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はきだこ 第六回 あぐら女

あぐら女はかく語りき (序)

あぐら女という自称問題児が生を授かったのは今はもう忘れ去られた平成。
彼と呼ぶべきか、彼女と呼ぶべきか、有象無象の現世ではどちらの呼称も角が立つ。
ただこれは概念についての物語であり、「それ」と呼ぶにはあまりにも他人行儀なので、ここでは彼女と呼ぶことにする。
これで批判的な意見が角だけでなく目まで立つのであれば、加加筆修正することにやぶさかでない。

本題から随分と逸れたが彼女はロックをロールすることを愛する変態的な阿呆の哺乳類だった。
みなしごとして周りに共に遊ぶ友は居らず、物騒な輩と疎まれ、独りレコードに針を落とし聴き耽る日々を過ごしていた。
だが、彼女は不思議と居心地を悪くは感じていなかった。
怒りの矛先はなくとも昇華方法は、周りの誰よりも知っていた。
エレキギターをひとたびジャカンと鳴らせば全ての人を敵にし、エクスタシーが味方をしてくれる感覚に陥いるロックンロール。
それだけが彼女を支える背骨であり、庇護してくれる偉大な存在だった。

サブカルチャーが商業的になり、カウンターカルチャーとしての熱も失いつつある事象を危惧した彼女は、故郷を痛烈に批判した赤い花の名の産声をあげた。正しくは叫び声に近い切れ味のものだった。

サブカルチャーというのはアンダーグラウンドからポッと生まれてしまうものではなかったのか。

同じ穴のムジナだと、勝手に感じていたのに。

「アンダーグラウンド、知らぬ間に何処へ?」

彼女の言葉に誰も耳を貸さなかった。


今作は正木諧ソロプロジェクト Low-key dub infectionによるあぐら女というバンドについて綴られた「アグラオンナはかく語りき」を加筆修正した短編小説です。
とはいえ、原型はないに等しいので同じ思考回路を紐解いた作品だと捉えて頂けると幸いです。

いつもと趣向を変えて、曲単位ではなくバンドの意図を短編小説として書きました。
形式は保つので以下歌詞もあとがきもありますが、性質上、続き物となってしまいます。ご容赦ください。


真っ赤なアネモネ by あぐら女

朝まで踊ろうぜ君の中で果てるのさ
シャバいキッズの戯れなんてクソみたい

ヤリサーのやつらには興味はねえ
色とフルーツのサークルはヤバいらしいぜ
キスの応酬がキックだなんて
そりゃないぜもっとおれは阿呆でいたいだけ

睡眠欲、食欲、性欲と音楽を愛する欲求で
君を溶かしてトリップしたい

良いことしようぜ
危ないことでぶっ飛ぼうぜ
他のチンケなやつらなんか放っといてさ
俺と良いことしようぜ


はきだこ 第六回

まずはあぐら女の活動に、本気で騙された某国の紳士淑女に詫びたい気持ちだ。
炎上商法や扇動を駆使して、波風しか立てていない活動期間だった。
申し訳ない。
ただ僕はこのプロモーションを楽しんでいたし、あぐら女が自分とは別の生き物として暴君になる様は素晴らしく音楽的で芸術的だったと思う。
同志諸君、感謝している。
女遊びかと思えば遊ばれていた感覚はどうだい。

今作は2018年の旧メンバー離散時から構想していたものであり、この「アンダーグラウンドは何処へ」は2021年にミニコミ化すべく書いたものだ。
再結成に向けてひっそりとInstagramで書き綴っていたものを改変し、サイケデリックとエキゾチックを混ぜ合わせ、最後にケミカルXが混入した三部作。

某国で最も危険で、嫌われ者で、あばずれで、自由で優雅な彼女のための物語。

是非、二部以降も期待して欲しい。

2015年8月 結成時

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