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第七章 チームを自責型に変えるには

部下が役職者を志すには、あなたが他の部下からの不安や不満に右往左往することなく、凛とした姿勢で物事と対峙していく様子を見せていく必要があります。

仮に、もし役職者が多くの人の愚痴を聞かされ、大変そうな様子を見せていたら、誰も役職者を目指したくないですよね。では、どうしたら不安や不満に凛とした姿勢で臨めるようになるのでしょうか。

そちらをご説明するには、まず指導には次の三段階があることをご理解ください。

一、事前指導…自分の価値観を発信し、布石を打つこと

二、現場指導…事前指導の布石から外れた言動を取った人に、その場で指導すること

三、事後指導…二で指導した当事者だけでなく、風土を立て直すためにチーム全体に改めて発信すること

これらの中で、一と二について専門学校現場の例を交えて補足していきます。

一、事前指導

一については、よりイメージしやすくするために、生徒に語る口調で記載します。

「社会人になる上で、他責型思考からは今のうちに卒業してほしい。他責型思考というのは、人のせい、環境のせいにすることだ。問題に直面したときに、何でという言葉から始まる思考のことを指す。それに対して自責型は、同じ問題に直面したときにどうしたらという言葉から思考が始まり、この結果を作ったのが自分だとしたらと打つ手を考えていく。社会では、人のせい、環境のせいにせず、改善案を講じることにすぐ思考を移せる人材は信頼されていく」このような発信を予め、クラス全員に伝えます。

二、現場指導
 
一のような発信をしていても、日常では清掃、非日常では行事のときに、次のような不満の声が挙がることがあります。

「同じ月曜日の掃除当番なのに、何であの人は帰っちゃうの?」
「委員の人がこれだけ頑張っているのに、何で皆練習のために放課後残ってくれないの?」

このような不満を訴えている生徒はどんな気持ちでしょうか。人は、「何で」という気持ちに囚われていると、その人自身が苦しいですよね。他人が取った態度に自分の気持ちが左右されてしまいます。そのため、担任としてはその気持ちに寄り添いながらも、次のような言葉がけをします。

「どうしたら、帰らずに掃除してくれそうかな?」
「どうしたら、皆練習に協力してくれそうかな?」

すると、少し冷静さを取り戻して、何とか自分のできる範囲で改善案を実行していこうという思考に切り替えてくれます。まだ、できることがありそうだという気づきを得られたからです。

ここでの大事なポイントは、他責にしている状況下において、実は一番苦しんでいるのは他責型思考の人だということです。

一、二の例を踏まえて、あなたが事業部に仕掛けていく取り組みとしては、まずは事前指導として「他責型思考」によって被るストレスを防ぐために、「全員が自責型思考を身につけていく大切さ」について発信します。

人のせいにしていると、いつまでも成長しないという論調ではなく、人のせいにしてしまうストレスはお互いにとって良くないという論調です。

つまり、「愛をもって他責型思考を自責型に変えていく」取り組みをしていくことです。伝え方を変えると、伝わり方が変わります。伝わり方が変わると、事業部の風土が変わります。

自責型思考をその字体から、「どんな物事も自分に要因があると捉える態度」と説いてしまうと、他責の人からは自分を責められ、自分も自分を責めるという二重苦に陥ってしまいます。

そのため、ここでいう「自責型思考」とは、「この結果を作ったのが自分だとしたら」という態度で捉える「自作思考」で部下には浸透していきます。そして、部下に「自作思考」を浸透する上で、最も重要なのは、あなた自身が普段から「自作思考」で徹底することです。

会議での部下の態度、資料の作り方、事業部の売り上げ、その全ての結果に対して「どうしたら」という言葉で向き合っていきます。そして、部下の前でも何度も発信します。

「こういう意図で伝えたつもりだったけど、そういう認識だったのなら、自分が伝え方を工夫した方が良いな」という主旨の発言を何度もしていくと、部下自身も、自らの報告の挙げ方、メモの取り方に工夫を見出してくれるようになります。

こうして、部下が人のせいにしない、環境のせいにしない風土ができあがると、部下は他者から受けるストレスを軽減することができ、働きやすい環境の中で仕事ができるようになります。

この「働きやすい環境」を、部下があなたの影響力で「自責型」の風土が作られたからだと実感したときに、部下は上司の働きがけひとつでチームが変わることを理解し、役職者に憧れを抱くようになります。

余談ですが、私は娘の夜泣きについても「自作思考」で捉え、自分の抱っこの角度や、体温の高さに仮説を立て、改善案を試みていました。

この章のまとめとして、まずはあなたが部下の前で「自作思考」を徹底します。その上で、事前指導として事業部全体に「自作思考」は部下自身のストレスを減らせるという愛をもって説いていきます。

もし、他者のせいにする発言が部下から出たときには、自分の発信力に課題を見出し、「現場指導」として部下に「どうしたら変えられそうか」発問します。

この事前指導、現場指導を繰り返すことで、事業部に「自作思考」を風土として根付かせられると、部下の働きやすさは高まり、役職者に憧れを持つ部下が現れます。

さて、次の章では「自作思考」が浸透した後に、事業部を導く上で必要な「ビジョン」について触れていきます。

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リーダ―育成・事業部再生コンサルタント

本間 正道
twitterID:@masamichihon

Email:playbook.consultant@gmail.com

著書『リーダーになりたがる部下が増える13の方法』

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