G7:汚染された水と土の拡散、「歓迎」せず
G7気候・エネルギー・環境大臣会合が4月15日、16日に札幌で開催され、共同声明「G7気候・エネルギー・環境大臣会合コミュニケ」が発表された。日本政府が目論んでいた福島第一原発のALPS処理水と除去土壌再利用に関する「歓迎」の文字は含まれなかった。
日本政府は「歓迎」を調整
2月、日本政府が、東京電力福島第一原発のALPS処理水の海洋放出や除去土壌の再利用に関して「歓迎する」との表現を盛り込もうと各国と調整をしているとの報道があった(「処理水放出のプロセス「歓迎」 G7閣僚声明で日本政府調整」2023年2月22日)。
住民グループと環境NGOは各国に「歓迎」しないよう訴え
これに対して、住民グループ「新宿御苑への放射能汚染土持ち込みに反対する会」は、3月19日から、環境省は新宿御苑での除去土壌再利用の実証事業を、法的根拠もなく公衆の合意もなく進めようとしているが、汚染水の海洋放出や除去土壌の再利用を許すような共同声明は支持しないでほしいと、日本語のほか、英語、ドイツ語、フランス語、さらには韓国語、中国語にも翻訳してツイッターなどでアピールした。
また、国際環境NGOのFoEジャパンは、3月31日、岸田首相と他の各国気候・エネルギー・環境大臣に対して「Petition letter regarding the Ministers' Meeting on Climate, Energy and Environment in Sapporo」(PDF)を発し、Phase out nuclear power, do not release/spread contaminated water and soil(原子力発電からフェーズアウトし、汚染水や汚染土壌の放出・拡散をしないで)と訴えた。
「歓迎」されず、「認識する」にとどまる
そして4月16日に公表された共同声明は以下のようなものになった。「歓迎」という言葉は「廃炉作業の着実な進展」に使われた。
ALPS処理水については、「人や環境に害を及ぼさないことを保証するためのIAEAの独立審査を支持」という表現に、除去土壌については「日本がIAEAの専門家グループと協力して、除去土壌の再利用と最終処分の課題について議論しながら、東京電力福島第一原発の敷地外の影響を受けた地域の環境回復が一歩一歩進んでいることを、我々は認識する」と表現するにとどまった。
共同声明は36ページにわたるが、以下は、該当箇所のみGoogle翻訳を活用して、筆者が手直ししたもの。
西村大臣は間違った「歓迎」発言でドイツの大臣に正される
なお、西村経産大臣は、16日の記者会見で「処理水の海洋放出」について「歓迎される」と共同声明とは違う発言を行い、ドイツの大臣に押し返されたと報道されている。(参照:朝日新聞2023年4月16日「処理水放出「歓迎できない」 独閣僚、西村経産相に指摘 G7会合」)
除去土壌の実証事業をめぐるその後の動き
「地味な取材ノート」では、環境省の実証事業について、何度か記録してきた。
所沢・新宿住民「汚染土利用は中止を」2023年2月25日
放射能汚染土の再利用:原発基準の80倍 2022年12月18日
所沢:放射能汚染土利用の実証事業計画 2022年12月19日
新宿で原発汚染土「利用」説明:都区には夏に 2022年12月23日
その後、所沢市議会では、「住民合意のない除去土壌再生利用実証事業は認めない決議」を3月23日に全会一致で決議した。
また、「新宿御苑への放射能汚染土持ち込みに反対する会」は、オンライン署名「新宿御苑に放射能汚染土をもちこまないで!~みんなの憩いの場に安全と安心を!」(change.org の署名サイトへのリンク)を現在展開中だ。
【タイトル写真】
環境省が除去土壌の再生利用の実証事業を検討している「新宿御苑」のバックヤードは、鉄格子の塀を挟んで「玉川上水・内藤新宿分水散歩道」に隣接。誰もが立ち入ることができる場所だ。3月25日、除去土壌に関する勉強会の参加者と共に現場を確認した際に、筆者撮影。