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出版社が見落とした秘策とは?

最近、noteで書くことが習慣になりつつあります。
毎日書く中で、情報発信について、さまざまなことを学んでみると、その奥深さや難しさを感じるようになってきました。
そこで、プロとして文章を書いている人はどのようなことを考えながら、仕事をしているのか、興味が湧いてきました。
調べてみると、文章を書くためのノウハウ本などもたくさん出版されています。
今回、ミステリー作家の森博嗣さんの著書「小説家という職業」という本が目に留まり、読んでみました。

まず始めに、森さんの経歴を軽くご紹介します。
森さんは、元々、国立大学で工学科の助教授をされながら、小説家としても不動の地位を築いてこられた方です。
小説家になる、きっかけのベースとして、研究職の最前線から後退しなければいけない状況にあったことと、趣味を続けるための場所と資金を確保したいなどのいくつかの経済的要因があったようです。
その中で、まだ幼かった娘さんが、面白いと言っていたミステリー小説を、森さんも読んでみる機会がありました。
森さん自身は、面白くないと感じたようで、娘さんのために面白い小説を書くことを決心するに至りました。
家族からは、「少々難しい」との感想があったようですが、家族以外の反応を知るために友人にも読むことを勧め、さらには出版社にも応募してみたようです。
その後しばらくして、森さん自身も忘れた頃に、応募した出版社から、出版のオファーがあり、小説家としてのデビューを果たしました。

作家として10年続けることは難しいと言われる出版業界。
森さんは、本著書で、これまでに至る、ご自身の心構えや工夫されてきたポイントをいくつか述べています。
その中で感心させられたことは、まだネット環境が十分でなかった頃から、ご自身でホームページを作り、読者と直接繋がる工夫をされていたことです。
出版社の営業は、書店との繋がりを作ろうとはするけれども、読者との繋がりには消極的であることに、森さんは疑問を感じていました。
そこで、ホームページでは、新作の進行状況を発信したり、過去の作品についての情報を掲載したり、作家活動の傍ら、読者との関係作りを行ってきました。
そして、本に挟んである愛読者カード(はがき)に返事を書かない代わりに、感想メールには、こまめにリプライし続けたようです。
感想メールの中には、厳しい意見も見られたようですが、面白がりながら、作品作りのエネルギー源にできたことが、作家として長年続けられてきた秘訣の一部として挙げらています。

本が読まれる条件として、作品自体に面白さがあることはもちろんですが、工学部の助教授の資質を活かした論理的かつ戦略的な活動には感心させられました。

今回この本を読むことで、作家もビジョンを持ちながら、作家としての活動を設計していくという視点に触れられて、良かったです。



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