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バー・レイザー〜アマゾンジャパンの中途採用術 by もと中の人#2

前回リンク https://note.com/masangin/n/nfe2b1122e162

バー・レイザーとは?

アマゾンの採用プロセスにおいて特にユニークなのは、バー・レイザーと呼ばれる役割の社員を面接と採用判定会議に異なる部署からのアドバイザーとして参加させる仕組みがあることです。前述の通り、そのバー・レイザーを私は担当しておりました。

バー・レイザーは読んで字のごとく「採用のバーを(レイズ)あげること」を目的とし、より良い採用をサポートする経験豊富な人材で、人事部門には属しません。各事業部において成果をあげ、トップパフォーマーであることなどの一定の条件をクリアした社員が選定され、半年から1年ほどかけて面接、採用判定会議ファシリテ−ションのトレーニングを受け、その資格を得る一種の名誉職とも言えます。バー・レイザーはその豊富な面接・採用経験に裏打ちされた判断を基に、自分が属さない組織の採用プロセスに加わり、面接を行い、採用判定会議の議事進行を通じて採用マネージャーがより良い判断を導けるよう、サポートを行います。バー・レイザーと採用マネージャーが採用について意見が一致しない限り、採用は認められません。

私はバー・レイザーとして数多くの採用プロセスをお手伝いしてきました。その中で重視していたのは、候補者がアマゾンで重視されている「リーダーシッププリンシプル」を過去の仕事の中でも発揮してきたかどうか、そして、それを入社したあとも再現できるか、という点です。(リーダーシッププリンシプルが採用においてどれほど重視されているかは後述します。)
採用経験の浅いマネージャーが重視しがちなのは、その候補者の過去の経験や人脈、スキルセットです。確かに業務遂行上、必要最低限の経験・知識・人脈は大切です。しかし、それだけを重く見て、チームと協調して働くことができない、自分の意志で物事を進められない、などの人を採用してしまえば、後から苦労するのは目に見えています。そうした採用の失敗を防ぐために、バー・レイザーとして厳しい目で評価し、採用マネージャーがいくら採用したいと言っても決して同意しない、ということを何度も経験してきました。逆に私が採用担当マネージャーとして部下を採用する際に、バー・レイザーに反対されて採用しなかったこともあります。こうした「バーレイザー」という一種のメカニズムが採用のバー・基準を引き上げ、厳しいものとし、結果的にアマゾンの各事業部のビジネスの基盤となっていることは間違いないと言えます。

私は、アマゾンジャパンのバーレイザーコミッティのリーダーとして、日本におけるバー・レイザー拡大のプログラムを推進してきました。バー・レイザー候補者がトレーニングを終了し、晴れて正式なバー・レイザーに就任する際に、コミッティのメンバー全員で必ずレビューを行います。このコミッティでのトレーニング修了レビューは一つの重要な役割として位置づけられています。私がこのレビューにおいて重視してきたのは、バー・レイザー候補者の面接内容とそれが反映されたフィードバックの内容です。質問内容がリーダーシッププリンシプルを確かめるための適切な質問フローとなっているか、判断基準がリーダーシッププリンシプルの評価を中心としているかどうか、などを詳しく確認し、正式にバーレイザーに着任できるかどうかを判定してきました。こうした厳しい基準でバーレイザーとなった方が多くの部署の採用プロセスに加わっています。

参考リンク

こちらのリンクでも触れられているように、バー・レイザーの役割は

  1. Assess candidates for the specific role and for long-term success at Amazon
    応募候補者が募集ポジションに相応しく、アマゾンにおける長期的な成功が可能か評価する

  2. Make sure there is an open, accurate and fair assessment of the candidate with every member of the interview loop participating in the discussion
    採用判定会議において、面接に携わった全てのインタビュワーと共にオープンで、正確、かつ公正な判定を導く

  3. Be responsible for helping hiring managers and others prepare for interviews, ask questions related to the Leadership Principles and the competencies that are needed for the position, assess the candidate, and provide written feedback.
    1)採用担当マネージャーとその他面接担当者がインタビューする準備を助けること、2)募集ポジションに必要とするリーダーシッププリンシプルや資質を確認すること、3)面接応募者を評価し、面接後のフィードバックを文書で提供する。以上について責任を持つ。

次回以降の連載では、もう少しアマゾンの採用プロセスの詳細について記していくことにします。

注意:本原稿は、私が2019年12月まで在籍していたアマゾンジャパンの中途採用方針について書いています。現時点で変更されている部分がある可能性もございます。


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