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「選挙」(前篇)「あなたは幸福ですか?」【エッセイ】二四〇〇字(本文)

※画像:「東京新聞」朝刊デジタル版(3/24)ノルウェーの選挙小屋の様子。市議(右)の話を小学生たちが聞いている=ノルウェー・オスロで(by ジャーナリスト 鐙麻樹氏)

 「あなたは、幸福ですか?」「そう、幸福。よかった。私も、いちおう幸福です。国を憂えていることはたくさんあるけど・・・」「では、あなたの周りのひとたちは、幸福そうですか?」「あっそ、幸福そう? そうですか。失礼しました・・・。幸福そうでしたら、言うことありませんね・・・」

「ダーウィンが来た!」のヒゲじい

いえいえ、続けますよ。ヒゲじい。(笑
冒頭からちょっとお遊び過ぎましたが、(汗)「選挙」をテーマに、(5,000字超えるので)前・後篇の2回に分けで投稿します。

               ※
 「幸福」と「幸せ」、似た言葉ですが違いがあるようです。自分で「幸福」と感じることはできる。しかし他人に対しては、幸せそうかどうかは指摘できても幸福そうかの判断はできない、ということになるようです。


「幸福」の意味
幸福というのは、自分で何かしらの不満を感じておらず、心が満ち足りているような状況のことを指しています。心が満ち足りているかどうかは自分で判断しないといけない面も強いので、周りから見て幸福な状況かを判断することはおよそできません。つまり、幸福というのは自分で感じた場合に使える言葉ということになるのです。
「幸せ」の意味
幸せというのは、言い換えれば運が良いことになります。運が良いというのは自分で感じることもできれば、第3者が感じることもできる部分であり、幸せという判断ができるのは自分だけではなく、周囲の人間も含まれるということになります。したがって、客観的な基準で使うために、他人の幸せを指摘することができるということも言えるのです。

「違い.site」


ところが、他人の「幸福」を判断することができないにも関わらず、国連機関から毎年(2012年から)「世界幸福度報告」としてランキングが発表されています。そもそも、どのように測定しているか。かならずしも的確とは思えませんが、ひとつの目安としては参考にはなると思っています。

【2022年】最新世界幸福度ランキング(WEBメディア「ELEMINIST」から)

【2022年】最新世界幸福度ランキング TOP10

測定要因となっているのが、
「客観要因」
・「1人当たり国内総生産」
・「健康寿命」
「主観要因」
・「社会的関係性」:社会的支援の充実(社会保障制度など)
・「自己決定感」:人生の選択における自由度
・「寛容性」:他者への寛容さ(ボランティア・寄付活動など)
・「信頼感」:国への信頼度(腐敗を感じる程度)

 「客観要因」は、数値化できるのでわかりやすいですが、「主観要因」は、「主観」だけに不確実性があります。なお、「主観要因」の数値は、アメリカの調査会社ギャッラップ社の世論調査が元データになっているようです。

アメリカの調査会社ギャッラップ社が150を超える国・地域のそれぞれ数千人を対象に、考えうる最高のレベルを10、最低を0とする11段階のどのレベルにあると思うかを回答者に尋ねる世論調査を実施、数値化し、過去3年の平均値をランキング化している。この調査結果をベースに、「1人当り国内総生産(GDP)」「健康寿命」「社会的支援」「人生の選択自由度」「他者への寛容さ」「国への信頼度(腐敗を感じる程度)」の6要素を加味して順位付けしている。世界幸福度報告のランキングは、あくまで調査対象の主観的回答を数値化したもので、質問内容も慈善寄付行動を「寛容さ」の目安とするなど、欧米で一般的な価値観に基づいており、欧米諸国が上位となる傾向が強いと指摘されている。

コトバンク「世界幸福度報告」

各要因別の日本の順位(2022年 世界54位)
「1人当たり国内総生産」:28位/145国
「健康寿命」:1位/141国
「社会的関係性」:48位/146国
「自己決定感」:74位/145国
「寛容性」:127位/146国
「信頼感」:28位/140国
福井県立大学地域経済研究所のコラム

 行動経済学者の友野典男氏は、この結果は日本人の気質が反映されていると指摘する。「日本人は控えめな気質ですから、“あなたはいま幸せですか?”と聞かれても、“それなりに幸せだけど、もっと上がいるから”と考えます。他国のように、恥ずかしがらずに“イエス!”と断言できる人が少ないのです」と。確かに、“あなたはいま幸せですか?”と質問されればそうかもしれないが、もっと複合的に質問することで、その「気質」とやらは排除できるでしょう。また、その日本人気質が影響したとしても、少なくても上位になるとは思われません。

