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③ 過ぎていった熱狂
ぎっと革張りの赤いソファーが軋む。
長いまばたきのつもりが浅い眠りについていた。
カーテンから夢で見た様な紗がかかり、朝が流れ込んでいる気配がした。
目眩、吐き気、喉の渇き、それと硬いソファーに横たわっていた身体の痛み。
全ての嫌悪感を凝縮した様な、ただ僕だけの朝。
街はまだいびきをかいている。
これが最期のつもりで少しずつ空想を書き起こし、不揃いな音に当てはめた。
良くも悪くもぶきっちょで、ありのままの僕がそこに居た。
「このまま死んでゆけば、何も要らない。」
改まって身体に理解させるために脳内で反芻した。
疲れたわけでもないのに溜息をつき、建付けの悪いベランダのドアを押し退けた。
冷気が肌を撫で、通り過ぎ、聴覚を研ぎ澄まさせた。
塗装の剥げた戸が擦れる音。
遠くで走る車の音。
障害物のない通りを風が吹き抜ける音。
「この一本が終わったら。」
そう自分に言い聞かせるように、体の重みでくしゃくしゃになったゴールデンバットを燻らせた。
朝がくる。
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