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原発の寿命を誰がなぜ決める―国会審議から

原発の寿命(運転期間)を誰がなぜ決めるのか。国会で根本的な審議が行われた。

運転期間40年は「政治の意志」

11月10日の衆議院原子力問題調査特別委員会で。逢坂誠二議員(立憲民主党)は、一つのことを繰り返し聞き続けた。原発の運転期間40年ルールを誰が、なぜ、決めるのかだ。30分間、聞き続けても、山中伸介原子力規制委員長の答えは的を射ず、最後には苛立って、こうぶつけている。

逢坂誠二議員: 現行法律には、政治の意思として40年というのが含まれているんです。なぜそのことに対して規制委員会が、「それはエネ庁で議論すべき案件だ」なんということが言えるんですか。その根拠を教えてください。

山中伸介原子力規制委員長: 運転期間に抜けが生じますと、私どもの高経年化した原子炉の安全規制に支障が出るというふうに考えまして、制度設計を進めた次第でございます。

逢坂誠二議員: 「抜けが出る」ということを認めたのは11月2日の規制委員会ですよ。自らエネ庁を呼んでヒアリングをして、その1月後に抜けることを認めたのは皆さんなんですよ。誰かが勝手に抜いたわけじゃないんですよ。だから、なんでそんな判断ができるんだと私は繰り返し聞いているんですよ。

山中伸介原子力規制委員長: 運転期間に関する定めに抜けが生じる可能性があるということを鑑みて、制度設計を始めた次第でございます。

逢坂誠二議員: そういう「抜けが出る」ような提案をされた場合、規制委員会のやるべき 態度としては、「それはやめてください」と、たとえば原子力規制委員会設置法第4条2項の規定に基づいて勧告するなり抗議をするなり、それをするのがあなた方の立場なんじゃないですか、いかがですか。

山中伸介原子力規制委員長: 利用政策に何か物申すということは、我々の独立性に反すると思いますが、いかがでしょうか。

逢坂誠二議員: 運転期間40年というのは、利用政策ばかりではなくて、これは期間の規制です。「期間の規制政策」です。だから、利用政策では必ずしもありません。それをしっかり受け止めて、今回のこの委員会の決定、11月2日の決定は撤回するよう要請します。

2022年11月10日衆議院原子力問題調査特別委員会

「利用政策側が判断」とは一言も書いていない

ここに至るまでには、途中、こんな質疑もあった。

逢坂誠二議員: それでは、委員長、お手元にその令和2年7月29日の見解 をお配りしました。そのどこに運転機関については利用政策側が判断することと書いてあるんですか

山中伸介原子力規制委員長: (略)「現行制度における運転開始から40年という期間そのものは、上記3の評価を行う時期として唯一の選択肢というものではなく、発電用原子炉施設の運転期間についての立法政策として定められたものである。そして、発電用原子炉施設の利用をどのくらいの期間認めることとするかは、原子力の利用の在り方に関する政策判断にほかならず、原子力規制委員会が意見を述べるべき事柄ではない」と記載されております。

逢坂誠二議員: 繰り返しますけれども、このどこに利用政策側が判断すると書いてあるんですかと私は聞いているんですよ。(略)令和2年7月の議事録も、私は詳細に読ませていただきましたよ。利用政策側が判断するなんという議論はしていないはずですよ。この文書にも、どこに書いてあるんですか、このことは。

山中伸介原子力規制委員長: 2ページ目の6の下から2行目ですけれども、原子力利用の在り方に関する政策判断に他ならず、原子力規制委員会が意見を述べる事柄ではないという見解が示されております

逢坂誠二議員: それしか書いていないんですよ。すなわち40年という期間そのものは、立法政策として定められた、原子力の利用の在り方に関する政策判断に他ならず、原子力規制委員会が意見を述べるべき事柄ではない。これが書いてあるだけなんですよ。そして、その判断は誰がするかということは、ここには一言も書いていないんですよ。書いてありますか。(略)

山中伸介原子力規制委員長: いずれにいたしましても、私共は、高経年化した原子力発電所の安全規制に抜けが生じることがないような制度設計を早急にする必要がございますので、その点について検討を進めている次第です。

2022年11月10日衆議院原子力問題調査特別委員会

委員長の答弁迷走

さらに、途中、全く矛盾する答弁もあった。

山中伸介原子力規制委員長: 原子力規制委員会は運転期間について意見を述べる立場にはないという、これはもう間違いございません。ただ、どなたが考えられるかということについても、私どもは何かを申し上げる立場でもないということは事実でございます。

逢坂誠二議員: 「誰が議論するかも述べる立場にない」、私は今の答弁は正しいと思いますよ。それがこの令和2年の見解、確認だと思いますよ。にもかかわらず、記者会見でも今日の答弁の中でも、運転期間については利用政策側が判断することであってということを繰り返し答弁されているんです。これは間違いじゃないですか。

山中伸介原子力規制委員長: 利用政策側が御判断されることだと私は判断しております。

2022年11月10日衆議院原子力問題調査特別委員会

石渡明・原子力規制委員「時期尚早」

山中委員長が「高経年化した原子力発電所の安全規制に抜けが生じることがないような制度設計を早急にする必要がございます」と述べていたが、この6日後、原子力規制委員会では疑義が唱えられた。11月16日の原子力規制委員会。山中委員長が「早急に」と述べた制度案について2度目の議論が行われた。

原子力規制庁が示した「高経年化した発電用原子炉に関する安全規制の検討(第2回)」をもとに、さまざまな意見が出たが、石渡明委員からは、次のような発言があった。

石渡明委員:  前回までの議論についてはこの資料1でよくまとめていただいたと思います。この中で重要なのは、今までの委員もおっしゃられましたように、3.検討状況(1)下の方の段。「原子力規制委員会が利用政策側に先んじて自ら当該定めを変更することはなく、仮に利用政策側が当該定めを変更しない場合には原子力規制委員会も変更することはない」ということが非常に大事な点で、その意味で、この一番最後の「今後の予定」のところなんですけども、「原子力規制委員会の了承が得られれば、公開の場で事業者の意見を聴取する」と書いているんですね。これについては、まだ利用政策側の案がきちんと固まっていない段階でですね、これを今の時点でやるのは、私は時期尚早だと思います。従って、これは現時点で了承は私はしない

原子力規制委員会(2022年11月16日)

第51回原子力規制委員会(2022年11月16日)

原発の寿命は誰がなぜ決めたのか

原発の寿命は誰がなぜ決めたのか、そして誰がそれをなぜ変更しようとしているのか。引き続き書き進めたい。これまでの関係ノートは以下の通り。もし、この取材ノートを初めてご覧になり、興味を持っていただけたら、お読みいただければ幸いです。

岸田首相が指示:原発の運転期間延長の裏側 10月14日
経産大臣:原発規制に「口は出さない」は本当? 11月9日
老朽原発の審査はズサン:延長のリアル 11月13日
老朽原発の審査案、現わる 11月15日
老朽原発の審査は厳しくなるのか? 11月16日

タイトル写真【7ヶ月前】

アキが自力で起きる・食べるができなくなったのは2021年10月。2022年4月お花見の頃は、起こせば自分で歩けていた。

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