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【15分でわかる】運営業務におけるコストパフォーマンスの考え方

こんにちはKazpeeです。

私は現在、とあるIT企業の運営業務におけるKPI設計やKPI-Dashboard構築(いわゆるTableauなどのBIの構築)のプロジェクトを担当しています。

初回投稿となる今回は、運営業務におけるコストパフォーマンス評価のための基本的な考え方やKPI設計方法についてまとめてみました。

すごくニッチな分野について書くので、ニーズがどのくらいあるのかわかりませんが、一人でもこの記事が参考になって仕事に活かされれば本望です。

ところで、「運営業務」と言ってもピンとこない人が多いかもしれません。

いわゆる運営業務とはテクニカルサポートのコールセンターだったり、クレジットカードの入会審査だったり、Twitterや掲示板のようなユーザーの投稿で成り立つサービスだったら、その投稿物の監視(不適切な投稿を削除する、など)といったものを指しています。

※会社によっては「オペレーション業務」とか「バックオフィス系業務」と呼ばれているかもしれません。

前職では事業会社のCRMマーケティング部門で、販売戦略/施策の立案に関わっていたのでフロントエンドのKPIがなんたるかは理解しているつもりでしたが、運営業務のKPIの設計はほぼ未経験だったので、入社して約2年の間、いろいろと試行錯誤を重ねてきました。

やはり、この分野で何がつらいかというと運営業務のKPI設計に関する情報ソースがめちゃくちゃ少ないことです。営業やマーケティング分野と比べると圧倒的に少ない。


特に投資対効果を表す指標や考え方についての情報は少なく、例えばサブスクビジネスだとCAC(Customer Acquisition Cost)、LTV、Unit Economicsといった定石ともいえる投資対効果の評価方法もググれば詳しく解説を得られますが、運営業務だとピンとくるものがほとんどない、、、

「おそらくこの悩みを抱えているのは私だけじゃないはず」

そんな思いが投稿しようと思ったきっかけです。とにかくわかりやすさ重視で書いていきます。それでは参りましょう。


クイズ

これから4問のクイズを出します。
ひっかけ問題ではないのでシンプルに考えてみてください。

あなたは、あるサービスの問合せ電話応対業務を外部業者へ委託しようと考えているとします。候補は2社あり、以下のような条件です。

前提: 1日に1,000件の入電をこなす必要がある

A社
・10人のオペレータを配置
・人件費は10万円/日
・1,000件/日は対応可能

B社
・9人のオペレータを配置
・人件費は10万円/日
・1,000件/日は対応可能

どちらの業者へ委託するのが得でしょうか??

A社とB社で異なるのは、配置するオペレータの人数のみです。かかるコストも同じ、対応できるキャパシティも1,000件で同じです。

答えは・・・・「どちらでも同じ」

ひっかけ問題ではないと言いつつ、ひっかけ問題っぽくなっちゃいましたね。すみませんmm

単純に考えて「同じ金額を支払うなら、どちらが得か?」という解釈で考えると答えは明白ですね。

このクイズはウォーミングアップです。では次にいきましょう!

前提: 1日に1,000件の入電をこなす必要がある

A社
・10人のオペレータを配置
・人件費は10万円/日
・1,000件/日は対応可能

B社
・9人のオペレータを配置
・人件費は9万円/日
・1,000件/日は対応可能

どちらの業者へ委託するのが得でしょうか??

1問目とは異なり、配置するオペレータの人数もコストも両社で違います。
いかがでしょうか?

答えは・・・・「B社」

「同じ金額を支払うなら、どちらが得か?」と考えると、どちらも1,000件の対応ができるのでコストが安い方が得ですよね?となると答えは「B社」になります。

では次にいきましょう!

前提: 入電数はとにかくたくさん(上限ナシ)

A社
・10人で1,000件/日を対応可能
・10人で10万円/日
※1名単位で委託OK

B社
・9人で950件/日を対応可能
・9人で9万円/日
※1名単位で委託OK

どちらの業者へ委託するのが得でしょうか??

前提が変わっていて、今回は1日の入電数に上限がありません。つまり、とにかくたくさんの入電をこなすという条件下で考えてください。

どうでしょうか?そろそろヒントがないと厳しいかもしれませんねw

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これならどうでしょうか?なんとなくどれも効率を表す指標として使えそうです。

1人あたりコスト 同等
1人あたり件数  B社の方が良い(多い)
1件あたりコスト B社の方が良い(安い)

さて、それでは答えに参りましょう。

答えは・・・・「B社」

これまでのクイズ同様、「同じ金額を支払うなら、どちらが得か?」
と考えてみてください。

例えば、10万円を支払うとしたら両社が対応できる受電数は

A社 ・・・10万円÷1件あたりコスト100円=1,000件
B社 ・・・10万円÷1件あたりコスト95円=1,053件

つまりB社の方が多く受電できるので得だと判断できます。

それでは最終問題に参りましょう!

