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はきだこ 第一回
肉を焼く音が喧騒に掻き消される。
その時、俺は珍しくへべれけに酔い、そいつと一緒に自らの手の甲に煙草を押し当てていた。
何の生産性もないそのチキンレースに白旗を揚げたそいつは、ぬるくなったビールを一気に流し込んだ。
何によって生まれたかわからない笑い。
痛みは想像より少なかった。
翌日目が覚めると、擦れて肉が剥げたのか、ジーンズのポケットは赤黒く染まっていた。
そいつとの関係は痴情のもつれで終わり、何の因果かこうしてそいつの故郷に越してきた。
くだらないことを思い出して歩く音は足元から広がり、地下道を反響して後ろへと流れていった。
まるでスネアを連続して叩くような軽快なリズムが耳に心地良くも、どろっとした感情とは上手く結び付かなかった。
湿気た屋根裏を踊るような気持ち悪さが、足の裏にまた戻ってきたような感覚だった。
「はきだこ」は作詞した楽曲にまつわるあれやこれやを綴ったショートショートです。
以降は有料記事になっていて、歌詞とラジオのような気の抜けた手記が読めます。
100円ポッキリに設定しているので購入していただけると、明日の僕がちょっと良いコンビニのおにぎりを食べることができます。
今時ガチャガチャですら100円は珍しいと思うので、たまには四角い袋に入ったおにぎりの封を切らせていただけると幸いです。
metro by dat kids
ああメトロ 揺れる金色の白痴
海はまだ遠い 粋がるなよチキン
ダグアウトのくせにはぐれ者のつもり
とっくに見限られた理神論者だろう
カビの生えたテネシーローズと
しゃがれた声のバスを待つ歌
Ooh La La Baby
酒に酔ったフリで天を仰ぐ癖が
気色悪いわ like a centipede
マシな嘘も言えない 斜に構える無知な
ノータリン これだけでいい
ああメトロ 君は飼い犬の世話を
ほっぽって雀荘へ 負けは続くのに
ハイライトふかす 睨む乞食に会釈
東の時計台は夢も見せないで
湿気た屋根裏を踊る
僕らの鼓動が足の裏まで響くわ
冷め切って 冷めきった
はきだこ 第一回
この話は元々、parks magazineに掲載予定だったものだが、諸事情でオクラになったので新しいコーナーを始めてみた。
ラジオの合間に語られるショートショートが案外好きで、あの空気感が伝われば連載する価値はあると思う。
たまに「歌詞の内容はフィクションかノンフィクションか」と聞かれることがあり、勿論答えは「想像に任せる」だが、どちらであったとしても"歌詞"ではなく"詩"として綴るとするりと落とし込みやすくなると思う。
謂わばこのnoteは「おくすり飲めたね(商標権的にセーフか?)」的なものだと理解して欲しい。
そうそう、先日この地下道を通ると何やら工事をしていたようで、少しだけ空気が明るくなっていた。
そして欠かせないのが僕が愛喫していたゴールデンバットだ。
2019年に惜しまれながらも終売したが、低価格ながらガツンとくる吸いごたえはエコーやわかばと比べて愛を持って接した嗜好品だった。
薄暗い地下道の空気感、踏み慣れたドクターマーチンのソール、そして残り少なくなったゴールデンバット。
どれか一つでも欠けていれば、この楽曲は生まれていなかったと思える。
本来作品というのは、そういったX軸とY軸の座標による、偶然の産物という意味も持ち併せているのだと思う。
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それでは皆さん、第二回でお会いしましょう。(小粋なジャズナンバーと共に)
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