(1分読み)ユニバーサルデザイン(UD)の教科書169 矢印の力-学問分野で紐解く
矢印の力-学問分野で紐解く
人が矢印を見ると、その方向に注意が向いたり、行動したくなる傾向があります。これは、視覚神経科学、行動心理学、行動経済学、社会心理学、個人の要因など、様々な学問分野で研究されており、以下のようなメカニズムが働いていると考えられています。
◆視覚神経科学
視覚神経科学の観点から、矢印の示す方向に行動する特性は注目に値します。
視覚神経科学は、視覚情報の処理と視覚による行動のメカニズムを研究する学問で、矢印のような視覚的提示が行動にどのように影響を与えるかを解析します。
矢印は視覚的な刺激として認知され、その情報は大脳皮質の視覚野を通じて処理されます。
その結果、矢印が示す方向に対する行動的反応が引き起こされます。
これは
視覚野から運動野への神経回路の働き
と関連しています。
⑴空間的プライミング
脳は、視覚情報に基づいて空間的な情報を処理します。
矢印を見ることで、脳内では矢印の方向への空間的な活性化が起こり、その結果、矢印の方向への注意が高まります。
これは、
空間的プライミング
と呼ばれる現象であり、注意が特定の方向に引き付けられることを意味します。
⑵視覚誘導
矢印は、視線を誘導する効果があります。
矢印を見ることで、視線が自然と矢印の方向へと向けられ、その結果、矢印の方向にある情報に注意が向きやすくなります。これは、
視覚誘導
と呼ばれる現象であり、
視線が特定の方向に引き付けられることを意味します。
◆行動心理学
行動心理学は、行動の背後にある心理的メカニズムを解明し、行動のパターンを理解しようとする学問です。
矢印と行動との関係は、行動心理学の観点から非常に興味深いトピックとなっています。
矢印は、視覚的な示唆を提供し、無意識のうちに私たちの行動を誘導します。
例えば、矢印を見ると、その方向に自然と行動する傾向があります。
これは
視覚的指示効果
視覚運動連結
と呼ばれ、
目に入った情報が直接、大脳の運動野を刺激し、身体が自然と動くことを示しています。
◆行動経済学
一方、行動経済学の観点から見ると、矢印の示す方向に行動する人の行動特性は
アンカリング効果
とも関連しています。
アンカリングとは、最初に提示された情報に影響され、その情報に基づいて判断や行動をする傾向のことを指します。
矢印は、その方向に行動するという強力な「アンカー」を提供します。
矢印の方向が初期情報となり、
それに引きずられる形で行動する
ことがしばしばあります。
◆社会心理学
⑴右利き文化:
多くの文化において、右利きが優位とされています。
そのため、
右向きの矢印は、潜在的にポジティブなイメージと関連付けられる傾向
があります。
これは、文化と社会心理学的な要因が、人の行動に影響を与えることを意味します。
⑵集団規範
人は、周囲の人々の行動に影響を受けやすい傾向があります。
周囲の人々が矢印の方向へ行動している場合、自分も矢印の方向へ行動したくなる
可能性が高くなります。
これは、
集団規範
と呼ばれる現象であり、
周囲の行動が、個人の行動に影響を与えることを意味します。
◆個人の要因
⑴性格
性格によって、矢印への反応に差が出る可能性があります。例えば、
外向的な人は、内向的な人よりも、矢印の影響を受けやすい
傾向があります。
⑵過去の経験
過去の経験によって、矢印への反応に差が出る可能性があります。
例えば、
過去に矢印の方向へ行動したことで良い結果を得た経験があれば、将来的にも矢印の方向へ行動したくなる
可能性が高くなります。
矢印と行動の関係:具体的な例
◆道路標識:
道路標識には、矢印を使って方向や規制を伝えるものがあります。ドライバーは矢印に従うことで、安全かつ効率的に目的地に到着することができます。
◆エスカレーター:
エスカレーターの乗降口には、矢印が設置されています。矢印に従うことで、乗降客はスムーズに移動することができます。
◆商品パッケージ:
商品パッケージには、開封方法を示す矢印が印刷されています。矢印に従うことで、消費者は商品を安全かつ簡単に開封することができます。
まとめ
矢印と行動の関係は、様々な学問分野で研究されています。
これらの研究結果を踏まえると、
矢印は、人の注意や行動を誘導する強力な力がある
ことが分かります。
これらの知見は、デザイン、マーケティング、教育、社会的秩序の維持など、さまざまな分野で活用され、より効果的な情報伝達や行動喚起を実現することができています。
矢印は
最もシンプルな
インフォグラフィック
と言え、
可能な限り誰にとっても使いやすいデザインである
ユニバーサルデザイン
の観点からも、
矢印は、今後も、
私たちが社会生活を送る上で
安心・安全・効率的な視覚表現
として普及・発展することを望みます。
Think Universality.Think Difference.
m.m
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?