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Drive!! #102 ボート X 小説

蒼星大学のCOX森泉は急に失速した六甲大学を疑問に思った。
そして1着でゴールしたが、いつもと違うレース展開と、予選から負けを覚悟してかなり疲れていた。

六甲大学の失速をストロークの荒木は予言しているようだった。
自分の理解できないところで、色んなことが起こったような気がした。
***
どうしたんだろう。ラスト300mくらいだった。
急に六甲大学が失速し、俺たちがスパートに入る前には抜かしてしまった。それまで優位にレースを進めていたのは、相手の方だった。

疑問を持ちつつ取り敢えず短めのダウンをするために、ノーワークのコールをかけて艇を進ませた。
「荒木、なんで分かったの? なんかこのままでも抜かせる的なこと言ってくれたよな」
俺は不思議に思い、荒木に直接聞いてみた。

「ああ、あれですか?なんか前半で競り合ってる時、六甲の剛田さんの漕ぎがガチガチで、それでなんとなくわかりました。」
俺は焦りでいっぱいいっぱいで、そこまで相手の漕手ひとりひとりまで目を配ることはできていなかった。

「お前、相手の漕手まで見ながら漕いでるのか。全然知らなかったぞ」
「いや、ストロークの漕手だけですけど。その人の漕ぎだけはレース前に沢山見て、レース中も見れたらチラ見してます。俺たちは大体先行して後ろから見れること多いじゃないですか」
荒木はそんなことしていたのか。全く知らなかった。

「いつものコンスタントの漕ぎじゃなかったです。郷田さんでもさすがにあれは続かないだろうなって感じがしました。でも思ったより後半も抜かせなくて、さすがにちょっと焦りましたけど」

荒木は相手漕手の漕ぎを覚えるのにどれくらい見返したんだろう。
関西の大会はアプリとかの中継はないので、SNSとかで必死に動画を探したに違いない。

俺は相手クルーの名前すら全然覚えていない。
レースの進捗に沿っていつものコールをすればいいと思っていたかもしれない。

目の前の荒木は同期で7番を漕いでいる深津と談笑しながら漕いでいる。
でも勝ちたい気持ちを誰よりも秘めているんだろう。だからこそ今そのシートに座っているのかもしれない。

俺ももっとできることを探そう。
と思ったけど、もう俺のボート部員としての生活は3日しか残っていなかった。

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