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はきだこ 第四回

人体の臓器の中で最も美しいのは子宮だ。
生命の宿る神秘的な部屋で、造形は天使のようにも見えるシンメトリー。
それを彼女に力説すると少し嫌そうな顔で苦笑いをされた。
そういった下賎な会話でないことを伝えたいのだが、熱がこもればこもるほど逆効果らしい。
最早彼女にとってパッケージングは些末な事なのだろう。
こうなると、ぽっと宇宙に生み出されるエロスとタナトスの話から始めないと伝わらない。

ブルースの語源は「憂鬱」や「哀しみ」から来ていて、日本でも「ブルーになる」という表現がしばしば使われる。
ただ俺にとってブルースはただ項垂れるためのものではなく、奮起し再生するための自己暗示のようなものと捉えている。
血液が流れるスピードで血管の内側に張り付く汚れが声となって、ざらざらとした音と結び合うのだろう。

命が生まれる瞬間に、ブルースという形でこの空間に混じり合う音楽は、俺にとっては宇宙そのものだった。


「はきだこ」は作詞した楽曲にまつわるあれやこれやを綴ったショートショートです。

以降は有料記事になっていて、歌詞とラジオのような気の抜けた手記が読めます。
100円ポッキリに設定しているので購入していただけると、明日の僕がちょっと良いコンビニのおにぎりを食べることができます。

今時ガチャガチャですら100円は珍しいと思うので、たまには四角い袋に入ったおにぎりの封を切らせていただけると幸いです。


藍色の宇宙 by あぐら女 from Low-key dub infection

僻んで死んでいくよりは裸のまま転げ落ちたい
重なる音に喉を枯らして
我儘で往く林道の秋を蹴飛ばし笑いたい
蛙が嫌いなあの娘はlaid-back

絡まりわやなって子宮を震わす
インモラルな暴力と生気の伝導 藍色の宇宙

4弦と5弦の間 スイッチだけで同じ空
言葉の地獄の業火で飯を炊く
気怠い身体 骨の芯 逆支弁抜ける汚れが
今ここでただ鳴っているだけだぜ

絡まりわやなって子宮を震わす
インモラルな暴力と生気の伝導

僻んで死んでいくよりは裸のまま転げ落ちたい


はきだこ 第四回

音楽のジャンル分けって難しいよね。
僕は音楽的分類と姿勢で捉えることが多い。
これが正しいかどうかは専門家に問えば怒られるだろうけど、ビリー・ジョーの「これがパンクだ」発言に似通った思想を持っている。(健ちゃん同様、僕もあの発言は個人的にあまり好きではないが)

ロックンロールもパンクもブルースも、それらは外面だけのリスナー頼りのカテゴリーではなく、アティテュードであり内的な在り方が音楽として表層に滲み出てくるものだと思う。
もちろん僕がただ不学なばかりに、他ジャンルへの知識に乏しいことも大きな要因であるだろうし、決して他ジャンルを貶す意図がある訳でもない。

ただ、知人が官能小説を書き始めた頃から、このブルースと子宮をなぞらえたこの詩についてのはきだこは書こうと思っていた。
月経を穢れとして扱う文化を払拭しようと性の授業を取り入れる学校のニュースを以前見たことがある。
男子学生が物珍しげに生理用ナプキンに触れる映像は、賛否両論あるだろうなと不思議な感覚に陥った。
僕個人としては、そういった崩壊と再生を繰り返す子宮にこそ女性の神秘があり、ブルースの奮起と通ずると感じたのだ。

とは言え経験したことのないものなので、世の女人たちには「ふざけんな!バチクソ痛いねんぞ!」と言われるかもしれない。
ただ、それらも、そしてそういった機能について知識の浅い僕たちも、恥ずべきことでも何でもない。
幾つになっても何度も女性が美しくなるように、その痛みは生気の伝導であり、深く澄み渡った藍色の宇宙への道なのだ。

兵庫県立美術館で見た子宮のような絵

第五回は何について書こうか。
リクエストがあれば受け付けてみようか。
全ての美しき女人たちに。

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