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インド・注目の美容ブランド4選~最近のトレンド3つ

今回は、インドで注目した美容ブランド、そして最近のトレンドについてシェアします。

インドの美容ブランド・スタートアップ、ユニコーン企業に

2022年1月、インドの美容ブランド・スタートアップ、Honasa Consumeが、3700万ドル(約43億円)を調達し、ユニコーン企業(※1)の仲間入りを果たしました。(※2)

このスタートアップは、インド発の美容ブランド「mamaearth」(ママ アース)の親会社であり、インドの美容ブランド市場の大きさ、ポテンシャルの高さを示す大型投資となりました。2022年で初めて、インドでユニコーン企業の仲間入りを果たしたスタートアップとなります。

インドでは近年、多くの美容ブランド(コスメ、スキンケアなど)が、インド人の起業家によって立上げられています。男性・女性、年齢層など、各ターゲットに合わせて、異なるブランドが生まれています。「人口サイズが大きいゆえに、ターゲット層を限定しても、市場のボリュームがある」というインドならではの背景があるのでしょう。

以下、インド発の美容ブランドについて、そのトレンドと、注目したいブランド3つを紹介します。

(※1)ユニコーン企業とは、

(※2)シリーズFラウンドである今回の投資は、米セコイア・キャピタル、ベルギーの投資会社Sofina Venturesなどが主導した。

https://www.businessinsider.in/business/startups/news/india-is-home-to-81-unicorns-now-as-mamaearth-globalbees-make-it-to-the-list/articleshow/88558418.cms

https://news.yahoo.co.jp/articles/a81e5d9f7132abf9cd9ca03e7d79debe396e5820

インドの化粧品市場の大きさ

13億人の人口を抱えるインドの化粧品市場は、2025年までに200億ドル(約2兆円)に達すると予測されています。2017年の市場規模(約11億ドル)に比較すると、8年間で約2倍の市場成長が見込まれています。(※3)

このポテンシャルの大きい市場に参入すべく、インド国内の多くの起業家が美容ブランドを立ち上げています。

この市場の成長に貢献しているのが、化粧品に特化したeコマース・プラットフォームと、インフルエンサーの存在です。

インド最大の化粧品に特化したeコマース・プラットフォームである Nykaa は、インド国内外の多数の美容ブランドを扱っています。インド発の新興ブランドも取り扱っています。

インドでも、海外の大手コスメブランド(メイベリン・ニューヨーク)や国内の老舗ブランド(LAKME)などの知名度は圧倒的ですが、上記の土壌によって、創業間もないブランドにとっても、消費者にアプローチしやすく、新規参入の壁が低い土壌があるといえます。

また、インフルエンサーの存在も大きな影響があります。インドの化粧品市場の特徴であり、難しさでもあるのが、消費者の多様さ。多言語、多文化、多民族国家であるインド。同じ国内でも、北と南インドでは、気候も、人々の肌質から大きく変わります。また年齢層や、住んでいる地域(大都市か地方都市か、農村部か)によって、消費者の好みやニーズも大きく違います。

化粧品については特に、自分自身の好みや属性に似ている「インフルエンサー」や、その「フォロワー」たちの口コミを参考にして選ぶことが多い傾向にあります。

これを熟知しているインド国内の美容ブランドの多くは、インフルエンサーと連携して、ソーシャル・メディア上で商品のレビューを発信しています。またデジタルマーケティングに力を入れて、一般大衆向けの広告(テレビ、雑誌など)よりも、インスタグラムなどにターゲティング広告を打ち出して、商品の認知度を高めている企業が多いです。

(※3)Statistia のサイトより

インドの美容ブランド、最近のトレンド

次に、最近のインドの美容ブランドの特徴を3つ書きます。

D2C(Direct-To-Consumers)

D2C("Direct-To-Consumer"の略)とは「メーカーが中間流通を介さず自社のECサイトなどを通じ、商品を直接消費者に販売するビジネスのこと。」(※4)

インド発の新興ブランドは、自社のECサイト、または他社のECサイト(アマゾン、先述の Nykaaなど)を通じ、商品を直接消費者に販売しているものが多いです。

SNSやインフルエンサーなどを通じて消費者に直接リーチし、自社や他社のECサイトで購入してもらう、というものです。マーケティングや商品在庫管理への初期投資を低く抑えつつ、ブランドの認知を高める、ブランドへのロイヤリティを高めることに注力しているブランドが多いです。

インドの美容品の新興ブランドのほとんどが、大企業ではなくスタートアップであり、ほとんどがD2Cのビジネスモデルで事業を運営しています。

(※4)NRIのサイトより

自然派&ヴィーガン

アーユルヴェーダ発祥の地でもあるインド。自然派由来の化粧品やスキンケア製品を好み、化学成分の配合された製品に抵抗感を持つ人は多い傾向にあります。Statistia によれば、こうした自然由来の化粧品の市場規模は、2027年までに540億ドル(5000億円)という試算もあります。

