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決め手【エッセイ】六〇〇字

 九年ほど前。取引先のK氏に、「菊地さんは、学歴主義者だよなあ」と、言われる。スタッフは一流どころが、多いというわけだ。
 確かに、名のあるところを出ている。在宅勤務者との調整役、内勤のNは、某国立大学。デザイナーは、有名美大出身や、K女学院の変わり種も。ライターのHは、某K大とか。
 ワケがある。二〇数年前、四七歳でWEBデザイン会社を興した。インターネットの、「イ」ぐらいの、時代。それなりに成功すると、自信はあったが、金はない。採用支援のための「〇〇テスト」のようなサービスを使うほどの予算はない。考えた。「少なくても難関校に受かるだけの頭はあったはず、検査なんか必要ないだろう。最後は自分の直観を信じよう」と。ただ、大企業には行けず、小さな会社の面接を受けるのだから、どこかが欠落しているかもしれないが、とも思った。
 案の定。内勤のNは、面接では、ハキハキしていて、好感度満点だったのだが、いざ働くことになって、「おはようございます」が言えない。「お」しか聞こえない。しかし、取引先との電話では、面接の時のように、一丁前の応対で、とても評判が良いのだった。
 五年前、従業員全員を引き取ることを条件に、会社を整理したのだけど、ほとんどのスタッフが、新天地で活躍しているらしい。
 Nは、私の元にいたときとは、人が変わったように、ノビノビと仕事しているようだ。
 私の目に狂いがなかったのか、どうか?

 ※画像は、東京大学のサイトから拝借。ですが、東大出身はいません。念のため。何人か応募がありましたが、お断りしました。直感ですが、正解でした。後日、「どうして僕が落ちたんですかあ」とのクレームが。

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