日本のランキングの推移
2012年 44位
2013年 43位
2014年 (無し)
2015年 46位
2016年 53位
2017年 51位
2018年 54位
2019年 58位
2020年 62位
2021年 56位
2022年 54位
2023年 47位。

 日本は2010年代前半は40位台をキープしていたが、後半には50位台に転落しています。低下し始めたのは、どなたかが総理になってからのように思いませんか? 政府に批判的な放送局や番組に圧力をかけ報道の自由度を押し下げたこと(いま大きな問題になっていますよね)も影響しているのかもしれません(下掲の「東洋経済オンライン」参照)。2023年に少し回復したようだが、先進国としては低いままです。この「世界幸福度報告」が、日本の幸福度を的確に表わしているとは思わないが、先進国に比べて自慢できる状態ではないということだけは言えるのではないでしょうか。

「2019年4月、国境なき記者団が世界180カ国を対象とした『世界報道自由度ランキング2019』の結果を発表しました。日本は67位と決して高くはない順位です。なぜ、こういった結果になっているのでしょうか。第2次安倍晋三内閣になってから日本の順位は最高で53位、最低で72位です。一番いいときで、2010年鳩山由紀夫内閣時の11位でした」
(中略)
2016年にアメリカ国務省が発表した人権報告書には、当時の高市早苗総務相の「政治的公平性を欠く放送局を電波停止する」という旨の発言が指摘されました。さらに、特定秘密保護法の成立が報道機関への圧力を高めたのでは、ということも記されていました。
昨今の報道番組を見ていると、どの番組も同じ情報ばかりで、番組独自の見解や専門家による辛辣なコメントも以前より少なくなっているように感じます。

「東洋経済オンライン」

 そして同サイトは、日本人の働き過ぎについても、こう分析する。幸福度上位の国では、プライベートな時間が多いのです。

日本人の有給休暇取得率は50%で、3年連続の最下位となっています。日本は海外に比べ、有給休暇を取得していないことがわかります。その理由として「上司に言いづらい」「有給を取ることに罪悪感を抱いてしまう」という人が多いという結果が出ています。このような結果から、十分に休みを取れていないことも満足度が低くなる要因と考えられます。

「CNNサイト」では、こうも指摘します。

実際、身近な例を考えてみても慈善団体への寄付やチャリティといった行為は日本においてまだまだ一般的にはなっていませんし、ジェンダーギャップ指数も高く、属性で判断されがちな日本では個々人の人生の選択の自由はなかなか難しいのかもしれません。

 一番大きく幸福度を下げる原因は、「多くの国民は『将来不安』を抱えている」ということではないかと思うのです。その不安は、特に経済的要因(「年金」や「子育て・教育費」、いまの生活費も)。そして、国への「信頼感」が低く、不安があれば貯蓄するので貯蓄率が高くなるはず。しかし、貯蓄率に影響する要因が複雑にします。つまり、「将来不安」を抱えていても、「貯蓄するだけの所得がなければ貯蓄率は下がる」「高齢化の国は、退職者が増えるために貯蓄率が下がる」「物価高で余裕がないので貯蓄率は下がる」となるためです。さらに「消費性向」も絡んでくる。一概に貯蓄率だけでは判断できないのでしょう。その実態を示すデータを探しましたが、見当たりませんでした。このことは宿題にさせてください。

 冒頭に戻ると、「あなたは、幸福ですか?」と訊かれれば、「いちおう幸福です」と答えます。いや、「幸福と思いたい」と言ったほうがいいのかもしれない。「日本は好きだけど、国を憂えていることはたくさんあるけど・・・」と付け加えて。
あなたはどうですか? 気持ち的には世界何位くらいですか? 世界1位というひともいるかもしれません。でも、あなただけが幸福ならそれで良いわけではないですよね? なんらかの事情で幸福でないないひとたちがいるなら、そのひとたちも幸福になれるように、国に対して要求したいものです。国を変えたいものです。その「共助」となるもののひとつが、「選挙」と、考えます。「隣の芝生は青く見える」で、諦めるのではなく、幸福度上位国の「青い芝生」から学びましょう。

(つづく)

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