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「データが先か、仮説が先か」最短ルートでインサイトへ迫る考え方

データ分析に関する逸話で「おむつとビール」の話があります。

けっこう有名な話なので知っている人も多いかと思いますが、ざっとこんな話です。

米国の大手スーパーマーケットで販売データを分析した結果、顧客はおむつとビールを一緒に買う傾向があることが分かった。調査の結果、子供のいる家庭では母親は紙おむつを買うように父親に頼み、店に来た父親はついでに缶ビールを購入していた。そこでこの2つを並べて陳列したところ、売上が上昇した。

顧客の「ついで買い」の傾向をデータ分析から導き出し成功した、という有名な事例ですが、情報ソースが諸説あったり、実は都市伝説では?という見方もあるみたいです。

この事例のような「データを分析することによって普段気づくことのなかった新事実を発見し、ビジネスをドライブさせる」といった側面は、ビジネスの世界で「データ分析」という手段が脚光を浴びるきっかけになってきました。

しかし、これまでデータアナリストをやってきた経験の中で感じることは

「データ分析からいきなり大きなインサイトを得ることはそんなに多くない」

という事です。それについて書いていきたいと思います。

「事実 ≠ インサイト」

たしかにデータをみなきゃ気づかないことや、わからないことはあります。例えば「この商品を買っている顧客の年代構成ってどうなってるんだろう?」といったようなデータを調べてみてはじめてわかる事実というものは確かに存在します。ただし、これらはあくまで「事実」であって「インサイト」であるかどうかは別の話です。

【インサイト】・・・直訳すると「洞察」
※本記事では「施策を成功に導く洞察 or 発見」という意味で用います。

仮にこの商品の購入者の年代構成を調べた結果「40~50代が60%」ということが把握できたとしましょう。

さらに、実はこの商品は「20~30代の顧客をメインターゲットに開発された商品」だったとした時、もしこの背景を知っていたなら、「あれ?狙ってた年代層に当たってないな」という疑問を感じるのではないでしょうか?

つまり ”この商品は20~30代の顧客が買ってくれるはず” という期待(仮説)に反した結果になったため疑問が湧いた、ということですね。

一方で、そのような背景を知らない人がこの事実を眺めたところで、とくに何も疑問は感じることはないでしょう。

つまり何が言いたいかというと、データ分析する際に、なにかしらの仮説を持っているか否かによって得られる情報の質がかなり変わってくるということです。

もちろんこの段階では、まだ疑問が湧いたというだけなのでインサイトが得られた訳ではないですが、この疑問がさらなる仮説の種となり、どんどん深堀りしていくことでインサイトに辿りつく確率が高まります。

日頃の観察量がモノをいう

では、そもそも仮説を持つためにはどうしたらいいのか?

結論からいうと、これはもう観察しまくる以外にないでしょう。

例えば業務改善を目的とした分析なら、作業効率や稼働率といったデータの分析だけでなく、

・業務種類やそれぞれの目的
・業務フロー、ルール、手順
・担当部署や担当者
・どんなシステムやツールを使っているか…etc

といったものにも観察の目を向けることによって「どのへんがクサイか」という鼻が利くようになります。また、観察するだけでなく現場の人にヒアリングしてみたり、時間が許すなら現場業務にトライアルで参加してみるのもかなりオススメです。

またマーケティングや営業などグロースを目的とする分析なら

・戦略
・ターゲット顧客像
・自社プロダクトの強み・弱み(競合もしかり)
・施策の狙い

を理解・観察するべきでしょう。可能ならば現場へのヒアリングだけでなく、顧客にもヒアリングしてみると多くのヒントを得られるはずです。

こうやって頭にインプットされた情報や光景が蓄積されてくると、おのずと

「○○○だったらいいのに、実際はどうなんだろうか」 とか
「もしかして○○ってことは、△△という可能性もあるんじゃないか」

といった仮説の種が浮かんでくるものです。これらを足がかりにデータ分析すれば、観察→仮説→検証→疑問→仮説→検証→疑問…のサイクルが高速で回り、結果的に最短ルートでインサイトへ迫ることができます。

まとめ

データ分析でインサイトを得るためのアプローチは2種類あると思っていて、

< データ分析アプローチ方法 >
1. データ探索型
2. 仮説検証型

前者については「おむつとビール」のようなデータマイニングや機械学習といわれるような手法で、データから気づきを得ることを主眼においた方法が代表的です。

後者についてはこれまで説明した通りで、目的や戦略などの観察から仮説を立てて調べていくという手法です。

どちらが優れているかという議論は不毛ですが、少なくとも共通していえるのは「事実」を「インサイト」へ昇華させるためには、前提となるイシューへの理解と、そのための観察量が決め手になるんじゃないかと感じています。

おまけ

余談ですが、このような仮説の種となるアイデアは、データアナリストではなく、実務にデータ分析を活用しようとしている現場の人達の方が圧倒的たくさん持っていると思います。

なので現場の人達がデータ分析という道具をうまく使う方法を習得できれば、データアナリストとは比べ物にならないほど高速に仮説検証サイクルを回せることは間違いないです。

巷では、データマイニング・統計解析・機械学習・AIうんぬんなど、なにやら高度な手法こそがデータ分析であるかのような情報が飛び交っていますが、全くそんなことはないです。

本当にコアなインサイトというのは意外と簡単でシンプルな分析から得られることが多いのです。

逆にいえば、いくら高度な分析手法をマスターしたとしても、それをビジネスに活かすためのアイデア・仮説を発想できなければ、1ミリも役に立つことはないでしょう。

そのへんについては、また別の記事で紹介していこうと思います。
ではまたお会いしましょう。

※Keiyamaさんにこの記事を取り上げて頂きました。データ分析や統計が「道具」であることをより詳しく説明されています。すごく参考になるので一読されることをオススメします。ありがとうございました。


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