インドにも、化学成分を利用している化粧品ブランド(ユニリーバやP&Gなどのグローバル、インド国内のブランド)もあります。しかし、現地の人々から聞いた印象では、やはり自然派のもの、アーユルヴェーダ、ノンケミカルのブランドを好んで使っている印象がありました。

インドの代表的なアーユルヴェーダの美容ブランドには、Himalaya、BIOTIEQUE、KAMAなどがあります。

さらに最近のトレンドとして付け加えておきたいのが「ヴィーガン&クルーエルフリー」です。

ヴィーガンとは「動物性由来の成分を使用していない」ということ。
クルーエルフリー(cruel free)とは「製品開発やテストの過程で動物実験を行っていない」ということです。
ヴィーガンは「動物愛護の理念に反していない」という意味で、クルーエルフリーと同義であるとも言えます。

インド国内では、特に若い年齢層を中心に、動物愛護の観点からヴィーガンになる人も増えています。ヴィーガンの人々の多くは、食生活を変える(動物性の食品を一切摂らない)だけでなく、動物性の原料が使われた製品や、動物愛護に反する生産工程で作られた製品は使用しません。ヴィーガンでなくとも、動物実験を行っていない製品を好む消費者も多いです。インドでは、路上の野良犬や猫を保護したり、食事を与えたりと、普段の日常生活で動物を大事にする文化があるように思います。

以下にも紹介するインド発の美容ブランドの多くは、「ヴィーガン」「クルーエルフリー」です。

ターゲットを絞ったブランド(男性用、ママ向け etc. )

インドの美容ブランドの特徴として、年齢や地域(大都市 or 地方都市)など、消費者のセグメントを徹底的に特定して商品を開発しています。

これは美容ブランドに限らず、食品や日用品などインドの市場に共通していることです。インドという国の中で年齢や地域が変わると、価格帯やニーズも大きく変わるため、消費者のターゲット層を絞ることで、ニーズにフィットした製品を打ち出すことができます。

数年前までは、ターゲット顧客が広い、欧米の大衆向けブランド(ほとんどが大手)が、市場の大部分を占めていました。(スキンケアブランドだとニベア、ヘアケアではパンテーンなどの欧米ブランド)

一方で、ここ数年で一機に増えたインド発の新興美容ブランドは、ブランドのテーマがユニークで、ターゲットの消費者層を絞っている(ある意味ニッチ)にしているブランドが多いです。

例えば「都市部に生活する中所得層の赤ちゃんがいる母親」「身だしなみを気にする独身男性」「都市部の中所得層出身で、20代の独身女性など」などです。

注目の美容ブランド4選

以下、注目したいインド発の美容ブランドを3つピックアップしました。本当にたくさんのブランドがあるので、選定に迷いましたが、今回はインド国内でも既に知名度の高く、スーパーなどの店頭でも置いている有名ブランドを選定しました。

mamarath

【創業年】 2016年
【拠点】インド・グルガオン
【主力製品】スキンケア(洗顔料、日焼け止めクリームなど)、ヘアケア
【ブランドの特徴】
・ターゲットは小さな子どもを持つママ。
低刺激で自然由来の成分を使った商品を揃えている。ベビー用商品も豊富。
・アメリカの食品薬品認証機関 FDA の認証を取得。安全を保証している。
・ヴィーガン&クルーエルフリー

冒頭に紹介した、2022年1月にユニコーン企業となった「mamaearth」
創業者は夫婦は、それまでインド国内では少数だった、ケミカルフリー、自然由来の成分、高品質、(でも高すぎない価格)のスキンケア製品を作るために、mamaearth を創業しました。

商品を使ったママたちの口コミや、インドの女優 Shilpa Shetty (健康的なイメージで知られている)をブランドアンバサダーに起用して、インドの若い女性たちからの支持を得ています。D2Cブランドとして自社eコマースサイトや、アマゾンでオンライン販売が中心でしたが、現在はスーパーや薬局など、店頭にも商品が並んでいます。

私も mamaearth の洗顔料を使用したことがあります。自然由来の成分を使い余計な材料が入っていない分、香りや保湿力は控えめでした。 

mamaearth の代表的商品、玉ねぎの成分入りシャンプー


Wow Skin Science

【創業年】 2014年
【拠点】インド・ベンガルール
【主力製品】ヘアケア(シャンプーなど)、スキンケア製品
【ブランドの特徴】
・インド古来のアーユルヴェーダをベースに、西洋のハーバルサイエンスをを融合させて、自然派かつスタイリッシュなイメージの商品を開発。
ケミカルフリー(硫黄、鉱物油、パラベンなど無添加)、天然原料由来、皮膚科医によるテスト済
・ターゲットは。20~30代の女性が中心。価格帯は従来の大衆向けブランドよりも1.5~2倍ほど高い。高品質なヘアケアやスキンケア商品を求める女性に支持されている。
・ヴィーガン、クルーエルフリー

