第五章 チームのあり方に信念を持っているか
あなたは事業部の風土と聞くとどんなことを思い浮かべますか?私が新卒で配属になったスポーツ分野の専門学校は、文字通り体育会系の風土がありました。
上司が職員室に入室してきたら、立ち上がって挨拶を行い、会議で上司が話すときは体を向けます。先輩からのメールには必ず返信を行い、何か指導、指摘を受けた後は「ご指導、ありがとうございました」と、一言述べてからその場を離れます。
先輩との打ち合わせで応接を使用する上では、事前に室温を確認し、テーブルを拭いて、必ず10分前には電気をつけておきます。細かなところまで厳しい指導がありましたが、前述の通り、社会人としての覚悟が備わっていなかった私には、性根を叩きなおすのに適した風土であったと今はとても感謝しています。
ところが新卒として配属された部署で5年目になる年度には、上司が異動することになり、風土ががらっと変わります。新しい上司は、部下の誕生日には誕生日カードをくれるような人でした。私たちが厳しくも、自分たちを律する上で守っていた内規も次々と撤廃されていき、一人の上司によって風土はすっかり変わるものだと印象づけられました。
例えば、職員室内での飲み物を飲む内規。以前の上司の元では、ペットボトルや缶に直接口をつけるのではなく、職員室内でコップに移して飲んでいました。意味づけは、取引先の方が突然来校したときに、直接口に運んでいるのは品がないという意図からでした。今の時代からすると考えられないかもしれません。
その内規を新しい上司は、「時代じゃない」と一蹴します。私の中では「厳しいものを緩めるのは簡単だよね」と抵抗感を持ったことを覚えています。そんな二人の上司の元で両極端な風土を体感した私が、初めて事業部の風土を形成していく役割を担ったときにかかった病を2つご紹介いたします。
一、持論での一点突破
自らの経験の中で得た知見を元に、特に言語化して整理せずに、自分の主観にて事業部の風土について発信していきました。部下からすると、私の想いの根っこがどこにあるのかわからない状態です。当時はとにかく「人のせい、環境のせい」にする他責型の思考だけは払拭しようと邁進していたと思います。そこで私は、持論を客観視して説得力を増すためには一般論を得ることの大切さに気づきます。
ここで、冒頭の問いに戻りますが皆さんは事業部の風土を作ると聞いて、どんな事柄について発信するかイメージが湧きますか。チームづくりにおいて、何も信念がないと、事業部の現状に対して疑問を持つことができません。私が今持っている信念の一部を次に示します。もし共通する価値観があれば、チェックしてみてください。
□時間を守る(締切・開始時間・終了時間)
□失敗を恐れず、挑戦してほしい
□新しいこと、変化を前向きに捉えてほしい
□当事者意識を持ってほしい
□常に自己研鑽してほしい
□簡単なことこそ徹底してほしい
□困ったときはお互い様、上手くいったときはおかげ様
□自分で考えて行動してほしい
□業務にあたるときは真っ先にスケジュールを立ててほしい
□悪いことほどすぐに報告してほしい
□上司の言うことにも意見があれば、気軽に述べて代案を出してほしい
□お互いに気になることがあれば、面と向かって議論してほしい
□与えられた環境下でベストを尽くしてほしい
一部と言いながら、ここまで列挙したのには理由があります。これらをご覧いただいた上で、私がかかった2つ目の病をご紹介します。
二、欲しがり症候群
先に示した信念を、一挙に解決しようと全てを部下に提示していました。具体的には、「セルフチェックシート」と称して、会議で部下に配布し、5段階評価で自己採点するというような具合です。約10項目もの振り返りの機会を得たところで、その場では意識をしてくれますが、なかなか部下に浸透させることができません。当然ですよね。
そのため、重点項目は3点に絞り、何度も発信していく、その他の項目は気づいたときに触れていく、と試みることで事業部の風土を変えることに成功することができました。
この章のまとめとして、まずはあなた自身に、事業部のあり方として信念があるか振り返ってみてください。あまり言語化せずに、部下に共有する機会を設けていなかったとしたら、まずはそこからスタートです。自分のこだわりを棚卸しして、いよいよ部下に風土として浸透していく段階になったときには、欲しがり症候群にかからないように、3点に絞っていきましょう。必ず風土は変えていくことができます。
次の章では、せっかく事業部のありたい姿を発信しても、上司自身に魅力がなければ部下には響きません。そこで、「上司のあり方」というテーマについて触れていきます。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
リーダ―育成・事業部再生コンサルタント
本間 正道
twitterID:@masamichihon
Email:playbook.consultant@gmail.com
著書『リーダーになりたがる部下が増える13の方法』
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
よろしければサポートをお願いいたします。御恩は忘れません。頂いたサポートは、多くの人材が再び輝く日本にしていくための活動に充てさせていただきます。