前提: 入電数はとにかくたくさん(上限ナシ)

A社
・10人で1,000件/日を対応可能
・10人で10万円/日
※1名単位で委託OK

B社
・11人で950件/日を対応可能
・11人で9万円/日
※1名単位で委託OK

どちらの業者へ委託するのが得でしょうか??こちらもヒントが必要ですね。

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1人あたりコスト B社の方が良い(安い)
1人あたり件数  A社の方が良い(多い)
1件あたりコスト B社の方が良い(安い)

それぞれの効率指標の優劣が異なるので、先程のクイズよりも難易度高めですね。

さて、それでは答えに参りましょう。

答えは・・・・「B社」

これまでのクイズ同様、「同じ金額を支払うなら、どちらが得か?」
と考えてみてください。

例えば、10万円を支払うとしたら両社が対応できる受電数は

A社 ・・・10万円÷1件あたりコスト100円=1,000件
B社 ・・・10万円÷1件あたりコスト95円=1,053件

つまりB社の方が多く受電できるので得だと判断できます。

おそらく「意外と解答に迷ったな」という人が多かったのではないでしょうか?これらのクイズ、なにか気づきませんか?

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実は今回のクイズの全てが「1件あたりコスト」の結果で答えられるんです!

なぜか??その理由を解説していきたいと思います。

1件あたりコストが意味するもの

これらクイズで問われているのは「同じ金額を支払うなら、どちらが得か?」です。もっと具体的に言うなら、

「同じ金額(コスト)で、より多くのボリューム(件数)に対応できるのはどっちか?」

ということですから、1件あたりコスト(コスト÷件数)が安い方が同じ金額でより多くのボリュームに対応できるというのは理解頂けるかと思います。

「いやいや、そしたら「1人あたりコスト」や「1人あたり対応件数」は意味ないってこと?」

そんな声が聞こえてきそうですね。
実は意味がないのではありません。これら3つの指標は互いに繋がっているんです。以下をご覧ください。

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お分かりでしょうか?
つまり、「1件あたりコスト」は「1人あたりコスト」と「1人あたり対応件数」で構成されるということです。逆にいえば、「1人あたりコスト」や「1人あたり対応件数」のどちらか単独だけでは「1件あたりコスト」は決定できません。組み合わせで決まるのです。

このように計算構造を理解しておけば、なんのことはないクイズだったとお分かり頂けるかと思いますが、これが理解できていない状態だと、今回のように複数の効率指標が登場した際に誤った解釈をしかねないという事がお分かり頂けたのではないでしょうか。

まとめ

クイズでは1日あたりのコスト、人数、対応件数を扱いましたが、実際の現場では1日あたりという粒度では粗すぎるため、以下のように考える方がベターだと思います。

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人によって1日に何時間勤務するかは異なるため、時間単位で押さえておくのが最も正確です。これらをまとめると

3つの指標を下記のように定義

1件あたりコスト      ・・・Unit Cost
1人・1時間あたりコスト    ・・・人件費単価
1人・1時間あたり対応件数   ・・・生産性

Unit Cost = 人件費単価 ÷ 生産性

また、この考え方が便利なのはUnit Costだけでボリュームに対するコストパフォーマンスを評価できる点です。

実際の運営業務の現場では、様々な雇用形態の人達が働いていて、人件費に関しても時給制、固定月給制だったりしますし、生産性に至っては個人レベルで異なります。

そんな状況でも、例えば毎月の単位では人件費は経理上で確定しますし、対応数も月次で何件だったかという実績は容易に入手できると思います。

この2つの数字さえあればUnit Costは算出可能で、その業務の効率性を評価することができます。

また、業務を外部業者へ委託した場合も同様に、支払い総額と、対応件数がわかればその業者の効率性を評価できます(2社以上を利用している場合などは両社の比較も容易になります)

従って、そのUnit Costが妥当なレベルなのかをまず評価し、その変動要因を分析するためには人件費単価と生産性に分けて分析していくことによってシンプルに分析できるという、大変便利な手法になります。

今回はここまで。

次回は人件費単価・生産性についての具体的な考え方について書きたいと思います。

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