創業者は兄弟。創業当時、アーユルヴェーダをベースにした自然派美容ブランドはインド国内にあったが、Wow Skin Science のユニークな点は、アーユルヴェーダをベースにしつつ「洗練された」「スタイリッシュな」、自然派美容ブランドのイメージを確立したことにあると思います。

玉ねぎ成分入りのナチュラル・シャンプー
洗練されたブランド・イメージが特徴

eコマースやアマゾンなどのオンライン販売を中心に売り上げを伸ばし、現在はスーパーなどで店頭販売もされています。2021年4月に5000万ドル(50億円)の資金調達も行い、現在急成長中の美容ブランドです。

同ブランドは、エコフレンドリーにも力を入れています。ブランドサイトをチェックしたら、紙のボトル入り洗顔料を発売していました。

公式サイトより


mCaffeine


【創業年】 2015年
【拠点】インド・ムンバイ
【主力製品】ボディケア、フェイスケア、ヘアケア
【ブランドの特徴】
・最大の特徴は、カフェインを主成分としたスキンケア、ヘアケア商品
 コーヒーやお茶などに含まれるカフェインの抗酸化作用をヒントに、
 肌や髪質ケアに効く商品を自社独自で開発
・ケミカルフリー、ヴィーガン&クルーエルフリー、人工着色料無添加
・ターゲットは20~30代の男性&女性

なぜカフェインなのでしょうか?
きっかけは、創業者のひとりが眼をケガしたとき、彼の友人の勧めで「緑茶のティーバッグ」を充ててみたら、治癒効果で痛みが引いたこと。
この経験がきっかけとなり、お茶の治癒効果に興味を持ち研究をしてみたところ、カフェインの抗酸化作用など、肌や髪のケアに効果があることを知って、独自に製品を開発したのが、創業のきっかけだそうです。

コーヒーや緑茶のカフェインを主成分としたスキンケア製品

商品コンセプトの目新しさから注目され、肌質や髪質改善に悩む女性たちの間でヒット、売上を伸ばしました。男性向けの製品も多く発売しています。

現在シリーズB ステージにあるスタートアップ。インドに数ある新興の美容ブランドの中でも、知名度が高く、現在急成長している企業です。


Beardo

【創業年】 2015年
【拠点】インド・アーメダバード(2020年インド日用品企業 maricoに売却)
【主力製品】男性用スキンケア(ひげケア、肌ケア)
【ブランドの特徴】
・顧客ターゲットはインド都市部の若い男性(20代~40代)
・主力製品は、ひげのお手入れグッズ(ローションなど)

高品質洗練されたブランドイメージを確立
・現在は男性用のスキンケア商品、香水など多様な商品を展開

インドでは、口ひげや顎ひげを生やしている男性は一般的に多いです。
(年齢や出身コミュニティ、その人自身の好みにもよります。)

Beardo の創業当時、インドで男性がひげのメンテナンスやケアに使えるものは、それほどありませんでした。あるとすれば、昔から使われていたオイルなどが一般的でした。

「身だしなみに気を付けている男性たちが使いたくなるような、ひげのメンテナンスグッズ」ここに市場にニーズがあると見た創業者は、ひげのお手入れ用ローションなどを発売。高品質な製品、インドの人気俳優をブランド広告に起用し、洗練されたブランドイメージを確立しました。

インドの人気俳優 リティク・ローシャンを起用した広告

同社のデジタルマーケティング戦略なども功を奏し、都市部の若い男性たちを中心にヒットしました。以降、スクラブ洗顔料や香水など、男性向けに様々な商品を展開しています。

Beardo は、インドにおける男性用美容ブランドの先駆け的存在で、「男性向け美容市場」そのものを作り出した企業とも言えます。


まとめ

以上、インドの化粧品市場と美容ブランドの最新トレンドについて、まとめてみました。今回の記事は、かなり大雑把なまとめになりましたが、インドの美容ブランドを知るきっかけになれば嬉しいです。

個人的には、「ケミカルフリー」「ヴィーガン、クルーエルフリー」という観点を消費者が重要視していること、そしてブランドがそれに応えるように、クリーン&グリーンな製品を積極的に打ち出していることが、
先駆的だと感じました。

今回取り上げたインドの美容ブランドブームの背景には、デジタルマーケティング戦略や、D2Cブランドを支える物流チャネルなど、様々な要因があります。これについても、いつか取り上げようと思いますが、気になる方はぜひ調べてみてください!

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参考サイト:


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