「100分de名著」で学ぶブッダ「真理のことば」 」1回目その1
1.身近だけど意外と知らない仏教の教え
生きることは苦しみである。
およそ2500年前、インドの地で仏教を興し、広げたブッダ。
ブッダは人生につきまとう苦しみを見つめ、悟りを開きました。
ブッダ本人が語った教えが収められている真理のことばです。
人生を襲うさまざまな苦しみに人はどう立ち向かって生きていけばいいのか、ブッダの言葉からその答えを紐解いていきます。
今回の講師は、花園大学教授、佐々木閑さん。
ブッダの言葉は震災で苦境に喘ぐ今こそ心に響くものがあるといいます。
今回読み解いてまいりますのは、日本でも翻訳されているブッダの「真理のことば」です。
学生であっても倫理の授業で仏教という言葉は聞いたことがあっても、その大本のブッダとなりますと、意外と知らないものです。
今回講義をしていただく佐々木さんは、古代インドの仏教を研究しています。
佐々木さんは、ブッダの教えを現代の生活に重ね合わせて、分かりやすく紹介しています。
今回は真理の言葉に込められた人生の指針を、解説していただきます。
出演者:
司会 --- 堀尾正明さん
アシスタント --- 瀧口友理奈さん
講師 --- 佐々木閑(しずか)さん
2.苦しみから人生を捉える「真理のことば」
司会者:
今回読み解いていく「真理のことば」とは、どのような本なのですか。
真理のことばは、原語では「ダンマパダ」といいまして、ブッダが弟子たちのために説いた悟りへの道を、誰にでも分かるような簡単な言葉で、423の短い詩にまとめたものです。
ダンマパダは短い詩の集まりなのでそれほど大きな本ではないのですが、ダンマパダに、のちの人がいろいろな物語を足しまして、内容が分かるように説明書を作りました。
真理のことばは、ダンマパダと注釈書を一緒にして作っているので、大きな本になっています。
ここに書かれている内容というのは、今日本が置かれている状況にとって、とても大切な教えがたくさん含まれています。
ブッダが考えたこの世の中というのは、苦しみの世界です。
たとえば、震災で辛い状況にあっているという苦しみを抱えながら、しっかりとした足取りで歩いていくにはどうしたら良いかということへのアドバイスが、この本にたくさんあります。
その意味では、現代的な本です。
苦しみといってもいろいろとあると思いますが、一体どのようなものだといっているのですか?
人間の苦しみには2つあるように思います。
1つは、震災のような、避けがたい人生の苦しみです。
もう一つは、ダイエットの苦しみのような、自分の欲求から出る苦しみで、自らの心が生み出す苦しみです。
仏教はどちらの苦しみもなんとか消したいと考えるものです。
それでは、ブッダが避けがたい苦しみをどのように考えていたか、端的に表す物語がありますので、ご紹介します。
3.パターチャーラーの話
それは大富豪の娘だったパターチャーラーの物語です。
パターチャーラーは身分の低い男と駆け落ちし、流れ着いた土地で子供を産みました。
2人目の子供を身籠ったとき、母親が恋しくなり、実家へ帰ろうとします。
その当時、夫がヘビに噛まれ、死んでしまいます。
不幸は続きました。
生まれたばかりの赤ん坊は鷹にさらわれ、上の子も川に溺れて死んでしまったのです。
パターチャーラーは嘆き、悲しみました。
その哀しみは正気を失うほどでした。
さらには、豪雨で実家も流され、パターチャーラーは天涯孤独になってしまいました。
そんな彼女にブッダは声を掛けました。
「案ずることはありません。この生死の輪廻において、あなたのように子供を亡くして嘆き悲しむ人々の涙は四大海の水よりも多いのです。」
アシスタント: 一度に家族を失ってしまったパターチャーラーですが、ブッダに出会って、その後、どうなったのですか。
講師: ブッダはパターチャーラーに向かって、生き方を変えよ、と言っています。
パターチャーラーもこれ以上不幸になりようがないくらい不幸なわけです。
本来ならばひょっとしたら命を絶つかもしれない。
ブッダは、そんなとき、命を絶つ必要はないと言います。
実際パターチャーラーは釈迦の教えに従って出家して、尼さんになります。
最後は本当の安穏と幸せの中で一生を終えたということが書かれています。
ブッダがパターチャーラーに説いたのは、どんな生き方だったのか、次回に見ていきます。
4.ここまでの感想
仏教という言葉は日本人にとって馴染みのある言葉で、日本の文化や習慣に溶け込んだ身近な存在だけれども、その教えについては実はよく分からない部分があります。
でも、今回解説を聞くことで、ブッタの教えは、苦しみがつきまとう人生を、いかに良く生きるかという問いに向かい合った教えであることが分かりました。
それと同時に、日本人にとって仏教は古くから身近にあったものなのに、本当の教えを知らず、なんとなく人づてで聞いてきた話を疑わずに信じて生きてきたことにも気づけました。
また、仏教に限らず、よく分からないのに、それが真実だと思っていることが他にもあるのだろうと思うと、自分が生きているこの世の中は曖昧なものだということに気付かされました。
曖昧にしていることを学んでいけば、いろんなことに気づけるし、それがまた学ぶことの面白さにつながると再認識させられました。
※NHKオンデマンド、U-NEXTなどの動画サイトで、ご覧いただけるNHK番組「100分de名著」を元に、学んだり、感じたりしたポイントをお伝えしています。
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