雨あがりⅡ【エッセイ】六〇〇字
早大エクステンション「エッセイ教室」冬講座。四回目のお題は、「雨あがり」。2月8日の「運動会」をテーマにした「雨あがり」に続いて、二作目です。さて、どちらを教室に提出するか、迷います。(笑
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子どもの頃。小雨になり、「虹だーー!」の声で外に飛び出すと、「雨に濡れると、頭が禿る」と、親に言われた。米国やソ連が競って、大気圏で核実験を繰り返していた、時代。放射能が雨に交じっていると、噂された。
が、そんな雨が降った。広島・長崎の原爆投下後、放射性物質を含んだ黒煙が巻き上がり、空気中の水滴と混じって、重油のような、「万年筆の太さ」の雨が。「黒い雨」である。
この雨を浴び、二次被爆による健康障害に苦しみながらも、指定地域外として、「被爆者」と認定されなかった人たちが、いる。
広島では、未認定者が集団訴訟で争い、二〇二一年になってようやく、広島高裁が原告全員を被爆者と、認めた。国の線引き地域外でも「黒い雨」が降った、と。放射能による健康被害であることを立証できれば、疾病の発症がなくても救済するべきという、判断。被爆者援護行政の転換を迫る、判決となった。
判決を受け、癌など十一の疾病の有無が条件と、不完全ながらも、国は重い腰を上げた。
が、長崎でも同様の被害を受けたにもかかわらず、いまだに被爆者と、認めていない。
『黒い雨』のラストは、二次被爆者の主人公・矢須子の症状が悪化し、病院に運ばれる。実子のように可愛がってきた叔父・重松のそのシーンの台詞を借りれば、全ての被害者の上に、虹が架かることを切に祈りたい。「五彩の虹」が。
(ふろく)
そのうち 雨が降って来ました
くろい くろい雨
大きなつぶの雨
空にむかって
その雨をのもうと
口を大きくあけました
あつくて あつくて
からだ中が
火のかたまりのように
なっていたから
水が ほしかったのです
《喉が渇き黒い雨を口で受ける女性》の作者・高蔵信子氏の詩。
(おまけ)
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