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【abc予想】を簡単に理解する

こんにちは。アクセスありがとうございます。

最近話題となった、数学の未解決問題の「弱い」abc予想を京都大学数理解析研究所教授の望月新一さんが証明したという論文を出し、2020年2月に査読が完了したことが発表されました。

今回は、そのabc予想とはどんな予想なのかを解説していきたいともいます。

「弱い」abc予想とは?

a+b=cを満たす互いに素な自然数の組(a,b,c)に対し、d=rad(abc)とする。この時、任意のε(イプシロン)>0に対して、c >d^1+εを満たす(a,b,c)の組みは高々有限個しか存在しない。

という予想です。
これだけでは、何を言っているか分かりませんよね。
後で詳しく説明していきます。

この予想は、1985年ジョセフ・オステルレとデイヴィッド・マッサーが提唱しました。

そして、2012年に望月新一さんが証明したという論文を発表しました。しかし、査読完了したのは、2020年2月という約7年半もかかりました。なぜこんなに時間がかかったのでしょうか?

理由は明白です。全く新しい数学である宇宙際タイヒミュラー理論というものがabc予想の証明に使われていました。

宇宙際タイヒミュラー理論どこか厨二病そそられる理論ですよね(笑)でも、一般人には全然理解することはできません。

互いに素とは?

互いに素とは、最大公約数が1であるものです。

例えば、(9と14)や(5と7)みたいな数です。

(28や52)の最大公約数は4、(57や437)の最大公約数は19で互いに素ではないと言えます。

abc予想では、互いに素な自然数の組(a,b,c)とあるので、それぞれが互いに素でなければいけません。
しかし、このabcの関係は、次のような性質があります。

互いに素である2つの和の合計は、互いに素である2数とも互いに素の関係にある。

簡単に言うと、(a,b)が互いに素ならばcも互いに素になるということです。実際に確認してみます。

9+14=23    (9,14,23)は互いに素な3数
9=1×3^2、14=1×2×7、23=1×23で最大公約数は1です。

56+141=197 (56,141,197)は互いに素な3数56=1×2^3×7、141=1×3×47、197=1×197で最大公約数は1です。

radとは?

実際に見てみましょう。

rad(360)=rad(2^2×3^2×5^2)

radを簡単に言うと、指数の部分を全て1にする効果があります。
つまり、rad(360)=2×3×5=30になります。

c >d^1+εを満たす(a,b,c)の組は有限個しかないとは?

εは、ε >0であるので、0より大きかったら何でもいいと言うことです。

つまり、dの1乗より少しでも大きいとき、cの方が大きい(a,b,c)の組みは、数えられる程度しか存在しないと言うことです。

実際に考えてみましょう。

(a,b,c)=(1,2,3)の時
c=3, rad(1×2×3)=d=6
dに1+ε乗しなくてもc<dである。

(a,b,c)=(5,7,12)の時
c=12, rad(5×7×12)=2×3×5×7=210
この場合も、c<dです

dを1よりちょっと大きい乗しないとc<dは無限個存在します。

(a,b,c)=(1,8,9)の時
c=9, rad(1×8×9)=6

ε=0の場合、c>dは成立します。しかし、このような3数かつε=0の場合も無限個存在します。

ε=0の時、c>dは無限個存在するすることを証明してみましょう。

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次に、同様の(a,b,c)の例でε=0.1の時どうなるかを調べると

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3つしかc>d^1.1は、存在しないことがわかります。

このことから、cとdが大きい数になればなるほど、たとえεの数が小さくてもcとdの大小関係が反転することが分かります。

abc予想は何に役立つの?

この予想が証明されることで、今考えられている予想や定理を導くことができると期待されています。

中でも有名なものは、360年間解けなかったが、アンドリュー・ワイルズが証明したフェルマーの最終定理をたったの紙1枚で証明することができるようになります。

しかし、今回証明したという論文の内容は、弱いabc予想であり、フェルマーの最終定理は、強いabc予想でないと解けないと言われています。

※フェルマーの最終定理とは?

3以上の自然数nについて、x^n+y^n=c^nとなる自然数の組(x,y,z)は存在しない。

※強いabc予想とは?
簡単に書くと

a+b=cを満たす、互いに素な自然数の組(a,b,c)に対し、d=rad(abc)とする。この時、d^2>cとなる。

強いabc予想を用いたフェルマーの最終定理の証明

互いに素なx,y,zが存在し、x^n+y^n=c^nが存在すると仮定する。
強いabc予想よりz^n<rad(xyz)^2
よってz^n<z^6(x<z、y<zより)
仮定より
3≦n<6
よって、x^n+y^n=c^nは、3≦n<6のとき成り立つ。
ただし、n=3,4,5の時は別途証明されているため存在しないと結論できる。
よって、x^n+y^n=c^nは、3≦nのとき成立しない。

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