Drive!! #126 ボート X 小説
2000mエルゴが終わると俺は反射的に雄叫びが漏れた。
俺から1ストローク遅れて、岡本と井上はほぼ同時にグリップから手を離した。
「杉本、6'31"、岡本と井上は6'33"」
私服姿の川田さんがエルゴの後ろでタイムを読み上げてくれた。
その横に下屋さんも同じく私服姿で、姿勢良く立っていた。あまり感情を面には出さないが、手を叩いて祝福してくれていた。二回生三人ともベストだった。
同じく四回生の翔太さんは大学での全ての試合を終えたが、企業でもボートを続けるのでこれまで通り練習に参加するらしい。
俺たちはインカレが終わって、戸田から大阪へ帰ってきた。
今日は短いオフを挟んだ練習再開の日でエルゴで2000mのトライアルを行った。
六月には6'52"だった俺のタイムは、この3ヶ月で一気に伸びた。
岡本と井上が漕いでいるのを、後ろから眺めるよりも、一緒の組で戦えるようになった自分が誇らしい。翔太さんとペアに乗ってから、自分の力を解放する感覚というか、日々の練習からギリギリまで追い込む感覚を取り戻したと思う。その結果、体格は大きく変化してはいないが、エルゴの値が伸びた。この数ヶ月自分がまるで別人になっていくかのように記録が伸びて楽しかった。そう、この数ヶ月は。
今、実は新しい壁にぶつかっている。
俺は、シングルがめっちゃ遅い。
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