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バー・レイザー〜もと中の人がみたアマゾンジャパンの中途採用術 #1

はじめに

2024/7/6 タイトル改稿
私は2005年から2019年まで約14年間アマゾンジャパンで働いてきました。在職中、アマゾンジャパンは目覚ましい成長を遂げ、入社した当時は100名程度であった社員はこの14年間で6000人まで拡大し、今も成長を続けています。すでに私もアマゾンジャパンを卒業して4年が過ぎていますからさらに(コロナ禍で一時的に採用フリーズが行われたにせよ)組織はさらに大きくなっていると思います。

この急激な成長を支えるための原動力は積極的な採用活動でした。現在は大卒社員の新規採用も行っていますが、ほとんどが中途採用で社員を増やしてきました。幸運なことに、私も自分のチームを任され、チームメンバー、部下の採用を数多く行ってきました。併せて、Bar Raiser バーレイザー(採用の”バー”をあげる役割、後述)として他部署の採用にも関わり、1000人以上の中途採用面接を行い、その採用判定会議の議事進行をしてきました。アマゾンでの私の仕事の中で、多くの時間を費やしたのが採用業務と言っていいでしょう。

アマゾンは凄まじい勢いで成長し、前述の通り、人員拡大も急速に進めて来ました。しかし、その採用に一切の妥協を許しません。人材採用の基準=バーを常にあげることを徹底し、どんなに人手が不足していても、空いているポジションを埋めるために性急な採用をしないことを徹底しています。
「たとえ50人面接したとしても、不適切な人を採用するくらいなら、1人も採用しない方が良い」とはJeff Bezosの言葉。1997年の株主にあてた手紙でも以下のように言っています。

We know our success will be largely affected by our ability to attract and retain a motivated employee base, each of whom must think like, and therefore must actually be, an owner… Setting the bar high in our approach to hiring has been, and will continue to be, the single most important element of Amazon.com’s success.
- Jeff Bezos, 1997 Annual Shareholder Letter
採用のバーを高く設定し続けることはAmazon.comの成功にとって最も重要な要素である

アマゾンは1995年に創業ですが、すでにその2年後でも採用の重要性に言及しているのは、ジェフの慧眼とも言えます。ここにアマゾンの成功の秘訣が隠されていると思います。

こうしたある種の哲学ともいえる採用方針は、時として採用のスピードにも影響し、一つのポジションが採用されるまで時間がかかる場合もあります。現に私も自分の部下を採用するのに10人以上と面接し、決まるまで半年以上かけたこともあります。それだけ時間をかけても、本当に優秀な部下を採用することで組織の力がひとつ上のレベルに上がることも実感してきました。

このようにアマゾンには独自の厳しい採用基準があり、前述の通り私も1000人を超える中途採用面接をしてきたのですが、その中で採用においても多くの失敗も経験し、他部署での採用の失敗も目にしてきました。その度に採用の難しさを実感してきました。そして同時にあやまった採用判断をしたことで、そのあとに多くの時間を費やしてそのフォローが必要となったこともあり、まさに上記のジェフの言葉、「不適切な人を採用するくらいなら、1人も採用しない方が良い」を身に染みて感じてきました。

この連載ではこうした私自身の経験も交え、アマゾンが優秀な人材をどのように確保し、かつ、事業の拡大を進めているのか、その一端をご紹介します。これからアマゾンに転職しようと考えている方、あるいは採用に携わっておられる方に何かヒントとなれば幸いです。

第二回 バー・レイザーとは?
https://note.com/masangin/n/nf655819e4914

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