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ジンセイを変えるような「ひとこと」は突然やってくる。

人生における転機。それは小さい時に読んだ絵本や旅先での出会い、あるいは突然やってくる日常の何気ない「ひとこと」だったりー。
これは僕や僕が尊敬している人たちが、人生のターニングポイントになったという体験を、ぎゅっと「ひとこと」に込めて紹介して行くシリーズです。

(写真:妻とヨーロッパでバンライフ中の一コマ)

今回は僕が旅好きになるきっかけをくれた、映画の「ひとこと」について書いていきたい。といっても作品のよしあしを語るわけではなく、読んで字のごとく「自分が影響を受けた映画の中のひとこと」に焦点を当てていこうと思う。

全然知らないヤツの昔話かよ...と思うところはぐっと堪えてただいて、似たような経験を思い出しながら読んでもらってもいいし、先に映画を観てもらうのもいい。
もし読んでくれている人が学生ならば、まさにあなたに送る「ひとこと」になるかもしれない。(学生というのは若い人という意味。僕もずっと学生でありたい。)

いずれにせよ言葉が人に影響を与える様子を身近に感じてもらえたら嬉しい。

それではまず映画の紹介から。


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「これは、僕の恋愛に関する物語だ。」


で始まる『GO』という映画の中に、その「ひとこと」は出てくる。

『GO』(ゴー)は、2000年に講談社により発行された金城一紀作の小説。同年の直木賞を受賞した他、2001年10月20日に公開されたこれを原作とする映画化作品は日本国内で数多くの映画賞を受賞した。(Wikipedia)


「そりゃ名作でしょ!ワタシ(ボク)もずっとこの映画が大好きなのよ」
という声が聞こえてきそうだ。うん、そうだと嬉しい。
とにかく僕もそのうちの一人であり、僕の場合は高校生の時に観たことも大きかったと思う。まさに主人公と同じく、アイデンティティに悩む高校生だったからだ。

ここから「ひとこと」を紹介する前に、一点だけ。
あえて当時の記憶だけを頼りに書いてみよう思っている。正確な表現は映画を観てもらえれば確認できるけど、自分の中でどんなカタチでしまわれているのかを知るのは貴重なことだと思うからだ。それでは18年前の夏へ。

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18年前の夏休み in 実家

甲子園予選の奈良県準決勝で敗退し、する当てもなかった夏休みの後半。
僕はツタヤでDVDを借り、クーラーのよく効いた実家で何気なくこの映画を見始めた。この映画を選んだのは当時有名だったからだろう。ポリンキーを食べていたような気もする。自分の人生がこの後変わるとは夢にも思わずである。

夜の公園(もしくは空き地)で父親と向き合う高校生の主人公。
雨が止む気配もなく降っている。そんな彼に向かい不器用な父親が語りだす。

「おい、小僧(ボーイ)、腕を広げて半円を描け」
 言われた通り、手を伸ばす主人公。

「それがお前という人間の範囲だ。」
「その範囲を超える世界には、たくさんの敵が待っている」
「でもそこから勇気をもって飛び出し、何かを摑み取るのだ。」
「...」
「広いせかいを、みろ」

「広いせかいを、みろ」

「広いせかいをみろ」
「広いせかいを...」

その瞬間DVDを一時停止をしたのか、巻き戻したのかは覚えていないが、こんなふうに「広いせかいを、みろ」という言葉が頭の中でリフレインを繰り返し、心に染み込んでいくような感覚があったのを覚えている。主人公と同世代だったのもあり、まさに自分に言われているような気がしたのだろう。そして言葉通り、広いせかいをみてみよう、と旅に出ることを誓ったのだった。

*しつこいようですがセリフはあくまでも自分の脳内記憶です。

思えば何も旅をすることだけが、広いせかいを見ることではないのだけど、言葉が心に染み込みすぎてむしろ溢れてきていた僕には「とにかく旅をして、広い世界をみなくちゃ!」ということで頭も心もいっぱいだった。

こうやって振り返っていて気づいたのだけど、現在の僕がはっきりと認識している「見たことがない景色を見たい!」という情熱はこの時に言語化されたに違いない。自分の性格やそれまでの小さな経験を積み重ねながら、自分でも気づかないぐらい少しづつ形成されてきていたもの。でもまだぼんやりと輪郭だけだったもの。それがこの言葉をトリガーにして実体を持ちだした。「ひとこと」で人が変わってしまうのはそういうことなのかもしれない。

その後もこの映画を何度か見直してはいるはずだが、最後に観たのがいつだったのか思い出せないでいる。もう一度観たいような、このままぼんやりと青春の記憶としてとどめて置きたいような、そんな幼馴染のような懐かしい関係性が僕とこの映画にはある。

あれから再び18年がたち(初めて見た時が18歳だった)自分を取り巻く世界は変わり続けている。想像もしなかったウイルスにより止まってしまった世界。
日本やアメリカ、スイスで暮らす友達。慣れてきたカナダでの暮らし。社会経験をする中で得たちょっとした成功体験もあれば、ここでは書けない苦い経験もある。
そして今は妻もいる。この自分が新しく見つけた家族とはいつかこの映画を一緒に観たいと思う。(英語版の発売が先か妻の日本語力向上が先かどっちだろう。)

いつ自分を変えるような言葉に出くわすかなんて誰にも分からない。
確かなことは「広いせかいをみる」はもう僕自身の言葉だということだ。

まだ観ていない方で興味が出たという方がおられれば、amazon primeでも配信されています。夏休みにDVDでみるのが僕のオススメですが。


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