畑

畑からまなぶ人づくり(2)

人ではない食という命を育てている人たちから、何か人づくりのヒントが得られないだろうか。そんな思いで色んな蔵や農家さんのところに出向くようになりました。蔵人や農家さんはどんなことを大切にされ、どんなこだわりをもって日々命と向き合っているのか。
何事も一生懸命一つのことに専念している人たちからのお話は、全てに通じる人生の在り方、生き方みたいなものを学ばされます。

子どもたちにとって、よりよい学習環境とは

前回、アイアイ自然農園の取り組みを通じて、自然農法についてまとめさせていただきましたが、これを教育に置き換えたら、どう読み取れるのでしょうか。二回目となる今回は、私たちがこれから向かう教育の在り方、そしてくらしの在り方について触れていきたいと思います。

アイアイ自然農園の加藤さんが最も大切にされていたことは「生態系」を整えることでした。これを人に置き換えると、子どもたちがいる生活環境(生態系)を整えていくことが、子どもたちが健やかに育っていく上で大事なこととも読み取れます。

私はこれまでの経験から、多様性のある場、もっといえば、カオスのような場こそが、極上の学びの場だと捉えているのですが、アイアイ自然農園もある意味カオスのような場に近いのかもしれません。(農園の方には申し訳ないのですが。)

アイアイ自然農園の野菜たちは、すべてがお膳立てされた居心地のいい環境にいるとは到底思えません。肥料も与えられなければ水も与えられない。全て身近にある環境から自分の力で調達しないと育っていけません。

じゃ、育てている側がほったらかしかというとそうではなく、その土地の生態系を崩さないためにはどうすればいいのかと、一見厄介者に見える雑草でさえ排除せず、むしろそれを最大限に活かしています。また、育ちの遅い野菜たちを肥料で無理にせかすのではなく、彼らの潜在能力を信じて、しっかりと根をはって地上に芽が出てくる日をひたすら待ち続けます。こういった地道な努力は、人を育てていく上での関わり方を私たちに教えてくれます。

特に雑草のお話は、雑草を障害ととらえると、よりわかりやすいかもしれません。同じ匂いで引き寄せている(求めている)からこそ、成長にとって必要な存在。それは、完全になくすほどのものではなく、加減の問題であり、決して無駄ではない。むしろなくてはならないものといえます。

当たり前を問い直す

ちなみに、今回ご紹介した内容はアイアイ自然農園さんの育て方であり、農家の数分だけ農法があると言われるほど、農業には色んな育て方があるようです。

一般的に自然農法は、手間暇かけた割には収穫量が少ないため、大量生産、大量消費の社会からすれば、不向きな農法といえるかもしれません。

市場(消費者)のニーズに応えるために、できるだけ短期間で、より多くの収穫量をと考えれば、即効性のある農薬や化学肥料の存在は無視できません。

それでも、排気ガスが体にいいと言う人がいないように、農薬、除草剤が体にいいとは誰も思っていません。また、化学肥料を使うことで土がどんどんと痩せていっているという指摘もあります。

今回は、食の安全や自然環境について詳しくは触れませんが、全ての分野において、これまで優れている象徴として当たり前と思っていた価値観が、私たちのあらゆる場面で今問い直されているような気がします。

教育を大量生産というのは不向きかもしれませんが、これからは、スーパーの野菜売り場のように、同じような規格の子どもたちを大量に育てていくのではなく、その土地にあった、その子、その子に応じた多様なやり方で育てていくことが益々重要になってくるのではないでしょうか。

大規模農園では自然農法が難しいように、「じゃ、大規模校ではどうすればいいのですか。」そういった声が今にも聞こえてきそうです。

でも、ここで大事なのは答えが一つだと思わないことなんじゃないでしょうか。どこかに正解があると信じて、できるだけ早くそれを知りたいという衝動こそ、今私たちが見直さないといけない習性なのかもしれません。

文部科学省が打ち出した「主体的・対話的で深い学び

これを本当に実践していかないといけないのは、私たち大人たちなんだと思います。

どんなに悪い環境でも、いやむしろ悪い環境であればあるほど、潜在的に秘めた力を発揮し、たくましく育っていく生命の力

たとえ過酷な環境であっても、生態系の中でお互いがお互いを補い、支えあって、総合力で自然が見事に循環されている

そういった力が野菜だけでなく、私たち一人一人の命にも備わっているはずです。

効率性を追求した結果、いつしか手段が目的となって、色んな部分で不都合が起こってきています。

持続可能な社会にしていくためには、私たちはもっともっと自然の摂理から色んなことを学び、時代にあったやり方で捉え直していく必要があるんでしょうね。

そんなことを野菜づくりから学ばせて頂きました。

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