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はきだこ 第五回
空が暗くなり、ブロンズの金具はより一層 影を濃くした。
夏の日が長いのは、昼の時間が長いというよりかは、人間が夕方と認識できる時間帯が増えるからではないのかと思う。
頭の足りない俺がそう思うくらいに、この夕暮れはゆっくりと過ぎていた。
彼女は沈思する僕を余所目に、アイスキャンディーを齧りもって歩いていた。
人間は後悔の満ち引きで躁と鬱を繰り返し、くたびれていく。
「もしもこう在ったなら今頃は」と、有り得ないIFルートの材料を弔うように帰路に就く。
「はきだこ」は作詞した楽曲にまつわるあれやこれやを綴ったショートショートです。
以降は有料記事になっていて、歌詞とラジオのような気の抜けた手記が読めます。 100円ポッキリに設定しているので購入していただけると、明日の僕がちょっと良いコンビニのおにぎりを食べることができます。
今時ガチャガチャですら100円は珍しいと思うので、たまには四角い袋に入ったおにぎりの封を切らせていただけると幸いです。
円筒 by 正木諧
夜を待たずに月が出る頃
不安を抱えて帰路に就くだろう
ただ足を速めてる 悲しみに抗おうと
乾いた音すら妬ましい ここが居場所じゃないって
言われてるような気分で、宛を無くして
声が靴に落っこちる だらしないまま
ざわめきも、言葉も、君を知らず去るのも
懐かしい想いは全部、円筒の中
惹かれ合うような心地も忘れてくから、なあ
今夜全て終わったなら新しい人に
歯痒さと痛みの中で生きるだけでも
ありふれたこころで、何もなく向き合って
ざわめきも、言葉も、君を知らず去るのも
懐かしい想いは全部、円筒の中
はきだこ 第五回
弾き語りでよくやる曲。
やってもやってもブルースハープが上手くならない
神戸のとある喫茶店がモチーフになっていて、筒状の不思議な形の店内、中央には大きな月のような電球がぶら下がっている。
その近所に住む時分は喫煙可なのもあって何度か訪れた好きな場所だった。
耳の遠い年配のレディーが営むお店だったこともあり、知る人ぞ知る隠れ家的名店だったのだろう。
年季の入った楕円状のテーブル、大きなスピーカーから流れる心地の良いジャズ、全てを内包する思考の溜まり場だった。
程なくして僕はその街を出て、足は遠のいた。
先代の後を継ぐ形でオーナーが代わり、懐かしい思いと共に足を運ぶと、そこはがらりと雰囲気が変わっていた。
後任の意志を否定する意図は一切ないが、良くも悪くも若年層向けになり、僕の肌には合わなかった。
いや、僕が歳を取っただけかもしれない。
そんな懐古や恋慕、全てのIFルートの材料を弔う場所の象徴となった円筒。
もう元には戻らないことにすら向き合って、大切にしまえるよう曲を書いた。
余談だが、僕はバターバトラーのフィナンシェが好きだ。
何故か幼稚園児の頃に行ったディズニーランドを思い出す匂いで、早く食べろと言われるくらいずっと嗅いでいられる。
これがプルースト効果かと思い、書いたのがこの曲だった。
もっとドラマチックな動機を期待されていたかもしれないが、創作活動というのは案外日常の小さな切れ端から生まれることもある。
告知になって申し訳ないが、今月の27日 弾き語りでライブをする。
偶然にもニューシングルのリリース前日ということもあって、sundaesも弾き語りバージョンで演奏しようと考えている。
勿論、この曲も引き連れて行くつもりだ。
もし時間が合えばチャージフリーなので、小銭だけ持って遊びに来てくれると嬉しい。
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いつか書籍化できないかなあ。
いや、そんなレベルでもないか。
僕、本読むの苦手だし。
じゃ、第六回で。
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