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インドのSports Techスタートアップ3選

2021年8月に幕を下ろした東京オリンピック。

インドでは陸上男子槍投げで金メダルを獲得したニーラジ・チョープラー(Neeraj Chopra)選手をはじめ、ニュース過去40年間で最高成績(※1)を記録した大会となりました。インドのニュース番組や人々の間では、オリンピックの話題で盛り上がっています。

インドで人気のスポーツはクリケットやサッカーであるため、これら以外の国際的なスポーツ大会で盛り上がるのは、かなり珍しいようです。

今回はスポーツにちなみ、インドのスポーツテックの現況、注目のスタートアップ3つをシェアします。

最注目はeSports 領域のスタートアップ

「スポーツテック」の中でも色々なジャンルがありますが、インドのスポーツテック企業の中で特に投資が進んでいるのが「eSports」分野です。(eSports とは「Electronic Sports」の略称で、オンライン上でのスポーツ競技の総称を指します。)

インドでは、オンライン上で実在(または架空)の選手でチームを構成してプレイするスタイルのゲームが人気です。トーナメントで対戦したり、フィジカルスポーツのように、異なるチームや個人がチャンピオンシップやリーグ、タイトルを獲得するために対戦します。以下に紹介する、投資集まるスタートアップも、この領域が多いです。

以下では、インドのeSports領域のスタートアップについて、深堀りしていきます。

(eSports以外のスポーツテック)
eSports のほかには、競技場のオペレーションを支えるアリーナ・マネジメントや、スター選手のグッズを販売するオークション・プラットフォームの分野で、インド発のスタートアップが注目されています。

インドのeSports市場のポテンシャル

・市場規模
コンサルティング会社 Earnest & Young 社のレポートによると、インドにおけるeSportsの市場規模は、まだ初期段階ではあるものの、2021年には約40M USD(45億円)にまで急速に拡大しており、2025年度には約160M USD(160億円)に達すると予想しています。

インドにおけるeSports市場は、ここ数年で目覚ましく成長し、特に2020年以降、コロナによるロックダウン期間中に人気を博しました。(※1)

2021年時点での、インド国内のeSports プレイヤーは15万人ですが、2025年までに10倍、150万人規模になると推定されています。

・特徴(モバイル中心、無料)
インドにおけるeSportsの主戦場はスマホ、つまりモバイルゲームです。プレーヤーの中心は、20~40代の若い世代です。

インドのeSports プレイヤーは、無料でのアプリ利用を好みます。そのため、アプリ内課金に加え、アプリ内広告収入、ゲームの視聴ストリーミング、スポンサー収入などが、ゲーム開発会社の主な収入源となっています。


人気ダントツはクリケット

インドのeSports競技で最も人気を博しているのはクリケットです。
インドのメディア Startup Talkyの調査によれば、 eSports ユーザーが最も多くプレイしている競技はクリケット、次いでサッカーです。

ちなみに、下図第3位のカバディ(Kabaddi)とは、インド発祥の南アジア地域で主に行われるチームスポーツで、インドの国技です。

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参照:Startup Talky

クリケットは、インドで圧倒的人気を誇る「国民的スポーツ」です。
インドの街を歩けば、朝から夕方まで、広場や公園でクリケットをプレイする子どもたちをどこでも見かけます。インド国内のリーグ戦 IPL (Indian Premier League) や、クリケットの国際大会の開催期間中は、インドの街中、メディア、スポーツバー、どこでも大盛り上がりです。

(クリケットには及ばないものの)サッカーも最近は人気を博しており、インド国内やヨーロッパのリーグ戦を中心にファンが多いです。

リアルで大人気のクリケットが、eSports 上でも人気を博しています。
以下、大型投資により注目を集めるスタートアップを紹介します。

注目のスタートアップ1:Dream 11

創業年:  2008年
拠点:   ムンバイ(インド)
資金調達額:USD 785M
主な投資者:Tencent など

インドのゲーム/スポーツテック領域の代表企業。
2019年4月に、インドで史上初となる、ゲーム業界でユニコーン企業の仲間入りを果たしました。

一番人気はクリケットで、プレイヤーは好みの選手を集めてチームを作り、オンラインで対戦します。Dream11だけで、インドのeSports市場の90%以上を占めると推定されており、中国企業 Tencent などが出資しています。(※2)

2020年ドバイで開催されたクリケットのインド国内戦、インディアン・プレミア・リーグ(IPL)のスポンサーにもなっています。

(※2)KPMGとIFSG(Indian Federation of Sports Gaming)のレポートによる

注目のスタートアップ2:MPL

創業年:  2018年
拠点:   バンガロール(インド)
資金調達額:USD 236M
主な投資者:Sequoia Capital など

後発ながらも、大型出資を受けたことで注目を集めるeSports スタートアップ。インドで知らない人はいない、クリケットのスター選手、Virat Kohli選手がアンバサダーを務めています。

インドではクリケットのスター選手の知名度・人気度はも圧倒的で、ポリウッドスターと並び、ブランドの看板(アンバサダー)になっています。

クリケットを始め、サッカーやビリヤードなど、30種類以上のゲームがプレイでき、トーナメントやイベントが開催されており、試合に勝つと賞金が授与されます。


注目のスタートアップ 3:Techfront

創業年:  1996年
拠点:   チェンナイ(インド)
資金調達額:USD 45M
主な投資者:Avigo Capital Inc など

スポーツ競技場のアリーナ・マネジメントを手掛けるスタートアップ。
アリーナ内のLED照明、試合のスコアリング、会場内の安全管理(観客の体調監視)、観客のエンゲージメント、など、幅広いソリューションを手掛けています。

インド国内外でのクリケット国際トーナメント、サッカーW杯など、多くの国際大会の舞台裏で、同社のテクノロジーが活用されています。

スポーツ以外にも、エンターテインメント(コンサートなど)やメディア向けのソリューションを提供しています。

まとめ

インドのSports Tech は、eSports を中心に今後の市場の伸びが期待されています。また、マラソンやクリケットなどリアルなスポーツ大会でも、試合状況と連動した観客エンゲージメントにも、テクノロジーが使われ始めています。

今後もインドのeSports に注目していきたいと思います!


参考記事:


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