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OJTは必要か?

はじめに

私が勤めている某外資系コンサルティング会社の若手向け社内研修の中で、講師役のマネージャーの方から「コンサルワークはどこまで部下に任せるのか」という話への言及があり、非常に興味深い示唆を得られました。それを受けつつ、普段から私が考えていた「新人・若手向けの現場研修(OJT)」に対する考えをまとめておこうと思い記事を書きました。

どこまでマネージャーがやるか、どこから部下に任せるか

所謂「コンサルっぽい仕事」の一つに、顧客の抱える現状(As-Is)の可視化とあるべき姿(ToBe)の定義というものがあります。そして、As-IsとToBeのギャップから課題を見出し、ロジックツリーなどのフレームワークを使って論点整理を行っていきます。そうして整理した論点に対するアナリシス(調査)を行い、内外の統計データ等のエビデンスと組み合わせ、真に解決するべき課題を抽出、解決策(打ち手)をお示していきます。

こういった内容については、大企業の新人・若手向けに座学と実践を兼ねて研修として行われているのではないでしょうか。私も前職の通信キャリア時代、入社2年目に似たような研修を受けたことがあります。

で、本題は「こういったコンサルティングワークをどこまで新人・若手にまかせるのか?」です。恐らく多くの方は、

・As-Isの整理からToBeの定義、ロジックツリーの作成、アナリシスまで全部任せる!
・ロジックツリーの作成から先は任せるかな。

と考えるのではないでしょうか?しかし、先述のマネージャー曰く

コンサルティング会社にも働き方改革が求められる中においては、ロジックツリーの作成までマネージャーがやる。その先のアナリシスだけ新人・若手に任せる

と仰るのです。そのような見解に対して、一部の研修参加者からは「それだと新人・若手の育成という観点では望ましくないのでは?それだとスキルが付きにくいのではないか?」という質問が出ました。私もまったく同じ疑問を持ちました。しかし、そのマネージャー曰く

新人・若手の育成はクライアントのお金で行われるべきではない。スキルの習得という観点でいえば、それは現場業務ではなく研修で為されればよい。また、新人・若手にどれだけ時間をかけて論点整理をさせてもだいたい穴がある。働き方改革が掲げられている中、そのようなマネジメントは望まれないと思う。つまり「ベーススキルの習得」という点においてはOJTでやるべきではない。

との見解をお持ちでした。

それは顧客価値の創出か、それともトレーニングなのか

現場業務を通して新人・若手を育成するという施策は所謂、OJT(On the Job Training)と呼ばれます。私も前職に勤めていた際、OJTを通して現場業務を覚えるのと同時に「ベースとなるビジネススキル」を付けてきました。とても良い経験をさせてもらったと今でも思っています。

なお、ここでいう「ベースとなるビジネススキル」は、顧客に価値を提供する上で必須の要素です。しかし上述の議論というのは、その体得をクライアントの金でやるべきなのか?という事です。コンサルティング会社の場合、コンサルタント達がプロジェクトに従事する時間・稼働はすべてクライアントにチャージ(請求)されるからです。そしてコンサルタント達はチャージ金額に見合った価値を創出する必要があります。クライアントに請求する金が新人のトレーニングや自己研鑽に充てられるのは、それは違うでしょというわけです。新人のトレーニングは自社の費用負担の中で行われて然るべきです。

通常の事業会社においても同じ考えはできないでしょうか。勿論現場で学ぶことも多いです。しかし業務の時間は顧客に対する価値を創出・提供するべき時間です。もしトレーニングが必要なのであれば、それ専用の時間や費用で賄うべきです。

働き方改革と成長曲線のあるべき姿は

人は注ぎ込む時間と労力によってスキルを向上させる事ができます。ただしやみくもに時間と労力をつぎ込むことはこのご時世できません。一方、新人にはいち早く即戦力になってもらいたいものです。

そういった二律背反を実現するためには成長曲線の特性として以下の様な姿が必要なのです。

図2

先ずは徹底的に型を覚える期間でベーススキルを効率的に一気に引き上げます。トレーニングを終えた後実際の業務を通して更に多くの気づきや経験を得て成長する部分もあるでしょう。ただ、無垢な新人をいきなり現場に投入し、OJTと称してろくな教育・研修を施さないと、その新人が一人前になるまでには多大な時間と労力を要する事になります。それは働き方改革が求められるご時世にはマッチしない考え方です。

まとめ

あらためて「OJTは必要か?」という問いについて考えますと、以下の様な事が言えるのではないでしょうか。

・新人教育は専用のリソース(費用・時間・労力 等)を割いて行われるべし
・とりあえず現場任せなOJTは不要、それは働き方改革とは無縁の考え方

そして、結局一番重要なのは新人のベーススキルを効率的に一気に引き上げるための研修の在り方をきちんと考えようという事です。それができていない会社・組織ではいつまで経っても人は育たず生産性も向上しません。だからこそ人に投資する=生産性の向上に繋がるのだと私は考えます。

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