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Drive!! #120 ボート X 小説

準決勝第1組のレースは終盤を迎えた。
予選こそ阪和に敗れたものの、このレースでは盤石の試合展開で帝東が1着でゴールをした。このチームは完全に息を吹き返したと言ってもいいだろう。
2着争い。先にゴールしたのは、蒼星大学だった。

コース上ではため息が漏れたような気がした。
関西の公立大学が、戸田勢を破って決勝に行くというドラマに期待していた人も多くいたに違いない。

前日のTwitterでも、阪和のA決勝進出を期待する声を多数見かけた。
予選までのレースを見ると、十分にそれもあり得たと思う。
確かに予選の彼らは速かった。しかし完璧すぎたのかもしれない。

一度予選で六甲大学に敗北を喫しそうになった分だけ、蒼星の方が死線をくぐり抜けていた。実力が拮抗したレースでも、冷徹に勝利を見据えることができた。

予選で帝東に勝った阪和大学には、このレースで1着になれるという気持ちまであった。何しろ絶対王者を破ったのだから。気持ちが大きくなっても当然だ。

帝東に先行されても、本来焦る必要のない展開だが、クルーには動揺が走った。それでも持ち前のスタミナでラスト500mまでは蒼星よりもわずかに先行していた。

しかしそのリードは蒼星からすれば、射程圏内だった。

結果的には、ラスト500mからスパートに入った蒼星に、200mの地点で捕らえられ、そこからは一気に差が広がった。
蒼星に続いて、3秒差で阪和がゴールした。

たった3秒。1年間積み上げてきた結果、たった3秒の差。
それでもそこには大きな壁があるように思えた。

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