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所沢・新宿住民「汚染土利用は中止を」

2月24日、放射能汚染土の再利用に関する環境大臣への申し入れが参議院議員会館で行われた。

共同で環境大臣に要請

環境省は、東京電力の福島第一原発の爆発事故で生じた放射能汚染土を利用する実証事業について、昨年12月16、21日、環境調査研修所(埼玉所沢市)と新宿御苑(東京都新宿区)の予定隣接地に限定(各50名)して説明会を開いた。

所沢では直ちに「所沢への福島原発汚染土持ち込みを考える市民の会」が結成され、隣接する弥生町の町会が「反対」を決議。所沢市長は「地域の理解がなければ、私は(試験計画に)分かったとは言わない」(2月12日埼玉新聞、東京新聞)と住民に語った。

新宿でも「新宿御苑への放射能汚染土持ち込みに反対する会」が立ち上がり、新宿区や東京都など関係自治体への申し入れをおこなってきた。

2地域の各団体が協力して、国に申し入れを行ったのはこれが初めて。両方の住民は「保育園が隣接している」、「除染を行う作業員は、手袋は4重、防護服を着る。飲食も禁止。水も飲めない環境で行う」と事業への不安や疑問をぶつけた。

「新宿御苑への放射能汚染土持ち込みに反対する会」の申し入れ書読み上げ(2月24日筆者撮影)

申し入れを受けた環境省は、両地域で昨年、限定開催した説明会の議事録を公開することを約束した。一方で、今後の説明会については地方公共団体と対応を検討中だとして明らかにしなかった。

住民団体の求めに環境省が応じないことについては、環境NGO、新宿区在住の学者や弁護士、国と地方の国会議員が応じない根拠について質していった。

「所沢への福島原発汚染土持ち込みを考える市民の会」
「埼玉西部・土と水と空気を守る会」の申し入れ読み上げ(2月24日筆者撮影)

セシウム以外の測定も求める

所沢と新宿の住民は、汚染土に含まれると考えられる放射性セシウム以外の放射性物質の測定の公開を求めたが、環境省は2012年の文科省の調査でセシウムが支配的だったことを「科学的知見」であるとし、他の核種は測定しないと繰り返した。

国際環境NGO「FoEジャパン」の満田夏花事務局長は、文科省の調査でもストロンチウムなどが検出されており、「安全性の実証事業だと言いながら測らない理由がわからない」と説明を求めた。

また、政治学者の五野井郁夫・高千穂大学教授は、「放射性物質汚染対処法特措法第8条では、国は放射性物質の汚染状況を把握するために自ら『監視及び測定』し『公表』するように、地方公共団体も『監視及び測定』し『公表』するようにと書いてある。文科省の調査を壊れたレコードのように繰り返す前に、法律で求められているように、測定したらどうなのか」と問うた。

「再生利用」の法的根拠は?

五野井教授はまた、「再生利用には法的根拠がない」と次のように指摘した。
・土壌汚染対策法第2条では「放射性物質を除く」と書いてある。
放射性物質汚染対処法特措法(以後、特措法)には「再生利用」のことは書かれていない。

これに環境省は、特措法第41条の「処分」に「再生利用」を含んでいると強弁。

しかし、新宿区で子育て中の加部歩人弁護士が、「『処分』と『再生利用』は違う」と反論。その論拠を次のように語った。
廃棄物処理法第1条では、「再生」と「処分」は書き分けられている。
・同法第6条の2でも、「処分(再生することを含む)」と書き分けている。
「処分」と「再生」と「再生利用」は違う。同じ環境省が所管する法律なのに、言葉が違う意味で使われるのはおかしい。整合性がない。

もう一つある。環境省は「2045年3月までに福島県外で最終処分することは地元との約束だ」と前提を語ったが、この「最終処分」という言葉は「中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)法」第3条にある。この「最終処分」も「再生利用」なのか。

申し入れの場に60名ほどが参加した(2月24日筆者撮影)

特措法、廃棄物処理法、JESCO法でバラバラな用語について、参加した国会議員も説明を求めたが、環境省除染チームは回答できなかった。

避難者「県外最終処分は県民の思いと違う」

最後に2人の関係住民が立ち上がって発言した。1人は元福島県民で「県外に(汚染土を)やってくれと頼んだ覚えはない。福島県民の思いとは違う」。また渋谷区の男性は、「新宿御苑の3分の1は渋谷区なのに何の説明もない」として渋谷区での説明を求めた。

最後に、進行役を務めた「新宿御苑への放射能汚染土持ち込みに反対する会」世話人の平井玄さんが、①法的整合性、②新宿区と渋谷区民への誰でも参加できる公開説明はいつになるのか、③所沢市の自治会の反対決議及び説明会拒否への対応はどうするのか、④セシウム以外の核種の測定データについて、文書で回答を求めるとし、「もちろん説明会をしないで済むように実証事業は止めていただきたい。新宿区、所沢だけでなく、全国どこでも再利用には反対だ」と締めた。

【タイトル写真】参議院議員会館前

「新宿御苑への放射能汚染土持ち込みに反対する会」、「所沢への福島原発汚染土持ち込みを考える市民の会」、「埼玉西部・土と水と空気を守る会」は参議院議員会館前で、放射能汚染土の再生利用反対を訴えた。(2月24日筆者撮影)

関係する「地味な取材ノート」
放射能汚染土の再利用:原発基準の80倍 2022年12月18日
所沢:放射能汚染土利用の実証事業計画 2022年12月19日
新宿で原発汚染土「利用」説明:都区には夏に 2022年12月23日


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