60年ほど前の、この海外ドラマが、浮かんだ。
 小学高学年だったころ。海外ドラマに、『世にも不思議な物語』『ミステリーゾーン』などの、SF・怪奇ドラマがあった。遅い時間帯だったが、怖いもの見たさでよく観ていた。そのなかで、こういうストーリーがあったことを鮮明に覚えている。
 映っているのは、顔中を包帯で巻かれ手術台に乗っている人物と、台を囲む医者たちの手。そして、“その人物”の視点からの映像は、顔中が包帯に被われているので、ガーゼ越しにかすかに見える医者たちと、声だけ。ドラマの結末は、「整形すれば、正常に戻るかもしれない」と言いながら、包帯をとると、“その人物”から見えたのは、宇宙人のような顔をした医者たちの姿だったのだ。もちろん、“その人物”は、われわれと同じ地球人である。
 「普通」が、「異常」と入れ替わるシーンだ。

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