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Drive!! #100 ボート X 小説

「スパートいこう!さあいこう!」
六甲大学はCOXの林の合図によって、レースプランより200mも早くスパートをかけた。残り500m予選2組のレースは終盤を迎えていた。

今まで忠実にレースプランを守ってきた林が、初めて自分の意思でコールをしていた。
その姿に剛田は驚きを感じていた。
***
今まで林が自分の意思を押し出したことなどない。
そして、後ろで漕ぐメンバーも淡々と漕いでいたが、今日は違った。

「絶対勝ちましょう!まだ大丈夫!」

ほんの僅かだが、俺たちは蒼星にリードしている。

頭をよぎったこの気持ち。
"次世代に託す"
この考えは逃げではなかっただろうか。

俺も友永も負けることに臆病になっていなかっただろうか。
"次世代へ"という言葉を言い訳にしてはいなかっただろうか。

勝つために必死で声を張り上げている林を見て、ふと気づかされた。
目を血走らせている後輩を、冷静に観察している俺は何様だ。

自分の大一番の勝負であるはずが、それをすり替えて、すり替えて、曖昧で聞こえの良い言葉に置き換えて、納得させようとしていなかったか。

勝ちを目指さない姿勢で、後輩に何を語ろうというのか。

"自分は負けても良いから、後輩に強くなって欲しい?"
そんな男の姿勢や言葉。全く説得力がない。

大馬鹿野郎だった俺は。

俺は少しでも艇を強く押せるように、思い切り息を吸い込んだ。

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