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正木諧 (datkids)
2021年12月18日 03:46
びゅうびゅうとアパートの窓を撫ぜて、どこかのビニール袋をさかさかと鳴らす風が吹き、一層寒さを感じるようになった。毎年のように暖冬だと言われるが、都合良く今までのことなんて忘れて、冬になると寒がってしまう。足元に蹴散らした灰で加速する風は、じっとりと海辺に落ちるものと舞い上がるものとで、目には見えないが分離していく。元々は鮮やかなブルーだったであろうベンチにゆっくりと腰を下ろす。何か
2021年12月19日 03:26
産毛が逆立つ。海風に触れていたせいで微熱を帯びたような感覚のまま、立ち上がる。いつの間にか太陽は同じ背丈ほどまでに落ちて、飴玉のようなオレンジ色になっていた。このまま死んでゆけば、何も要らない。言葉の意味がとげとげとしたものではなく、ごく当たり前のようにすんなりと受け入れられた。ドアを閉めて鍵を掛けるように。肌を刺す日差しを嫌うように。視界の隅に黒いカマロが停まる。
2021年12月19日 16:01
ぎっと革張りの赤いソファーが軋む。長いまばたきのつもりが浅い眠りについていた。カーテンから夢で見た様な紗がかかり、朝が流れ込んでいる気配がした。目眩、吐き気、喉の渇き、それと硬いソファーに横たわっていた身体の痛み。全ての嫌悪感を凝縮した様な、ただ僕だけの朝。街はまだいびきをかいている。これが最期のつもりで少しずつ空想を書き起こし、不揃いな音に当てはめた。良くも悪くもぶきっ