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服装【エッセイ】

 二〇年近く、「ファッション」をショルダーに冠する百貨店が、得意先だった。が、実は私は、「着たきり」系で、クローゼットの手前の数点を着まわす「雀」なのだ。
 人間と動物との決定的な違いは、服を着ているか否か(近年、服を身に着ける犬猫もいるが)、という程度にしか、服の価値を感じない。高級ブランドへの憧れはなく、ユニクロで充分なのだ(柳井さん、失礼! )。
 その百貨店では、年に何回か、“拡販”という(半強制的に)業者へ購入を促す「習わし」がある。各社員がノルマを与えられ、担当取引先に協力を求める。取引先は、担当者に貢献すべく、ブランド・スーツなどを購入する。社員も、ノルマ達成のため、身銭を切って購入する者もいる。そのせいか、ファッションの百貨店らしく、高級スーツをバシっと着こなしているひとが、多い。
 “拡販”のおかげ(?)か、多くの高級ブランドに類する服が、クローゼットに鎮座している。しかし、会社を整理し、本来の「雀」に戻った今、クローゼット奥にある服を着用する機会は、冠婚葬祭の折しか、ない。
 仕事の関係がなくなり、旧担当者と個人的に気軽に付き合うようになって、知った。  
 店では格好よく着こなす彼らだが、プライベートでは、ユニクロを愛用する、「雀の仲間」であった。 

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